用語:
【 UPCYCLING 】
アップサイクル
5月27日号「サステナビリティの基礎用語65」特集の中から、「アップサイクル」をピックアップして深堀りをする。捨てられるはずだった廃棄物に、アイデアやデザイン、技法を加えて価値を向上させて新しい製品として生まれ変わらせるアップサイクル。近年、多くの企業が宣伝文句に“アップサイクル”という言葉を用いているが、果たしてそれは本当に価値が高まっているのか。売れずに余剰在庫になっていないのか。ここでは編集部が“アップサイクル”だと感じた取り組みを紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年5月27日号からの抜粋です)
アイデア・デザイン・技法を加えて新たな価値
「ヘレン カーカム」
生産システムをハッキング!創造的な解決策を提供
材料はリサイクルセンターから回収した片方だけのスニーカー。現段階ではスニーカーの再利用は難しく、特に片足の場合は廃棄物にならざるを得ない。ヘレン・カーカム(Helen Kirkum)はこの課題に目を付けた。回収した靴をアトリエで解体し、つなぎ合わせて素材にして、スニーカーに成形する。現在は、ポルトガルの工場と協働し小規模な量産化に成功。アッパーは廃棄素材でインソールは90%がリサイクルフォーム、アウトソールは30%がリサイクルゴムを用いている。
「ヘレン カーカム(HELEN KIRKUM)」の製品は材料に用いたスニーカーのブランドロゴが確認できる。他社ロゴの製品への無断使用は現行の法に触れる。デザインコンセプトを「全ての部品がどこから来てどのような過程をたどっているかを示すこと」とカーカムはいうが、彼女のアプローチは知的財産権の侵害で訴えられかねない。それでも「アディダス(ADIDAS)」や「アシックス(ASICS)」との協働につながっているのは、彼女が業界の課題に対する考えを持っていること、そして高いデザイン力とユニークな技法、品質を重視する姿勢ゆえだろう。フィラデルフィア美術館に展示されたり、村上隆とコラボしたりするなどアート分野での活動もブランド価値を高めている。カーカムの取り組みは賛否が分かれるが、新しい視点やアプローチを産業に持ち込んでいる点が興味深く、注視したいデザイナーの1人である。
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