化学原料商社のハイケムはこのほど、ポリ乳酸(PLA)繊維を100%使ったフリースを発表した。とうもろこしを原料とし石油を使わず、生分解性も有するPLA繊維は、ポリエステル代替のサステナブル素材の本命とも言われる一方で、ポリエステル繊維と比べ、耐熱性の弱さで普及が遅れている。ハイケムは国内の繊維メーカーや繊維加工メーカーと協力し、染色や起毛など生産工程で熱加工を多く使用するフリースの開発に成功した。同社の高裕一(たか・ゆういち)取締役は、「PLA繊維で難易度の高いフリースの加工技術を確立し、オープンプラットフォームのような形でノウハウを開放する」という。
化学原料商社のハイケムは中国のPLA原料大手の豊原(ほうげん)集団からPLA原料を調達、独自開発の改質剤などをブレンドしたPLA繊維「ハイラクト」の販売を2021年からスタート。欧州の有力ブランドを顧客に持つタキヒヨーや、カットソー生地で世界的な知名度を持つ小野メリヤス工業(東京・墨田区)などに日本の生地メーカーに糸を供給し、テキスタイル開発支援も行っている。
ハイケムの瀧本英治ファッション・アパレル部長は「3年近く、一つ一つの細かい生産工程の調整を行うなど、試行錯誤を繰り返しながらフリースの開発を進めてきた。PLA繊維にとって最も難易度の高い素材の一つであるフリース開発で、PLA繊維の普及に弾みをつけたい」という。
今回はフリースのほか、緯糸(よこいと)にPLA繊維を使ったデニム(綿60%、PLA40%)、PLA繊維の短繊維100%使いのチノカーゴ、PLA繊維とセルロース繊維「テンセル」を組み合わせたフレンチスリーブのニット(PLA55%、テンセル45%)も公開した。
昨年からは欧州のテキスタイルメーカーとのテキスタイル開発にも着手しているという。「現在、約30社との供給・開発を行っており、早ければ25年春夏物として出てくる」と瀧本部長。
PLA繊維は、素材大手のユニチカが1998年から「テラマック」を商業生産を開始するなど、早い段階から日系の素材メーカーが商業化に取り組んできたものの、耐熱性の低さなどを理由に衣料分野ではなかなか普及が進んでこなかった。ハイケムは21年以降、日本発の技術をベースにPLA繊維の普及を進めてきたが、欧州のテキスタイルメーカーへの供給も行うことで、世界のアパレル市場へのPLA繊維自体の普及を進める。