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ZOZOが描く「販売員のいない次世代リアル店舗」の青写真 

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2026年にオープン?ZOZOが描く「次世代リアル店舗」の青写真

ZOZOは2026年をメドに、ECとリアル店舗を融合した「次世代店舗」のオープンを計画する。22年からAIを駆使した「似合う」の解明に着手。22年12月オープンの「似合うラボ」を通じて獲得した成果の一部を、5月には自社運営のコーディネートアプリ「WEAR」に搭載した。澤田宏太郎ZOZO社長兼CEOは商品取扱高(GMV)の中期目標として8000億円を掲げており、この「次世代店舗」を、フィジカルなトラフィックと、購買行動の前のさらに「上流」のトラフィックをも取り込む重要な拠点と位置づける。果たしてZOZOが描く「次世代店舗」の青写真はどのようなものなのか。(この記事は「WWDJAPAN」2024年5月27日号からの抜粋です)

「似合う」を提案する
パーソナルAIボットも登場!?

ZOZOは5月9日、「WEAR」の大幅アップデートの発表と同時に、ユーチューブの公式チャンネルに「『niaulab by ZOZO(似合うラボ)』未来構想」というタイトルの動画を公開した。再生数こそ1000回に満たないものの、ZOZOの今後の戦略を知る上で非常に示唆に富む。動画では、服に悩む女性がスマホで「似合うラボ」アプリに簡単な個人情報などを入力すると、東京都内らしき場所にある「似合うラボ」に誘導される。試着室の中にはインタラクティブミラーが設置され、似合うラボのロゴキャラのボットとの対話を通して、似合う服にたどり着いて行く。

動画の重要なポイントは、①「似合うラボ」という未知のアプリが完成している、②2026年に複数の試着室を備えた「ショールーム型ストア」のオープンを示唆、③現時点では未完成の「似合う」のAIチャットボットが存在する―という3点だ。ZOZOは2年後をメドに、次世代のファッション購買モデルを構想しているのだ。

似合う解明の精度は
現時点で5割。2年で10割に高める
澤田宏太郎/ZOZO社長兼CEO

澤田社長はこの数年、「似合う」の解明を軸に、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を非連続的に成長させるための戦略を練ってきた。22年5月には、18年の社長就任時に掲げた経営方針「MORE FASHION × FASHION TECH」に「ワクワクできる似合うを届ける」を加え、同年12月には、東京・表参道に「似合うラボ」をオープンした。700点以上の試着用のアイテムとプロのスタイリストが常駐する「似合うラボ」は、机上の研究だけでは限界のある「似合う」の解明のためのラボであり、一人あたり2〜3時間をかけて、来場者のインサイトを掘り下げつつ、似合うアイテムのチューニングにプロのスタイリストの手を借りた。1年間で1000人の体験者データの蓄積を通して、似合うをAI(人工知能)などを駆使して解明し、ZOZOユーザーに似合う服を提案できる仕組みを作る狙いがあった。

ZOZOによると、“似合う”には「ジャンル」「味付け」「与えたい印象」「体形の悩み」という4種類の構成要素があり、人によって割合が変わりながら混ざり合っているものなのだという。今年5月の「WEAR」アップデートでは、一部の成果を実装した。澤田社長は、「現時点での似合うの解明の精度は、5割といったところ。2年をかけて似合う解明の精度を高めながら、リアルの場にどう実装するのかを探っていく」と語る。

ZOZOはこの数年、ECサイト運営企業にとって最重要な指標である商品取扱高を着実に上乗せしてきた。澤田社長就任前の19年3月期に3231億円だったGMVは直近の24年3月期には5369億円にまで拡大した。ただ、中期的に掲げるGMV8000億円の達成には、「既存の延長線だけでは無理」(澤田社長)。そこで澤田社長が考えたのが、購買前のトラフィックを引き込むこと、加えてEC以外、つまりリアル店舗への参入だった。欲しいものを買いに訪れる、その手前の「欲しい」、あるいはそのトリガーとなり得るメディア的な役割を強化できれば、自然と「ゾゾタウン」への流入を増やせる。また、コロナ禍を経て高まったとはいえ、日本全体のファッションEC化率はまだ20%ほどに過ぎない。リアル店舗への参入は、非連続的な成長を目指すZOZOにとって、避けては通れない道になる。

「似合う」の解明を軸にした「ファッション特化型パーソナルボットの開発」と「次世代型のショールーミングストアの展開」は、この2つを同時に解決できるうまい手段だ。成功すれば、ファッションリテールそのもののアップデートにもつながる。26年は、日本のファッションリテールにとっても大きなターニングポイントになりそうだ。

ZOZOが描く「次世代店舗」への道

ZOZOTOWN

商品取扱高 5369億円
年間購入者 1168万人
取扱ブランド数 9021ブランド
商品単価 4003円
年間出荷数 546万件
*2024年3月期

2022.12- niaulab

niaulab

・人工知能(AI)と人間のスタイリストの提案をミックス
・「似合う」を研究&実証
・これまで1000件分のデータを蓄積

2024.05- コーディネートアプリ「WEAR」

コーディネートアプリ 「WEAR」

・1700万DL、累計1400万件投稿の日本最大級のコーディネートアプリ
・2024年5月に大幅リニューアル
・「似合うラボ」で開発した一部機能を実装

2026-? シン・niaulab

・試着用サンプル&インタラクティブミラーを備えたショールーミング型ストア
・都内に大型店?
・オープンは2026年を計画か

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