世界規模で化粧品業界の在庫損失額はトップクラスであるが、日本でも“コスメロス”は強く問題視されている。サキュレアクトによると、日本の化粧品の年間出荷個数は約25億個(2022年経済産業省化粧品出荷統計)で、化粧品使用人口から推定すると製造した時点で約56%が廃棄対象となる可能性があるという。また、モーンガータの調査では年間約2万〜3万t以上の化粧品バルクが廃棄されていると推測している。それでも、化粧品業界の欠品は致命傷であるように、大手各社は需要予測の精度を上げながら、機会損失と余剰在庫の最小化を進めている。(この記事は「WWDJAPAN」2024年5月27日号付録「WWDBEAUTY」からの抜粋です)
2015年から始まったSDGsへの取り組みもあり、日本の消費者の理解や認知度は進んでいるが、関係者は「消費者の実質的なアクションには遅れが出ている」と指摘する。資生堂の中村亜希子 サステナビリティ戦略推進部長は「官民一体となった推進が重要であり、特に私たちのように、消費者にモノ・サービスを届ける企業が啓発していく責務があると考えている」と力強く語り、今後の取り組みに期待がかかる。サステナビリティ実現に向けて、日本の化粧品業界は引き続き、在庫管理の改善や消費者啓発を推進していく必要がありそうだ。
大手化粧品企業の
ごみ・廃棄物問題への最新アプローチ
パッケージの見直しや再利用、回収など各社が課題解決に向けて取り組んでいる。
花王
「もったいないを、ほっとけない」の
精神で「ごみゼロ」社会の実現へ
花王(KAO)のESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」では、重点テーマの1つに「ごみゼロ」を掲げている。プラスチック包装容器の削減や資源循環を目指した4Rを推進。リデュースイノベーションでは、長年取り組んできた「つめかえパック」や「つけかえ」提案でプラスチック使用量を削減。2023年に食器用洗剤「キュキュット(CUCUTE)」で薄肉強度の“つめかえボトル”を発売し、ユーザーから支持を得た。リサイクルイノベーションでは、30年までに花王が関与したプラスチックの再資源化率を50%まで高める目標を掲げ、自治体やNPOと連携した「リサイクリエーション」などを展開。また、廃PETを活用した舗装道路添加剤の技術開発も進め、「使ったら、捨てる」の概念を変える取り組みを進行中だ。
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