2009年から続く「WWDBEAUTY」のベストコスメ特集では、バイヤーのアンケートをもとに本当に売れた商品を表彰する。連載「ベスコス歴代名鑑」では、15年以上続く本特集の中でも常にランキングに入賞する“傑作”をピックアップ。時代を超えて愛される理由や商品の魅力について、美容ジャーナリストの加藤智一が深掘りする。
「WWDBEAUTY」ベストコスメ史上最多受賞は
「アルビオン」の化粧水“スキコン”
「WWDBEAUTY」のベストコスメ史上において、最多となる受賞回数を誇るのが「アルビオン(ALBION)」の化粧水、“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル N(以下、スキコン)”だ。まず驚くのはその歴史。1974年に誕生して以来、今年で50周年を迎えるという“大ロングセラー”。しかも、発売当初のポスター写真を見て分わかるように、商品パッケージが現行版とほとんど変わっていないということにも感嘆する。そんなタイムレスな魅力を放つ化粧水だが、発売当時は“白濁した化粧水”は極めて珍しく、認知されるまでには時間がかかったという。
当時は新しかった“白い化粧水”
「当時、化粧水と言えば、紫やピンク味を帯びた色付きが主流。しかも、化粧水の役割は朝は収れん、夜は保湿と分かれているのが一般的でした。そんな中、当時の開発チームは収れんと保湿の機能を一本化させたい、この世にないものを作りたいという情熱から、“スキコン”の開発を始めました」(高柳映理子・経営企画部広報グループ)。収れんと保湿の機能を一本化させるうえでカギとなったのが水分と油分をバランスよく配合する“乳化技術”。“先行乳液”のスキンケア理論を提案しているアルビオンだからこそ、乳液で培った技術がここで生かされ、白濁した唯一無二の“白い化粧水”が誕生した。
しかし、発売当初は販売には苦戦を強いられた。というのも、当時の化粧水の価格は700~800円ほどだったが、こちらは150mLで5000円というかなり強気の価格設定。加えて、“白い化粧水”という、今までにない斬新さゆえ、そう簡単には受け入れられなかったのだ。
美容部員提案の「マスク美容法」で人気に火がつく
そんな潮目が変わったのは発売から9年がたった1983年のこと。この化粧水の肌効果に絶対的な自信をもっていた全国の美容部員が化粧水をペーパーマスクにしみ込ませて使用する「マスク美容法」を提案。店頭で肌実感をしてもらうことで購買につながり、その評判は“スキコン”という愛称とともに徐々に全国へと広がっていく。
そして、愛用者が増えるとともに、「さっぱりする仕上がりなのに保湿する」という日本人好みの使用感が口コミで高評価を獲得。すると、「WWDBEAUTY」のほか、各媒体でベストコスメ賞を獲得しはじめ、顧客も急増。2024年内には販売数量が5000万本に到達する予定という。
「肌や脳が“スキコン”を記憶」してリピート
「お客さまからよく伺うのが、“スキコン”以外のほかの化粧水を使っていても、何か肌トラブルがあった時は“スキコン”に戻ってくる、というエピソードです。一度かぐとやみつきになるという清涼感のあるフローラルブーケの香りや、ひんやりとした使い心地ながらしっとり潤う仕上がりなど、まるで肌や脳が“スキコン”を記憶しているかのよう、とお話してくださるお客さまも多くいらっしゃいます」(大城玲奈・経営企画部広報グループ)。
2022年には全国で働く美容部員と営業担当者から、約70人を選抜し、それぞれが“スキコン”への思い、顧客へのメッセージを発信する“#スキコニスト”キャンペーンも実施。さらなる新客を獲得した。
このような施策ができるのも“スキコン”が国民的化粧水として認知されているからこそ。テクスチャーや使用感が気持ちいいのはもちろん、“スキコン”を使っている私も誇らしい。そんな愛用者の心をくすぐる魅力がこの化粧水にはあるのだろう。
最新版は6月24日から発表!
「WWDBEAUTY2024年上半期ベストコスメ」は「WWDJAPAN」6月24日号の紙面で発表します。上半期に“本当に”売れたコスメは何なのか?ウェブサイトでも順次公開していくのでぜひチェックしてください。