アトモスの創業者・本明秀文さんの独自の目線と経験から、商売のヒントを探る連載。トレンドが移り変わるのは当たり前。ストリート熱もすっかり醒めてきて、そんな世間の風当たりを感じてか、ストリートファッション・スニーカー界では、このところ人気があったアーカイブモデルが復刻されがちだ。擦って擦って、影も形もなくなるまで擦り続けるかのようなその風潮は、ときに目を覆いたくなるものがある。今回は、そもそもなぜストリートは飽きられてしまったのか、真剣に考えてみた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年5月27日号からの抜粋です)
――本明さんも珍しくエリック・ヘイズ(ERIC HAZE)の日本上陸30周年展覧会「RE·HAZE」のローンチパーティーに顔を出していましたね。信國太志さんがスレッズで「僕は21のときに彼のブランド作る契約話すすめてお金の話しかしない彼も最終合意に至り契約する日に家に行くと他とやるって断られた。ストリートファッションは金まみれの世界だったな(原文ママ、一部抜粋)」と投稿されていたのが気になりました。ストリートの本質的な部分かもと思って。
本明秀文(以下、本明):ストリートって世間からはじかれた文化、社会に適合できなかった文化だと僕は思っている。道端でブラブラして、ハッパを吸うことがファッション。でもそれが、アメリカだとカルチャーとして根付いた。それをビジネスとして成功させたのが「シュプリーム(SUPREME)」。90年代の「シュプリーム」を知る人は、「あの『シュプリーム』が(M&Aで)こんなに高く売れるの?」と驚いたと思う。
だけど、その「シュプリーム」も親会社のVFCが売却するんじゃないかという噂が出ている。大人たちが金儲けできそうと思っていろいろ近付いてきたけど、うまくいかない。もともと世の中の流れに乗れない異端なファッションだったから、面白かったんだよね。肝心のヘイズだけど、良くも悪くも、彼はそのビジネス路線に乗らなかった、あるいは乗れなかった。彼の展覧会でアーカイブを見て感じたのは、30年間ずっと同じということ。よく言えばオリジナリティーを突き通しているし、ともすれば変わっていない。
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