ファッション

40周年の「デシグアル」、リブランディングの集大成をバルセロナで披露

スペイン・バルセロナ生まれのファッションブランド「デシグアル」。地中海に面した土地ならではの大胆でポジティブな感性を盛り込んだファッションは、ブランド名が意味する「ほかとは違う」ことを謳歌し人々の個性を応援してきた。同ブランドは今年創業40周年を迎えた。アニバーサリーイヤーを記念してこのほど、バルセロナ本社前のビーチ沿いでファッションショーを開催。近年取り組んでいるリブランディングの集大成として、これまでの変遷をたどると同時に「ほかとは違う」ファッションの楽しさを未来へつないでいく強い意志を見せた。

アーカイブをモダンに刷新、
ヘルシーで官能的な「デシグアル」ガール

バルセロナの空が夕日に染まりかけたころ、ショーはスタート。ファーストルックに登場したモデルで女優のハリ・ネフ(Hari Nef)はまさに風景とマッチする、スカイブルーからイエロー、オレンジへとグラデーションを描くチュールドレスで登場した。続くアシンメトリーのチュールトップと90年代のアーカイブに着想を得たベージュのカプリパンツの組み合わせは、軽快で爽やかなムードを盛り上げる。

ビキニトップにリラックスフィットのパンツを合わせたり、デニムジャケットとミニスカートのセットアップなどを合わせたりしたルックはバルセロナらしいヘルシーさと官能性のバランス感を見せる。「リフレクションズ」のコレクションテーマを連想させるミラーの刺しゅうを施したアシンメトリーのスカートは、ヘルシーなルックに華やかさを加えた。

「デシグアル」の原点は、創業者のトーマス・メイヤー(Thomas Mayer)がビンテージのデニムパンツを解体して生み出した一点物のジャケットだ。以来さまざまに形を変えて受け継がれている再構築やハイブリッドのアプローチは、パッチワーク風のデニムや、ヨーク部分にデニムを組み合わせたトレンチコートで表現した。創業年の1984年に登場したデザインを取り入れたメンズのデニムジャケットとパンツのセットアップや、2010年のアーカイブプリントをあしらったマキシドレスなど、随所にブランドのレガシーをちりばめた。

アクセサリーもバリエーション豊富に

黒のビキニトップにライトブルーのジーンズ、ミラースカートの合わせにはマキシサイズのボヤージュバッグを、チュールドレスには太陽をモチーフにしたメタリックベルト、足元は“D”の形をかたどったポップなカラーリングのサンダルなど、バリエーション豊富に披露したポップなアクセサリーもルックをモダンな印象に仕上げた。

最後は注目を集める新生モデル、アメリア・グレイ(Amelia Gray)が花柄プリントを施した深いVネックのトップスと、黒のカーゴパンツでショーを締めくくった。これまでの大胆なカラーブロッキングではなく、あえて全身ブラックのシックな印象でまとめたフィナーレルックは新生「デシグアル」の新たな章の幕開けを予感させた。

若返りに手応え、
ハンドバッグとバックパックが人気

「デシグアル」は2019年以降、リブランディングに着手し新たなデザインチームによる商品企画やマーケティング戦略などをドラスティックに改革してきた。バラッシュ・クリザニック=APACゼネラルマネージャーにその手応えと日本市場におけるビジョンを聞いた。

WWD:近年取り組んでいるリブランディングの手応えは?

バラッシュ・クリザニック=APACゼネラルマネージャー(以下、クリザニック):新世代におけるブランドの存在感は確実に高まっている。現在私たちの新規顧客のほとんどが、Z世代と若いミレニアル世代だ。リブランディングを機に刷新した商品とビジュアル戦略が響いている手応えがある。具体的には過去4シーズンで、新規顧客の平均年齢は7歳下がった。総売上高の4割を占めるハンドバッグとバックパックは、特に若い世代から支持を集めている。リブランディングのもう一つの目的は、サステナビリティの推進だ。環境配慮型素材を積極的に採用し、現在までにコレクションの9割が環境に配慮した設計になった点も加えたい。

WWD:特にアジア市場での商況は?

クリザニック:アジア地域はグローバル全体の売り上げのうち15%を占めている。特に中国、日本、ASEAN地域は非常に好調だ。中でも中国はリブランディング後に新たに獲得できた市場で、「Tモール(天猫国際、T MALL)」をはじめとするECモールや主要都市への出店に多くを投資してきた。9月に上海にオープンする旗艦店を含め、2024年中に5つの実店舗をオープンする予定だ。現地のインフルエンサーとのコラボレーションや、ニーズに合わせたマーケティング・キャンペーンが中国の消費者から共感を呼んでいる。

WWD:リブランディング後の日本市場の反応は?

クリザニック:日本も着実に業績を伸ばしている。3週間ごとにECと実店舗に新商品を投入する手法で、常に新鮮な購買体験を求める若年層の期待に応えられている。加えて、コロナ以降大阪や東京などの主要都市では実店舗への客足も戻っている。特にアパレル商品の売れ筋は、日本とヨーロッパでは全く異なる。そうした日本独自のニーズに応えるためにも、コラボレーションや限定商品、アジア向けのサイズやディテールの修正なども行っている。

日本は価格競争力と
ブランド価値のバランス維持がカギ

WWD:「ヘド メイナー(HED MAYNER)」や「コリーナ ストラーダ」など話題性のあるコラボレーションも続いた。

クリザニック:これらのコレクションは特に日本の旗艦店での反応がとても良く、売り上げも上位に位置する。コラボレーションは、「デシグアル」に新鮮な創造性と革新性をもたらすと同時に新たな層との接点になっている。そのため今後は、日本と韓国の協業先にアプローチしたり、欧米のパートナーらと日本でのイベントを行ったりすることに注力する。

WWD:今後さらに日本市場でのシェアを伸ばすためには何が必要と考える?

クリザニック:ブランドの独自性と地中海的なファッションのDNAを犠牲にすることなく、日本市場に適応していくことが命題だ。日本の小売市場は国内外のブランドで飽和状態で、競争率が高いからこそ、日本の消費者の趣味嗜好を深く理解することは欠かせない。商品開発やマーケティング戦略において、変化する日本の消費者の好みやトレンドに柔軟に応じられる態勢を整える。日本独自の効率的な物流網の構築も必要だ。また、高い品質とラグジュアリーな商品を求める傾向は強い一方で、この経済状況下も相まって日本の消費者はとても価格に敏感だ。価格競争力とブランド価値のバランスを維持することが、ここでの成功には欠かせないだろう。

WWD:日本の消費者に「デシグアル」の世界観に共感してもらうために具体的に今後仕掛けることは?

クリザニック:私たちは今、従来の「コンテンツ・ピラミッド」を反転しようとしている。つまり、これまではグローバルなコンテンツに重きを置いていたが、これからはその地域のKOLやインフルエンサー、またはユーザー主導のコンテンツがカギになる。MetaやLINE、TikTokといったプラットフォームに投資し、 よりローカルなコンテンツ作りに力を入れる。

問い合わせ先
デシグアルストア 銀座中央通り店
03-6264-5431