花王が4月にスタートしたヘアケアブランド「メルト(MELT)」が滑り出し絶好調だ。5月末時点での売り上げは計画比9倍のペース。順調に進捗すれば、年間売り上げは計画値の3倍以上で着地する見込みだ。同社のインバスヘアケア商品は過去数年にわたり小売店におけるシェアが縮小していたが、「メルト」の発売以降は拡大に転じており、V時回復のけん引役として期待がかかる。
「競合品の倍以上の売れ行き」
近年のドラッグストアのヘアケア売り場では「ヨル(YOLU)」「アンドハニー(&HONEY)」などに代表されるプレミアムゾーン(単価1500〜2000円前後)の商品が人気で、各社がこぞって新商品を出している。マツキヨココカラグループのバイイングを担うMCCマネジメント 商品統括本部 商品部 化粧品課 主事の佐名川豊氏は「プレミアムヘアケアの商品が急激に増える中で、われわれもお客さまに届けるべきものを目利きしなければならない」と話す。参入がやや後手に回った花王だが、佐名川氏によれば、「メルト」は最近発売した競合のヘアケア商品と比較しても「倍以上の売れ行き」という。
「メルト」がスタートダッシュを切れた理由はなぜか。佐名川氏は支持される商品のポイントについて、ブランドのコンセプトが生み出す“情緒”と、実際に使ってみて髪の調子のよさなどを実感できる“中身”の2つを挙げる。「これらをしっかりと両立できているものは、一時的な拡散で終わらず、評価も定着していく傾向がある」。
ユーチューバーが評価する処方と
コンセプトが一貫したラインアップ
「メルト」の中身に関していえば、“モイストシャンプー”と“モイストトリートメント”(各480mL、各1760円※編集部調べ)の共通成分として、ラノリン脂肪酸とメルティセラミド(ビスメトキシプロピルアミドイソドコサン)といった、髪の表面と内側を同時に補修する成分を配合している。消費者の美容成分への興味関心は高まっており、特に分析系ユーチューバーの評価は新ブランドの浮沈を左右する。「『メルト』の開発においては、最近の成分の潮流を徹底的に調べ上げ、処方を練った。その結果としてユーチューバーからオーガニックで高評価をいただき、その先にいるお客さまにもしっかりと魅力が伝わった」(花王の服部有香シニアマーケター)。
“休息美容”のコンセプトを表現した、一貫性のある商品ラインアップも特徴。「リラックスできる香りや体験に徹底的にこだわった世界観」で、アウトバス商品までライン使いするファンもすでに多く、売り上げを底上げしている。シャンプーと一緒にスペシャルケアとして使う“クリーミーフォーム”(1g×12包、2200円※同)はパウダーを水と混ぜると濃密な泡ができ、毛穴の汚れや皮脂まで浮き上がらせて落とすとともに、トリートメントのなじみをよくする。アウトバス用の“モイストコンディショニングウォーター”(170mL、1430円※同)はとろっとしたテクスチャーの“髪の化粧水”で、ドライヤーの熱から髪を守り、寝ぐせや日中の浮き毛を防ぐ。今月8日に発売するフォームタイプのヘアケアスプレー“スパークリングケアスプレー”は炭酸泡がパチパチと弾け、ヘッドスパのような気分でヘアケアができる。
試用品の売れ行きも1位
積極施策で認知を拡大
一般消費者1万人を対象にしたアンケートでは、「メルト」を“知っている”と答えた割合が2割に達するなど、すでに一定の認知を獲得している。シャンプー&トリートメントのトライアル用(110円、編集部調べ)は、マツモトキヨシグループ、ココカラファイングループで4月2〜21日の販売数量が1位となるなど、購入検討段階の潜在層も多いことがうかがえる。
市場で早期に確固たる地位を築くため、積極的に施策を打つ。6月30日まで、マツモトキヨシの「SHIBUYA DOGENAZKA FLAG(以下、渋谷店)」と「池袋 Part2店」の2店舗でポップアップイベントを開催している。集客の多い都心2店での露出により、認知を一気に拡大する狙いだ。渋谷店では店舗上階にある美容室のNORAと連携したキャンペーンを実施。ブランドの商品を3300円以上購入した客には、抽選で「メルト」の商品を使ったヘッドスパ体験を提供し、“休息美容”のコンセプトを深く伝える。