「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」と「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」を擁するPVHコープ(PVH CORP以下、PVH)は6月4日、マルタイン・ハグマン(Martijn Hagman)=トミー ヒルフィガー グローバルおよびPVHヨーロッパ最高経営責任者(CEO)の退任を発表した。同氏は引き継ぎのため、当面はアドバイザーとして同社に残るという。
今後は、リー・リッツ・ゴールドマン(Lea Rytz Goldman)=トミー ヒルフィガー グローバル・プレジデントが同ブランドを率いる。PVHヨーロッパについては、後任が正式に決定するまで、デイビッド・サブマン(David Savman)PVH最高サプライチェーン責任者が暫定的にCEOを務める。
ステファン・ラーソン(Stefan Larsson)PVH CEOは、「16年にわたり、当社に多大な貢献をしてくれたマルタインに感謝する。当社の欧州事業を、市場をリードする収益性の高いマルチブランドビジネスに育ててくれたキーパーソンだ。その後を引き継ぐデイビッドは、中期的な事業戦略“PVH+ プラン(PVH+ Plan)”全体を率いるなど、重要な役割を果たしている」と語った。
2024年2~4月期は見通しを上回る結果に
今回の人事と同日に、PVHは2024年2〜4月期(第1四半期)決算を発表。売上高は前年同期比9.5%減の19億5190万ドル(約3064億円)、EBIT(利払前・税引前損益)は同3.2%増の2億510万ドル(約322億円)、純利益は同11.3%増の1億5140万ドル(約237億円)と減収増益だった。
地域別に見ると、北米とアジアの売り上げは堅調だったものの、欧州が不調で全体の重しに。ブランド別に見ると、「トミー ヒルフィガー」の売上高は同9.9%減の10億1330万ドル(約1590億円)、「カルバン・クライン」は同0.1%減の8億8680万ドル(約1392億円)だった。
PVHが4月に発表した24年1月期決算と同様に、今期も主にコスト削減やサプライチェーンの合理化、在庫率の改善などにより増益となったものの、地政学上の先行き不透明感やマクロ経済の悪化による欧州市場の減速が売り上げに響いている。一方で、当初は今期の売上高の見通しを現地通貨ベースで同11%減としていたが、それをやや上回る結果となった。しかし、前期比6~7%減としていた通期の見通しについて上方修正はしないことを明らかにしている。
「カルバン・クライン」のコレクション事業が6年ぶりに復活
PVHは現在、過渡期にある。主力の「カルバン・クライン」と「トミー ヒルフィガー」に注力すべく、21年7月にヘリテージブランド事業を終了。23年11月には、傘下のアンダーウエアブランド「ワーナーズ(WARNER'S)」などを売却した。24年5月には、「カルバン・クライン」のコレクション・クリエイティブ・ディレクターとして、ヴェロニカ・レオーニ(Veronica Leoni)「クイラ(QUIRA)」創業デザイナーを任命。同氏は9月からメンズ、ウィメンズ、アンダーウエア、アクセサリーを手掛け、25年秋にデビューコレクションを発表する予定だが、これにより19年3月に撤退したコレクション事業が6年ぶりに復活することとなる。