ビューティ

ついにコンシーラーまで!? ベースメイクで“明るい色”が売れる理由

ここ数年、ベースアイテムは“明るい色”が売れる傾向にある。ひと昔前まで、肌作りの重要なテーマは「自分の肌に合うファンデーション選び」であったはずだが、今、明るい色が支持される理由をトレンドや生活者意識とともにひもときたい。

若年層がけん引する“明るい肌”へのニーズ

アジア圏、特に日本において、ここ数年ベースメイクアイテムは明るい色が支持されている。花王の調査によると、特に18~24歳の若年層に顕著な傾向と見ている。辻智子 花王ビューティリサーチ&クリエーションセンター リサーチ担当は、「花王は20年近く、生活者が“現在使っているファンデの色”を調査しています。世代別に見ると、18~24歳の若年層で“明るい色”の使用者が右肩上がりに上昇。2007年時点で“自分の肌色より明るい色”を使う若年層は22%でしたが、19年には過半数の57%まで伸長しました」。

25歳以上の世代では、このような右肩上がりの伸長は見られないという。この調査は対面方式のため、コロナ禍前の19年までのデータだが、直近の24年4月に行われた「ファンデーションの色の好み」に関する調査でも、若年層の明るい肌ニーズが浮き彫りとなった。

「ファンデを選ぶ際に“色の好み”を尋ねたところ、18~24歳の若年層は“自分の肌より明るい色”が39%を占めました。21年に行った同調査では23%だったので、コロナ禍を経て約1.5倍に伸長したことになります」(辻リサーチ担当)。25歳以上の世代においては、自分の肌より明るい色を好む人は18%以下という結果となった。若年層にこれだけ明るいベースメイクが好まれる理由を考察していきたい。

過去20年のファッションと肌の関係を振りかえる

肌のトレンドは、ファッションやカルチャーと密接に連動している。若年層はそもそもトレンドに敏感な世代であり、さらに学生の場合はメイクに対する職業上の制約が少ないことも手伝って、トレンドの傾向が反映されやすいという。ここ20年のトレンドと、若年層が選ぶファンデの変遷が、非常に興味深い。

「90年代後半~2000年代前半はコギャル文化の隆盛期で“小麦肌”が支持された時代でした。00年代半ばになると、フェミニンなスタイルが注目され始めます。この頃から徐々に“明るいファンデ”の使用者が増えていきました」(辻リサーチ担当)。

「小麦肌」は安室奈美恵、「フェミニンスタイル」は蛯原友里がけん引したブームであり、10年代以降になるとフェミニンの流れを継承しつつ「日本的KAWAII文化」が登場する。AKB48が象徴するような、「黒髪+明るい肌」が注目されたのがこの時代だ。15年以降になると並行してK-POP人気が徐々に高まり「黒髪+明るい肌+赤リップ」が定着していく。

「10年代半ば以降は、ファッションも多様化していった時代です。そんな中でも韓国ブームは継続し、現在に至るまで衰えていません。コロナ禍にサブスクやSNSで韓国カルチャーに触れる機会が増えたことも“明るい肌”が支持される要因ではないかと感じています」(辻リサーチ担当)。コロナ禍にファンデの使用率が減り、「トーンアップ下地」や「コンシーラー」で肌を明るく整えるという、新たなベースメイク習慣が登場したことも、明るい肌人気を後押しした一因といえそうだ。

22年以降は数字に現れ、24年秋も人気は継続
明るい肌人気を支えるのは「テクノロジーの進化」

明るい色の人気が、実際に「SNSにおける反響」や「販売数」として表れ始めたのは22年頃である。それまでファンデの売り上げ構成比は、いわゆる“標準色”が大半を占めており、「カネボウ(KANEBO)」ブランドにおいては、全体の約半分を占めていた。「それより明るい色を“全部合わせた合計”が3割程度です。ところが、22年に発売した“ライブリースキン ウェア”においては、明るい色の構成比が48%へと大きく伸長しました。この流れを受けて、24年秋にはピンク系の明るいカラーが追加になる予定です」(辻リサーチ担当)。

イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」においても、22年に同じような傾向が見られたという。「“明るい色”がSNSの反響や販売数に現れたのが、22年春頃でした。韓国でひと足先に発売した“ラディアント タッチ グロウ パクト“の明るい仕上がりが、SNS上で水光肌として旋風を巻き起こします。同年9月の日本上陸時には、最も明るい“B10”が人気となり、今年発売表した“オールアワーズ コンシーラー”においても、ピンク系の一番明るい色“LC2”が最も人気です」(菅原里子イヴ・サンローランPRマネージャー)。

“オールアワーズ コンシーラー”も、この秋さらに明るい色である“LC1”が登場予定だ。

コンシーラーも明るい色が注目される中、フェイスパウダーは果たして同じ傾向が見られるのか、ルースパウダーを全9種もラインナップを誇る「コスメデコルテ(DECORTE)」に聞いた。「今年1月にリニューアルしたルース パウダーで、最も人気なのは“00”という透明感に優れたノーカラータイプです、2位はやわらかな光をまとう“101”、3位は華やかな艶を添える“01”が続きます。色ごとに支持される理由は違いますが、共通するのは“透明感”を巧みに引き出し、肌印象そのものを引き立てることです」(江口菜月コスメデコルテPR担当)

このように、現在あらゆるベースアイテムにおいて“明るい色”“透明感”が支持される理由は、「肌浮きせず自然になじんでしまう」ことに尽きると考える。ひと昔前の明るい色は、一歩間違うと「顔と首で色が違う」状況に陥りやすかった。だからこそ、長年ベースメイクのテーマは「肌に合うファンデ選び」であったはずだ。

「明るい色は、そもそも赤、黄、黒などカラー顔料の配合率が少なく、コントラストが出ずに“のっぺりする”ことが課題でした。『カネボウ』の“ライブリー スキンウェア”は、顔料と塗膜技術の進化によって、肌本来の血色感を失わず明るいトーンの演出を可能にしています」(辻リサーチ担当)。

明るい肌ブームは続くのか?
未来を占う「10代の美容習慣」

今後、ファッションやカルチャーの変遷とともに、再び「小麦肌」が支持される時代もあるだろう。何より今は、トーンや質感含め「肌の多様性」が重視される時代といえる。一方で、個人的には「今後も明るい肌ブームはなくならないのでは」と感じている。

理由の1つは、前述のテクノロジーの進化だ。若年層はトレンド重視で良いかもしれないが、年齢を重ねた肌にはくすみ、色ムラなどの悩みが生じ、流行だけで肌作りを語れなくなる。テクノロジーの進化によって、このような肌悩みを解消しながら「明るく整う」のであれば、大人世代にこそ響くのではないか。もう1つ、ここ20年で「10代の日焼け止め使用率」が各段に向上したことも注目しておきたい。

花王の調査によると、20年における12~19歳の日焼け止め使用率は、実に8割近くまで向上している。20年前の00年時点ですら、12~14歳の約3割、15歳~19歳の約7割が日焼け止めを使用していた。

20年前に日焼け止めを使っていた10代は、現在30代後半~40代前半。この世代は日焼けに対する意識が高く、さらに彼らの子どもたちにも同じ意識が受け継がれることが予想される。そう考えると、トレンドの影響はありつつも、小麦肌より「明るい肌」を支持する意識は着々と醸成されていくのではないか。だとするならば、明るいベースアイテムを取り巻く未来は、文字通り「明るい」ように思えてならない。

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