毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年6月10日号からの抜粋です)
小田島:20年以上「WWDJAPAN」で働いてきて、デザイナー、バイヤー、販売員、経営者についての特集は何度か作ってきましたが、MDを掘り下げる特集は作ったことがありません。私自身、MDがどんな仕事かよく分かっていなかったのが、今回特集を企画したきっかけです。エキスパートによる解説と、3ブランドのMDを1シーズン追いかけてようやく見えてきました。
本橋:一般的にMDの仕事は商品計画と言われますが、その4文字が何を指すかは会社やブランドによって異なります。だから分かりづらい。モノ作りから店頭での客とのやり取りまで全て把握しているのがMDじゃないでしょうか。取材を通し、MDに共通して必要な資質は見えましたか?
ファッションビジネスの魅力が詰まった職種
小田島:いろいろなことを同時進行できるマルチな人でなければ難しいと感じました。ブランドや商品についての知識はもちろん、数字にも強く、さまざまな部署と関わるためコミュニケーション力も必要で、不測の事態に対応する柔軟性も欠かせない。すごく大変な仕事ゆえ、それを楽しく乗りこなすタフさも必要です。また、大きな金額を会社に任せてもらっているという、謙虚さも3人には共通していました。ファッションビジネスの魅力が詰まった職種なので、注目度がますます高まって、現役MDが自分たちの仕事を誇らしく思えるような特集になればいいなと思っています。
本橋:暖冬や為替の変化で、MDの仕事は近年ますます難しくなっていると思います。一方で、最近はAIで需要予測を立てるといった話も聞くようになりました。今後AIの精度が上がっていくと、MDの仕事はどうなるんでしょうか。
小田島:今回密着した3人は需要予測にAIは使っていないと言っていました。ただ、どんなに精緻に予測を立てても、必ず不測の事態は起こります。正確な計画をいかに立てるかより、計画から外れたときにいかに軌道修正するかが重要と強く感じました。
本橋:計画を立てるのが仕事、というのではなく、計画を立ててからが始まりですね。いかに計画通りに持っていくかが問われる。
小田島:そのための手札をたくさん持っている人が優秀なMDだと思います。1シーズン通して、何度も取材したからこそ気付けたことは多いですね。密着取材はまたやりたいです。