PROFILE: 加藤愛里/「ティーナ:ジョジュン」クリエイティブディレクター&デザイナー
「ティーナ:ジョジュン(TINA:JOJUN)」は、ルミネエスト新宿やルクア大阪など全国に5店舗を構える、若い女性の間で人気のアパレルブランドだ。クリエイティブディレクター&デザイナーの加藤愛里はインスタフォロワー21万人を抱えるカリスマ。大学時代からユーチューブやインスタグラムで活動していたが、卒業後は都内のマーケティング会社に勤めた後、愛知県のアパレル企業であるシライ(白井浩一社長)に正社員として入社し、ブランドを立ち上げた。インフルエンサーが個人事業主としてブランドを運営するケースも珍しくない昨今、彼女が「アパレル社員」として働く道を選んだ理由とブランドの今後について聞いた。
WWDJAPAN(以下、WWD):「ティーナ:ジョジュン」のコンセプトやターゲットについて教えてください。
加藤愛里(以下、加藤):“OLD AND NEW”がコンセプトです。「古くて新しい」「定番だけど奥深い」「定番だけど被らない」服作りを心掛けています。私のフォロワーの層がだいたい大学1年生ぐらいから32、3ぐらいまでの方が多いので、そのあたりの年齢層を意識していますね。
WWD:ブランド立ち上げまでの経緯は。
加藤:小学生の時からずっと自分でファッションブランドをやりたい、ブランドをやるならブランド名は「ティーナ」にしたい、とずっと家族に言っていたのを覚えています。デザイナーになるっていう夢以外、考えたことがなくて。
高校ではニュージーランドに1年間留学していました。そこで服ができるまでの一連の流れを学ぶ中で、自分が「職人気質ではない」と気づきました。手を動かして服を作ることが好きなんじゃなくて、それまでの過程、頭の中で自分が欲しいものを考えているときが、1番自分にとって幸せな時間だと気づいたんです。 だから服飾学校には行かず、大学ではマーケティングとマネジメントの勉強をしました。
大学時代には「まずSNSでファンを集めよう!」と思い、ユーチューブチャンネルも開設しました。自分が好きな世界観を発信しているうちに、自然とフォロワーが増えて“インフルエンサー”と言われるようになりました。ただその間も、あくまでブランドをやることしか頭になかったので、ユーチューブやインスタグラムは私の感性を表現する場所として徹底していました。卒業後はシライに入社して、ブランドを立ち上げました。
WWD:例えばインフルエンサーとしての活動をメインにしつつ、業務委託でブランド運営に携わる選択肢もあったのではないでしょうか。
加藤:「インフルエンサーブランド」ではなく、しっかりと服として見てもらえるモノ作りをしたいと思ったのが1番の理由です。それに個人事業主だと、自分の性格的に「今後どうしよう」「大丈夫かな」と心配ごとで頭がいっぱいになってしまうので(笑)。学生の頃からブランドをやりたい!とSNSで公言していたので、たくさんの会社からお声がけいただきました。その中で、「自分の作りたいものが本当に作れるのか?」ということを軸に会社(シライ)を選びました。当社はウィメンズファッションを扱う自社ECサイト「ジョイントスペース(JOINT SPACE)」を運営しています。自社でアパレル商品の企画・製造・販売まで一貫できる体制があるのが決め手でしたね。
WWD::社員としての働き方は?
加藤:ガッツリ週5で働いています。シーズンのコンセプト決めはもちろん、服のデザインからSNS・展示会に関することまで全て関わります。インスタグラムのフィード投稿のトップは「ティーナ」の世界観が一番伝わるようにしたいですし、私にしかできないクリエイティブ。写真撮影を自分ですることもあります。「ティーナ」の世界観を表現するための仕事は、基本的に全部自分が関わっています。逆に、インフルエンサーとしての活動は合間を縫ってやる程度になってしまっていて、ユーチューブの更新も年に3回とかになっちゃっています。
WWD:一番大変な仕事は何ですか?
加藤:デザインですね。トップスの柄はイラレで制作して、オリジナルの柄を1人で作ることもあります。「どっからどう見てもあいりちゃんが作ったでしょ!」みたいなものを作ることがこだわりです。世の中のトレンドを意識しすぎて、「みんなこういうものが好きだよね」という服を作ってた時期もありました。その時は、今よりもっときれいめの服が多かったです。その時はSNSフォロワーも伸び悩んでいて。何がダメなんだろうと考えたとき、今の「ティーナ」の服を自分が着たいかと考えたら「自分らしくない」「違うな」と気がついたんです。2023年秋冬のタイミングで、世の中のニーズを一旦考えないようにして、自分が本当に着たい服だけを作りました。展示会の反応も良くなり、SNS発信の方向性も変えたことでフォロワーがまた一気に伸びました。
WWD:やりがいは?
加藤:最初はファンの子が買ってくれることが、すごく自分の背中を押してくれていたんです。街を歩いていると必ず2、3人自分のブランドの服を着ている人に会うのですが、昔はその着ている子と目が合うと「あいりちゃんだ!」って声を掛けられていました。ただ今は少なくなりましたね。逆に「ティーナ」を着ていても私のことを知らない人が増えていて、それがうれしいです。ブランドが私から離れて独り立ちできているということだから。「ティーナ」が私の知らないところで「服」として選ばれているんだなぁと実感します。
インフルエンサーブランドって今の時代結構くくりにされちゃうじゃないですか。私的にはそれを乗り越えるのが第1ステップだなって思っていて、それはクリアできたのかな。
ティーナのファンには私より一回り年下の学生さんもたくさんいます。これから「好きなものばかり作っていていいのかな?」「デザインよりも質なのかな?」と悩むこともあるかもしれませんが、ファンの子たちと一緒に年を重ねながら、「ティーナ」をできるだけ長く続けていきたいです。