「マックスマーラ(MAX MARA)」は11日、イタリア・ベネチアのドゥカーレ宮殿で2025年リゾート・コレクションを発表した。ショーの前日には、コレクションのインスピレーション源ともなったべネチアの街の歴史や芸術への理解を深めるカルチャーツアーを実施。世界各国から集まった約200人のゲストは、徒歩と船で散策し1000年以上の歴史を誇る水上都市の魅力を学んだ。そのツアーの様子を含めてリポートする。
古典から現代まで3つの美術館を一気に巡る
ショーの前にゲストが訪れたのは、美術に関係する3つの場所だ。ひとつ目は、中世後期から18世紀までの絵画を収蔵するアカデミア美術館。交易で栄え、異なる文化・宗教などの価値が交差し醸成してきた街の歴史をガイドによる詳しい解説を通じて学ぶ。2つ目はピカソ、マルセル・デュシャン、マグリッドなど19世紀後半から20世紀前半の才能をいち早く見出してきた「ペギー・グッゲンハイム・コレクション」で、ベネチアがアートの街として存在を確立した背景を知る。さらに開催中の「ベネチア・ヴィエンナーレ」では世界各国の最新アートを通じて移民問題をはじめとする現代社会の課題を考えるきっかけを得た。時代の異なる3つの美術館を一気に巡ることで、ベネチアという街がいかに多様な文化から影響を受け価値を醸成してきたかを体感した。
このツアーのゴールはショー会場ともなったドゥカーレ宮殿。8世紀に創設され、かつてベネチア共和国の総督邸兼政庁だった場所。荘厳な建造物は、ローマ帝国、中世ヨーロッパのロンバルト民族、そしてイスラムという3つの文化の影響が見て取れるまさにベネチアを象徴する歴史的建造物だ。
着想源はマルコ・ポーロ。その真意とは
イアン・グリフィス=「マックスマーラ」クリエイティブ・ディレクターがショーは今季の着想源に、没後700年を迎えるマルコ・ポーロをあげる。ただしそれは表面的に当時の服飾文化をなぞることとは違うようだ。ベネチア共和国の商人であったマルコ・ポーロは「東方見聞録」を通じてアジアの存在をヨーロッパへ紹介してきた。マルコ・ポーロの存在を借りて、イアンはベネチアの地で文化や価値が「交わる」ことの大切さに光を当てる。
イアンはまた、「ラグジュアリーとは?」の考えを深めるのにもベネチアは最適だったと言う。「ベネチアは、イタリアのラグジュアリービジネスが始まったとされている場所。ラグジュアリーについて歴史的観点からじっくりと考察したいとき、ベネチアに勝る場所はないと思う。私にとっては美しく魅力的な素材やアイテムに囲まれたいというラグジュアリーへの欲望は不変的なものだと気づかせてくれる場所でもある」と話している。
服をデザインにあたり、より具体的にイアンの着想源となったのはベネチアの建築物だ。街の建物に使用されているベネチアの石は、まさに「マックスマーラ」の特徴でもあるニュートラルカラーやベリーニの絵画に見られるようなニュアンスカラーである。また尖ったアーチや細かい透かし彫りなど、ベネチアのゴシック建築の特徴的なスタイルは、東洋と⻄洋のモチーフを組み合わせたもの。これらのモチーフがブロケードやジャカード織、プリントで採用された。
このようにコレクションには文化的要素を多く含むが、それぞれのアイテムはシンプルに美しく、着心地が良さげだ。人気のモコモコ素材“テディベア”はスポーティなブルゾンとして登場した。「マックスマーラ」といえばコートへの言及が欠かせないが、今季はカシミアやアルパカといった上質素材を使い、サルトリアの技術を活かした「マックスマーラ アトリエ」からも数ルックがショーに登場。コートを知り尽くすラウラ・ルスアルディ(Laura Lusuardi)「マックスマーラ」ファッションコーディネーターのこだわりがイアンのスタイルと融合していた。
ローラも来場。ヴェネツィアの街も散策
マルコ・ポーロは実は、「初期のフェミニスト」としても知られており、長期にわたる貿易任務中、女性に重要な職務を委ねたと言う。そういった意味でも“ウーマンエンパワメント”を掲げている「マックスマーラ」とは相性が良い。ショー当日は、ケイト・ハドソンなど各国から俳優やインフルエンサーが姿を見せた。日本からはローラ(Rola)が出席し、カシミアのセットアップ姿を披露した。ローラもジャーナリストたちと同様に数日間、ベネチアの街に滞在し、歴史ある街並みを背景に「マックスマーラ」の着こなしを披露した。