PROFILE: 左から齊藤孝浩/ディマンドワークス代表、金田有弘/モードインターナショナル代表取締役
MDの仕事は、数字への強さやロジカル思考、モノ作りや売り場の知識だけでなく、コミュニケーション力や柔軟性、ブランドへの愛など、多くが求められる。MDのエキスパートである金田有弘モードインターナショナル代表取締役と「WWDJAPAN」の好評連載「ファッション業界のミカタ」でおなじみの齊藤孝浩ディマンドワークス代表に、優秀なMDとダメなMDについて聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年6月10日号からの抜粋です)
WWDJAPAN(以下、WWD):優秀なMDとは?
金田有弘モードインターナショナル代表取締役(以下、金田):「MDの仕事とは?」でも説明した通り、仮説思考ができて、PDCAが回せる人ですね。ロジカルに考え、論理的で分析力があり、定量化できる、定性を文言化できる人が優秀だと思います。
齊藤孝浩ディマンドワークス代表(以下、齊藤):私は需要を起点に考える人です。つまり、店頭をよく回り、お客さまの動向を見て、販売スタッフの声を聞き、他社の店頭も定点観測して、データでは分からない肌感覚的なものとデータを行き来して判断できるMDが優秀だと思います。
金田:うまくいかなかった時の対応力や調整力も大事ですよね。思った通り商品が作れないとか、原価が計画値に収まらないとか、納期がずれるとか。
齊藤:計画通りにいくことの方が少ないですからね。
「リスク対応こそMDの実力が問われる」
金田:事前のリスク想定が必要です。経験者になればなるほどそこは高まります。同時に、リスクに対しての解決法や、リスクが大きそうなものは事前に確認をしていきますよね。優秀なMDは、生産担当やメーカーを信用しません。常にリスクを想定していて、例えば前の週になって急に「納品できません」と連絡が来た際に、「じゃあこの商品を急遽この場所からこっちに持ってこよう」とか、「これを売価変更して先に売ってしまおう」とか、代替案を持ち合わせているんです。こうした対応については、マニュアルもないし、上司が全部決めるばかりでもありません。MDの実力が問われるところです。
齊藤:そうした事態に早く気付き、迅速に対応するためにも、コミュニケーション能力は必須ですね。商品の情報を売り場に分かりやすく提供する力も大事です。どういう意図でこの商品を用意したのかなどを、納期が近くなったタイミングで情報共有するなど、売り場の業務サイクルに合わせて分かりやすく伝えてくれるMDは、現場からの評価は高いし、協力を得られると聞きます。
金田:加えて、他社がやらないような新鮮な提案や顧客の感動を生み出すこともMDとしては大事です。
WWD:記者も今回の現場取材で思ったのは、計画の精度を上げることも大事だが、それ以上に、計画から外れたさまざまなことにどう対応し、目標を達成するための手をどれだけ打てるかの方がMDのスキルとしては有用ではないか、ということだった。では、ダメなMDとは?
金田:勘、経験、度胸の“KKD”に頼る人ですかね。戦略がないから、分析検証ではなく、現象面だけを語ってしまい、再現性がない。また、MDはまとめ役でありながら、調整役であり、決定者。皆から情報を収集し、皆に話を聞いてもらえないといけないのですが、「優秀」とされる人が抜擢されるケースが多いので、舞い上がってしまう人もいます。
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