三越伊勢丹ホールディングスは6月7日、クールジャパンプロジェクト発表会を開き、マレーシアのクアラルンプールで全館丸ごとクールジャパン館として新生オープンするLOT10店の名称を「イセタン・ザ・ジャパン・ストア・クアラルンプール(ISETAN THE JAPAN STORE KUALA LUMPUR)」として10月末に開業することを発表した。「ザ・ジャパン・ストア(THE JAPAN STORE)」は三越伊勢丹のクールジャパンストアの総名称となるもので、一足早く9月末にパリ日本文化会館にオープンする小型店については「ザ・ジャパン・ストア・イセタン・ミツコシ・パリ(THE JAPAN STORE ISETAN MITSUKOSHI PARIS)」とすることを同時に明かした。
店舗は地下1階、グランドフロア、地上1〜4階の6層で、店舗面積は約1万1000平方メートル。メード・イン・ジャパンやメード・バイ・ジャパンの商材が90%以上を占めるもので、従来の展開分類を打破し、新たに4つの美意識(雅・粋・繊・素)と5つの生き方の展開分類(食べる・暮らす・過ごす・楽しむ・学ぶ)の掛け合わせで売り場を編集するという。"美意識=商品分類"と、"生きる=展開分類"とし、日本の四季、日本の多様性、日本のテクノロジーを融合させる。初年度売上高は1億2500万マレーシアリンギット、日本円で約35億円を計画する。ターゲットは現地の富裕層や在マレーシアのニューリッチ層、観光客などで、年間来店客数は140万人、客単価は約6000円を見込む。
店舗の内装デザインには、新宿店のリモデルと同じ、丹下憲孝・丹下都市建築設計代表と、森田恭通グラマラス代表のタッグを起用。各階は回遊式日本庭園をコンセプトにして、明確な通路がなくても、自由に回って自然に回れるという、東屋(あずまや)という考え方で東屋巡りを楽しみながら店内の回遊性を高める造りとしている。メーンエントランスにはパリ在住の新進建築家の田根剛を起用したインスタレーションを設ける。
計画から1年後ろ倒しての開業になるが、大西洋・社長は「少し時間はかかったが、クールジャパン機構にお力添えをいただきながら、日本の本当の良さを発信する施設としては初めての、1万1000平方メートルの店を出せるところまで来た。いろいろなところで"ジャパン"を掲げたプロジェクトがあるが、それらと比較しても圧倒的にユニークで独自性があるものを展開する。商圏は世界中だ」。
一方、クールジャパン機構の太田伸之・社長は、「2013年11月に機構が正式発足した翌日昼に大西社長に全館丸ごとクールジャパンの館を作りませんかと持ち掛けた。(機構の目的は)日本の魅力・技・美意識を伝えること。具体化にはプラットフォームとしてのジャパンチャンネルが必要だった。三越伊勢丹が持つ情報や取引先と、われわれが持つ情報や全国から寄せられる相談などをつなぎ、4分の1以上が地方発の商品が並ぶ。地方から世界への発信、地方を世界につなげるスローガンが、初お披露目できる場所として期待している」と話す。
注目のファッションについては、1階の「粋」コーナーを中心に展開。ストリート系として「マッドストア アンダーカバー」「ポーター」「Gショック」「オニツカタイガー」「Y-3」などを提案。ファンタジー系としてバンダイナムコが展開する機動戦士ガンダムをテーマにしたアパレルブランド「STRICT-G」や「アソビシステム」「フジフイルム ワンダーフォト」「アンリアレイジ」「Q-POT」「ニューニュー」「ミキオサカベ」など新世代のクリエイションを発信。モード系では「カラー」「トーガ プルラ」「N.ハリウッド」「マメ」「ミュベール」「ジョン ローレンス サリバン」「タロウ ホリウチ」などをそろえる。「マスターマインドジャパン」の限定Tシャツや、次世代クリエイターを発信する「ファンタジー ファッション3.9」なども登場する。新たな試みとして、地方をクローズアップした"都道府県解放区"といえる「ファインドジャパン」も打ち出す。
販売については、「おもてなし」と「伝える(コミュニケーション)」を軸に展開。米国三越が主催する、米国・フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートで働きながら、世界中の人に日本文化を紹介する文化交流勤務制度「カルチュラル・リプレゼンタティブ・プログラム」で鍛え上げられたスタッフを中心に組成する「チームなでしこ」が日本流のおもてなしを実践するとともに、クアラルンプールのスタイリスト(販売員)育成も行っていく。
このプロジェクトは、三越伊勢丹の現地法人イセタン・オブ・ジャパンが51%、官民ファンドであるクールジャパン機構が49%を出資して新会社ICJデパートメントストア(マレーシア)を設立して運営するもの。資本金は6000万マレーシアリンギット(約16億7000万円)。