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香水の老香水の老舗メーカー3代目による「ラブソルー」 部屋ごとに香りが異なるパルファムホテルも運営

フレグランス「ラブソルー(LABSOLUE)」は、イタリアの老舗化粧品ブランド「マーヴィン(MARVIN)」を築いたマートン一族によるブランドだ。1940年に医薬品メーカーとして設立されたマーヴィンは60年代に化粧品やフレグランスの製造をスタート。イタリアの国民的な化粧品ブランドとして愛されている。「ラブソルー」は、3代目であるジョルジアとアンブラ・マートン姉妹が設立し、ラボラトリーを併設した世界初のパルファムホテル「マグナ パルス」を開業。68室の部屋ごとに異なる「ラブソルー」の香りが割り当てられている。日本では、歯磨き粉ブランド「マーヴィス(MARVIS)」などを取り扱うアッパーハウスが販売。5月に来日したアンブラ・マートン=ラブソルー共同設立者に話を聞いた。

フランス製中心の香水市場にメード・イン・イタリーを

WWD:フレグランスブランドを立ち上げた経緯は?

アンブラ・マートン=ラブソルー共同設立者(以下、マートン):曽祖父が営んでいたのは抗生物質や目薬などの医薬品を製造するメーカーだったが、そのノウハウ活かして医薬品の安全性を反映した化粧品や香水を生産するようになった。70年代後半にはイタリアがファッションの中心地になった。デザイナーたちは香水を作りたがったが、当時、イタリア製のフレグランスは品質が低いと考えられていたので、皆フランスで製造していた。そこで、父親は、医薬品のように高品質の香水をイタリアで製造できるとデザイナーたちを説得した。「ヴェルサーチェ(VERSACE)」や「ロベルト カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)」など多くのブランドの香水を手掛けるようになりビジネスが拡大した。そして、私たちでオリジナルの香水をつくりたいと考えた。

WWD:「ラブソルー」のブランドコンセプトは?

マートン:ブランド名は、ラボラトリーからの“ラブ”とアブソルート(完全)からの“ソルー”を組み合わせたもの。3代にわたって引き継がれた伝統と歴史に培われた香水製造の基礎を反映している。自然からの抽出物をできるだけ自然のまま贅沢に配合した香りで、フルーツ、フラワー、ウッドという3つのカテゴリーから構成される嗅覚のライブラリー。

WWD:他のフレグランスブランドと大きく違う点は?

マートン:既にブランドはたくさんあるので、同じようなブランドは必要ないと思った。「ラブソルー」はライフスタイルを軸にしたブランドとして、香水やホームフレグランスを提供している。また、3代に渡り、イタリア国内の自社工場で香水を製造してきた。だから、最高の調香師たちとはビジネスだけでなく、家族的な付き合いがあり、深いつながりがある。だから、彼らと一緒に作る香水は、われわれ家族のストーリーの一部であり、通常のブランドのものとは異なる職人的なパーソナルタッチがある。

家族の歴史が刻まれた工場をホテルとラボに

WWD:ラボラトリー併設のホテルをスタートした経緯は?

マートン:香水ビジネスの拡大に伴いミラノ市内にあった香水工場を郊外へ移設した。香水工場はわれわれ一族の伝統が反映された大切な場所。ナビリオ運河近くで、昔は工業地区だったが今はデザイン地区として賑わっている。家族で話し合って工場をラボラトリーとして残そうということになった。そこで、香水とホスピタリティーをコンセプトに、世界で初めて、そして唯一のパルファム・ホテルにした。

WWD:ホテルの部屋ごとに異なる香りをプロデュースしたようだが?

マートン:最初は29部屋だったので、29種類の香水を作った。香水の名前は、シンプルにルームナンバーにした。今では、68部屋になり、その分香りの種類も増えた。好きな香りを選んで部屋に空きがあれば、チェックインできるようにしている。また、ホテルでは、嗅覚に関する体験を提供している。香水から着想を得たアペリティフや料理を提供している。例えば、ローズマリーやベルガモットといった原料から、燻した香りなど、香水作りにまつわるさまざまな要素をシェフやミクソロジストのアイデアでメニューにしている。また、スパでは、アロマテラピーのサービスもある。また、ラボラトリーでは、香りの文化に関するワークショップを行なっている。調香師やリサーチャーによるレクチャーや、日本の香道のセレモニーなど、嗅覚に関する異なるトピックスを選んで無料で開催している。

WWD:どのように、各部屋の香りをデザインしたか?香リには、個人の好き嫌いがあると思うが?

マートン:「ラブソルー」が大切にしている哲学は、“エレガンス”。香水が、着ける人以上に存在感があってはだめ。着ける人と共に息をするような存在であるべき。どの香りも、これは、バニラ、ローズとすぐわかるような圧倒されるような強さがなく、ごく自然でさりげない。だから、あらゆる人に受け入れられる。部屋に入って、気持ちよく特別に感じる香りばかりだ。香水嫌いの某著名フォトグラファーが宿泊した際も、問題なかったし香り付きのアメニティーも使用してくれた。

調香師と共に引き出す香りの“感情”や“質感”

WWD:調香師はどのように選ぶか?

マートン:調香師はアーティストと同じ。絵画に例えると、フィンセント・ヴァン・ゴッホ(Vincent Van Gogh)やパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)、アンリ・マティス(Henri Matisse)らの絵画はスタイルは違えども、それぞれに巨匠と呼ばれる特徴がある。調香師も同じで、この香りであれば、この調香師に頼むべきと直感的に分かる。調香師と働く時に一番大切なのは、彼らをインスパイアすること。香水作りには、技術的な情報やマーケティングを必要とする一方で、感情や質感といったものを感じ取ってもらうよう誘う必要がある。ランチを一緒にしたり、語り合ったり、とてもシンプルなこと。だが、一つの香りの調香に、何カ月も何年もかかることもある。

WWD:ベストセラーとその理由は?

マートン:”19 レーニョ・ディ・グアイアコ”。ガイアックウッドとても洗練されているけどシンプルな香り。ジャック・キャヴァリエ(Jacques Cavallier)が聴講した“24 ザガラ”はシチリア特有のレモンの花の香りで、さんさんと降り注ぐ太陽をボトルに閉じ込めたようなフレグランス。カラブリアの海岸に育つベルガモットを使用した“101ベルガモット”やビターオレンジの木や花など異なるパーツから抽出した“23 ネロリ”、地中海には欠かせない植物である“202 フィグ”など定番的な香りも人気だ。

WWD:現在どこで販売しているか?

マートン:ミラノとローマには直営店があり、イタリア国内のニッチフレグランス専門店で販売している。他、台湾と日本でも販売中で、これからヨーロッパへ進出する。

WWD:今後、どのようにブランドを成長させたいか?

マートン:われわれ一族の伝統やノウハウを伝えながら、ライフスタイルブランドとして成長させたい。ブランド哲学を理解し、イタリアのラボのような体験ができる店舗コンセプトの展開をしてくれるパートナーと共に大切に育てていきたい。

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