ファーストリテイリングは難民の日(6月20日)の前日である19日、東京の六本木ヒルズで難民支援活動に関する説明会を実施した。同社で難民問題を含むサステナビリティを担当する柳井康治取締役、国連難民高等弁務官事務所(以下、UNHCR)の伊藤礼樹・駐日代表などが登壇した。
難民の現状は年々厳しさを増しているという。ファーストリテイリングによると、避難を余儀なくされた人が12年連続で増加し、2024年5月時点で過去最多となる1億2000万人に到達した。紛争、人権侵害、気候変動などが主要因だが、強制移動の中で最も増えているのは紛争によって国内で避難を余儀なくされている国内避難民だ。彼らの大多数は近隣国で受け入れられており、低中所得国で75%が暮らしている。
一方で、23年には国内避難民500万人以上、難民100万人以上が故郷に帰還し、第三国定住を通じた新たな受け入れは16万人近くまで増加したというポジティブなニュースもある。しかしながら、今後も世界中の人々の連帯と支援が必要な問題であることは変わらないようだ。
ファーストリテイリングは01年より難民支援事業に着手してきた。06年からはUNHCR と協働で難民キャンプへの訪問や衣服支援を開始。11年にはUNHCRとパートナーシップを締結した。その後も、ユニクロ事業で難民を雇用するほか、22年からはバングラデシュでロヒンギャ難民の自立支援プロジェクトも実施している。
ファーストリテイリングの持続的な活動が難民問題自体の認知につながることを目指し、包括的に活動を広げている。24年6月20日には、柳井正社長が社会福祉法人さぽうとにじゅういちに個人寄付を実施し、東京・品川に難民教育相談センターを開設する。日本で暮らす難民が通学や進学、日本語学習などで不安を抱いた時に相談できる場所として機能させていく。
柳井康治取締役は、民間企業でありながら難民問題に注力する理由を「世界中で商売をさせていただく中でこういった社会貢献活動は必須。お金を出資するだけでなく自分たちが実務として介入していくことで、社員も自分たちの日々の仕事が世界規模の社会貢献につながっているということを実感できる」と語る。また、伊藤代表は同社の取り組みに対して「難民の人たちの人生を変えている点はもちろんだが、民間企業がここまで難民支援にコミットする事例は世界でもまれ。他企業の手本としてこれからも走り続けてほしい」と続ける。
説明会後には「ユニクロ(UNIQLO)」LifeWearスペシャルアンバサダーの綾瀬はるかが登場し、東京・吉祥寺の成蹊小学校6年生に向けた「“届けよう、服のチカラ”プロジェクト」特別課外授業を実施した。ファッションが持つ力や難民の子どもたちが置かれている現状について東京大学大学院教育学研究科の北村友人教授が解説し、難民問題と「ユニクロ」の活動への理解を深めた。