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ピーチ・ジョン新社長を直撃 女性社員の“ハッピィ”を大切に本来の“らしさ”を取り戻して赤字からの脱却目指す

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PROFILE: 西澤恒地/ピーチ・ジョン社長

西澤恒地/ピーチ・ジョン社長
PROFILE: (にしざわ・こうじ)1969年6月5日生まれ。94年にワコール入社、パーソナルウェア営業チーム、カタログ販売商品グループ、デューブルベ(現ワコールサイズオーダー)店舗運営部などを経て、2010年にピーチ・ジョンに出向。販売管理、販促企画、商品企画、貿易管理など取締役として経営全般に携わり、24年4月1日から現職。台湾ピーチ・ジョン董事長とピーチ・ジョン香港董事長総経理を兼務 PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA

ランジェリーやルームウエア、ボディーケア、コスメなどを手掛ける「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)は、多くの若い女性から支持が高いブランドだ。同ブランドは1994年に創業し、今年30周年を迎えた。“元気・ハッピィ・セクシー”のメッセージを発信し続け、話題性のあるタレントを起用したビジュアルやコラボ企画が注目を集めている。2008年にワコールホールディングス傘下になった以降もヒットを飛ばしてきたがここ数年苦戦している。ワコールホールディングス(HD)の24年3月期連結決算(国際会計基準)では、ピーチ・ジョン事業の売上収益は前期比9.9%減の107億円、営業損益は2億3900万円の赤字(前期は9億2000万円の黒字)だった。厳しい状況の中、4月に舵取りをバトンタッチされた西澤恒地社長を直撃した。

機能性より消費者の感情へ訴えかける仕掛けを

WW:社長就任時の気持ちは?

西澤恒地社長(以下、西澤):優秀な経営者として尊敬している杤尾学前社長が続けた方が良いと思ったのが率直な気持ちだ。10年にワコールからピーチ・ジョンに出向し、創業者である野口美佳社長から杤尾前社長まで5人の社長の下で働いてきた。5人の社長それぞれのいい所を取り入れたハイブリッド型を目指せば、自分にも可能性はある。15年在籍しているので、「いい会社に戻したい」という気持ちは強く、無理矢理やる気満々だ(笑)。

WWD:ブランド設立30周年を迎え、ターゲット設定はどう考える?

西澤:ターゲットは創業時から変わらず20~30代が中心。実際の購買層もほぼ同じだ。ただ、今見直す必要性があると感じているのは、ターゲット消費者に“かわいい”“欲しい”と思って購入してもらえているのかとう点。まず、“欲しい”という気持ちから商品を手に取ってもらい、商品の機能性を納得してもらうことを最優先課題として取り組んでいる。いい商品を作っている自信はあるが、まずは商品の顔が重要。消費者にとって魅力的でないと機能まで辿り着かないこともある。ターゲットには感性を大切にする人が多いので、彼女たちに刺さる見た目や表現方法は何かとあらためて見直していくつもりだ。

WWD:具体的に何をするか?

西澤:商品の表現方法の優先順位を変える。今は、機能の説明が優先になっているが、この商品をどんなシチュエーションで、どんな気分になりたい時に着けるかなど、感情に訴えかけるようにする。動画の配信では商品を売るためのものと、ブランド力を上げるものを分けて発信するつもりだ。あらためて「ピーチ・ジョン」のブランドメッセージをきちんと伝えていく。

女性社員の“ハッピィ”が消費者に伝わるはず

WWD:今の一番の課題は何か?

西澤:社員はほぼ女性で、ターゲットと年齢も近い。彼女たちが楽しく仕事をできることが大切だと思う。もちろん仕事なので、100%自分が好きなことができるわけではない。ただ、彼女たち自身が「元気・ハッピィ・セクシー」を仕事で表現できれば、それが自然と消費者に伝わり、売り上げにもつながるはず「ピーチ・ジョン」がワクワク楽しいブランドだと消費者思ってもらえるように社内環境も改善していきたい。

WWD:女性社員のエンパワーメントについては?

西澤:執行役員は全員女性。4月の人事異動で執行役員を入れ替えた。新卒採用をしていないため、全員がそれぞれの分野のスペシャリスト。ただ、マネジメントする総合職には、他の部署の仕事を理解することが重要だ。だから、総合職が育つ環境を整えている。

WWD:業績不振の理由の一つにタレントを起用した広告やコラボの不調が挙げられるが?

西澤:有名人を起用すれば売れる時代は、特に工夫しなくても良かった。ただ、今は違う。タレントの起用から表現方法まで、どうすれば売り上げに結びつくか考える必要がある。その計画が甘かったため想定以下の結果になったが、コラボやタレントの起用は、通常接点のない消費者にアピールする手段であることには変わりはない。これからも、タレントを起用したその先のビジネスをきっちり設計する。

ワコール現地法人と連携して海外市場を拡大

WWD::海外と国内の売り上げ比率は?

西澤:国内が90%で海外10%。中国子会社は前期に清算したが、香港からの越境ECという形で中国に販売している。現在、香港に4店舗、台湾に3店舗がある。共に実店舗が売り上げの80%を占め、ECは20%程度だ。

WWD:今後の海外戦略は?

西澤:拡大していくが、目的とやり方を変更する。香港と台湾は現地法人だが、現地法人は最初の投資もリスクも大きい。今後は現地ワコールに卸販売するライセンス方式を考えている。具体的には、まずホップアップストアを開き感触を掴んで良ければ卸をスタートする。「ピーチ・ジョン」という看板はそのままなので、資料や宣材写真を提供し、現地ワコールからロイヤルティーを支払ってもらうシンプルな形を考えている。

WWD:百貨店などのワコールコーナーの横に、「ピーチ・ジョン」の下着が並ぶ?

西澤:平場展開ではなく、あくまで店舗としての展開が条件となる。運営はワコールだが、ブランドビジネスとして、店舗の内装やデザインなどを含めこちらでコントロールするつもりだ。

WWD:海外のECは?

西澤:ECも運営は現地のワコールに任せる。「ピーチ・ジョン」の現地ECを立ち上げてもらってもいいし、現地ワコールのECの中で売ってもらってもいい。

WWD:進出を考えている国は?

西澤:ワコール側の希望もあるが、タイと韓国。どちらも、日本ブランドが好きな消費者が多い。シンガポールやマレーシア、インドネシアは、その次の段階。また、欧米でも日本の“カワイイ”カルチャーが好きな消費者がいるので、小規模の展開を視野に入れている。

本来の「ピーチ・ジョン」らしさを大切に

WWD:現在の日本の店舗とECの売上比率は?

西澤:店舗とECで50%ずつ。EC50%のうち、自社ECが35%で外部ECが15%。23年4月に楽天、9月にはアダストリア(ドットエスティ)に新規出店した。

WWD:ドットエスティに出店した理由は?

西澤:ピーチ・ジョンのイメージややり方とアダストリアの戦略がマッチしたからだ。下着の撮影できないモデルも多く、いかに下着の着用写真を使わずに売るかというのが課題だった。解決法の1つとして、コーディネートアイテムとしてバッグやアクセサリーと同じように、下着を見せるという方法がある。そこで、スタッフのコーディネートアイテムを紹介しているアダストリアに関心を持ち、先方からの賛同を得た。

WWD:日本の下着市場動向が変化しているが?

西澤:ノンワイヤーでSML展開のブラジャーやブラトップなど、楽なつけ心地のものが今のトレンド。われわれが主力とするワイヤーブラなどは厳しいが、自分を表現するアイテムとして選ぶ人がいる。カテゴリーシェアは縮小しているが、弊社の規模であれば十分戦っていける。

WWD:市場の変化に対応する施策は?

西澤:楽なつけ心地を好む層に向けては、今秋に新シリーズ“PJベーシック”を発売する。シンブルなノンワイヤーではなく、“かわいい”と思ってもらえる「ピーチ・ジョン」らしい要素をプラスし、ファッションに興味がある人に選んでもらえるようにする。

WWD:今後の目標は?

西澤:予算達成が一番の目標。厳しい予算だが、達成を目指す。新たに3カ年計画を策定し、成長できるように数値を設定していく。商品については、先述した、本来の「ピーチ・ジョン」らしい、パッと見て“かわいい”と思ってもらえるような表現を目指す。

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