新宿ルミネと言えばウィメンズリアルクローズの殿堂ですが、そんな新宿ルミネ1の2階、駅を行き交う人からもよく見える区画に、「ウイルソン(WILSON)」が3週間の期間限定で出店しています。「ウイルソン」と言えばテニスや野球、バスケットボール用具が有名で、日本では部活のイメージが強い。そんな“ガチめ”なブランドにも関わらず、テニスにフォーカスしたルミネの店は非常にガーリーで可愛らしい仕上がりになっており、いい意味で大きな驚きがありました。ポップアップの期間は6月26日までなので、気になった方は是非早めに足をお運びください。
プリーツの効いたスコート(1万3200円)や背中が開いたデザインのミニのポロドレス、白いコートシューズ(1万9800円)など、“お嬢さんのテニススタイル”といった表現がぴったりなアイテムがそろいます。もちろん、オンコートだけではなく、街でも着られるように打ち出しており、ベアバックのポロドレスを見ていたら、「インナーにタンクトップなどを合わせれば、街中でも抵抗なく着こなせますよ」と販売員さんが声を掛けてくれました。
テニス体験イベントで新規客取り込み
「ウイルソン」を日本で手掛けているのは、スポーツメーカーのアメアスポーツジャパン。アメアと言えば、積極出店中の「アークテリクス(ARC’TERYX)」や、同じく新宿ルミネ2の長期ポップアップが絶好調な「サロモン(SALOMON)」も手掛けていますが、次なる一手として「ウイルソン」を育成中のようです。今回のルミネ1のポップアップに続き、今後もポップアップでニーズ収集を進めるとのこと。
「ウイルソン」のガーリーなテニススタイルに心をときめかせていたら、今度はスイス発の新興スポーツブランド「オン(ON)」から、ビームスとのコラボレーションでテニスコレクションを6月29日に発売するという知らせが届きました。こちらはよりストリートなムードで、ジェンダーレスで楽しめる雰囲気。「オン」がロジャー・フェデラー選手(彼もスイス出身であり、オンのシニアメンバーでもあります)と組んで開発した、テニスコートでも街でもはけるシューズの特別デザイン(2万8380円)のほか、トラックスーツやTシャツなどを企画し、発売に合わせてビームス メン 渋谷横の公園でテニス体験のイベントも開催するとのこと。
「オン」は2020年からテニスカテゴリーのシューズを販売しており、プロ選手とも多数契約。選手が求めるガチのパフォーマンスアイテムを開発しつつ、そのR&Dを生かした一般向け商品にも徐々に裾野を広げている印象です。ビームスとのコラボもまさにその文脈ですね。「オン」は24年春から、テニス向けアパレルの販売も始めています。
年成長率「2.5%」の有望市場
この2ブランドの動きだけでなく、ここ最近、ファッション誌やカルチャー誌でも、テニスにフォーカスした企画が目立ちます。「オリンピック前だから」「テニス特有のちょっと懐かしい雰囲気が、レトロ人気やガーリートレンドと合致しているから」というのが背景にはあるのでしょうが、テニス市場の今後の成長性というのも大いに影響しているようです。テニスは比較的お金に余裕のある層が楽しむスポーツであり、「22年のグローバルのテニス市場規模が20億1400万米ドル(約3202億円)のところ、30年には24億5400万米ドル(約 3901億円)になる。年間成長率は2.5%」と有望な市場であるという分析も出ています。
この分析、先日行われたアシックスの記者会見で出てきた数字です。アシックスの富永満之社長COOは同会見で、「テニスシューズ事業をランニングシューズに次ぐ収益の柱にする」と宣言し、社長直轄の強化プロジェクトを発足したところだと語っていました。26年12月期に、テニスシューズで売上高300億円(23年12月期実績は237億円だったとのこと)を目指すために、ノバク・ジョコビッチ選手をはじめとする契約アスリートとの協働やテニスコーチを巻き込んだ草の根普及活動に努めるそう。ちなみに、富永社長は中高時代にテニスで日本ジュニア選手権に出場し、プロを目指して米国留学をしていた経歴もあるとのこと。テニス事業への思い入れは深いのだと推察します。
というわけで、単にトレンドとしてテニスに注目が集まっているというだけでなく、各社が大なり小なりテニス市場の成長性に期待していることは間違いないようです。一方で、ゴールドウインはテニスのイメージも強い「エレッセ(ELLESSE)」を24-25年秋冬で終了すると発表しました。新陳代謝が進みながら、テニス市場が今後どのように拡大していくのか注目です。