1973年にイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)がブランドを創設して以来、「パタゴニア(PATAGONIA)」は機能的で高品質なモノ作りと、持続可能なビジネス構築を目指してきた。いかにカスタマーに必要のないものを買わないように促し、なおかつ健全で収益性の高いビジネスを営むか。その微妙なバランスの取り方を、創業からずっと探求し続けている。
5月8日にオンライン開催された「WWDサステナビリティ・サミット2024」で、パタゴニアのライアン・ゲラート(Ryan Gellert)最高経営責任者(CEO)は、同社のアルチャナ・ラム(Archana Ram)責任あるビジネス編集長と対談し、次のように述べている。「『最も持続可能なジャケットは、すでに存在するものである』という古い格言がある。私たちは長年このテーマでキャンペーンを展開し、コミュニティーやカスタマーと協力しながら、必要のないものを買わないよう働きかけてきた」。
サプライチェーンを整えるだけでは、“過剰消費”という問題の解決にはならない。パタゴニアが“ウォーン ウエア”と呼ぶ、製品の再販と、寿命が尽きた製品を引き取るリサイクルを採用したのは、こうした理由からだとゲラートCEOは語る。
「高品質でタイムレスな製品を作り、人々に必要のないものを買わないように奨励することは、反資本主義的なことだとは思わない。『私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む』というミッション・ステートメントを守り続けてきた」。
しかしパタゴニア単独ではそれを成し遂げることはできないと彼は言う。「気候変動と生態系の危機を解決するには、政府、市民社会、そしてビジネス部門が一体となって取り組む必要がある。私は、ビジネスセクターがその会話に欠けていると思う。特にアパレル業界は、現実に責任を持つために足並みをそろえる必要がある」。
同社が4月に公式サイトで公開した動画「ザ・シットスロポシーン(The Shitthropocene)」は、シーズンごとに新製品を発売するサイクルや、アパレル産業が排出する二酸化炭素の量についてなど、ファッション業界が直面するジレンマを取り上げている。
パタゴニアは、環境配慮型の素材開発やサプライチェーンの構築、“ウォーン ウエア”導入のほか、不耕起栽培で炭素を固定しながら健全な土壌を構築する有機農法、リジェネラティブ・オーガニック(RO)農法で作られた原料に対する認証を設立したり、RO農法で作られた食品を販売したりするなど、さまざまなアプローチで気候変動と生態系の危機の解決に取り組んできた。
「私たちは上昇志向の強い企業であり、ビジネスは収益性があり、成功している。人々に喜ばれる製品を作り、サービスを提供する。そうすることで、私たちは異なる形のビジネスの見本になれると思う。自分の価値観が何であるかを理解し、全てのステークホルダーとの関係において、事業の幅を超えた意思決定を行うことに深く永続的にコミットする必要がある。そして、それは終わりのない旅であることを理解することが大切だ」。
パタゴニア
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