今年最も話題を集めた店舗は、リモデルに着手した伊勢丹新宿店と、建て替え工事を終えて全面開業した阪急うめだ本店である。百貨店の東と西の横綱と言われる両店の新しい店作りは、今後の百貨店の方向性を示すモデルでもある。
阪急うめだ本店は、約600億円を投じた7年間の建て替え工事を終えて、11月21日に全面開業した。店舗面積は建て替え前の1.3倍にあたる8万�u。初年度売上高は本館のみで1900億円、隣接する阪急メンズ大阪を含めて2130億円を計画する。「劇場型百貨店」というコンセプトを掲げ、2割を非物販スペースに充てた。9階にある巨大な吹き抜け空間「祝祭広場」、ファッションショーなど様々なイベントに対応する「阪急うめだホール」などで、日替わり、週替わりのイベントを行ない、買い物以外の来店動機を高める。
陣頭指揮を執るエイチ・ツー・オーリテイリングの椙岡俊一CEO は「消費者の興味はモノからコトに移っている。単なるモノ売りから情報リテーラーに転換することで、百貨店本来の業態価値を取り戻す」と話す。もちろん物販でも抜かりはない。「ルイ・ヴィトン」「エルメス」「サンローラン」など高級ブランドの集積は他の百貨店を圧倒する。5階を中心とした高級ブランドの面積は建て替え前に比べて約1.9倍。関西圏だけでなく、中国や四国を含めた広域から優良顧客を囲い込む。