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毎年3割増と安定成長をキープ ノーズショップ代表が語る20代がけん引する日本のフレグランス市場

PROFILE: 中森友喜/NOSE SHOP代表

中森友喜/NOSE SHOP代表
PROFILE: (なかもり・とものぶ)香水キュレーター、香水翻訳家、香水起業家。2017年、世界各国の新進気鋭のニッチフレグランスブランドを紹介する香水のセレクトショップ「ノーズショップ」を設立。取り扱うすべての香水のセレクトとストーリーの翻訳を手掛け、その取り扱い品種の幅広さと香水文の翻訳量は日本随一を誇る。世界中の香水クリエイターとも良好な関係を築いている。かつて「香水砂漠」とさえ呼ばれた日本の香水市場の改革者・第一人者として、現在、日本全国に12店舗のショップを構え、世界18カ国から約50ブランド、約700種類の香水やルームフレグランスをセレクトして販売している。日本における香水文化のさらなる認知拡大に向け、香りにまつわるさまざまなサービスを展開している

コロナを機に日本のフレグランス市場が拡大している。富士経済によると、ここ数年のフレグランス市場は、毎年伸長率が約10%と好調。一部のマニアのものとされてきたニッチフレグランスも次々と日本に上陸している。フレグランス売り場を拡大する百貨店や商業施設も多く、フレグランスの売上高が前年比50%増という店もあり、売れ筋商材としての存在感を増している。日本におけるニッチフレグランス市場を牽引してきたのが香りのセレクトショップ「ノーズショップ(NOSE SHOP)」だ。2017年にニュウマン新宿に初店舗をオープンし、現在では日本全国に12店舗を構えている。中森友喜NOSE SHOP代表に、ノーズショップの商況や売れ筋、日本のフレグランス市場について聞いた。

フレグランスに関心を持つ20代が増加

WWD:ここ数年のノーズショップの売上高の伸長率は?

中森友喜NOSE SHOP代表(以下、中森):前年比30%増という安定的な成長を目指しており、コントロールしながら運営している。2022年は前年比36%増、23年は同34%増、24年は39%増を予定している。

WWD:店舗数及び取り扱いブランド数は?

中森:19年末の時点で全国4店舗だったが、23年に10店舗、24年に12店舗になった。物流等あらゆる面で負担がかからないペースで、年間2~3店舗出店している。ブランド数は、2カ月に1ブランドの導入し、年間6~8ブランド程度を新規で増やしている。現在の取り扱いブランド数は66、約800種類。在庫は自社でコントロールし、できる限り、商品の取り扱い中止はせずに香りの種類を増やすようにしている。

WWD:どのような層が購入するか?

中森:拡大改装した渋谷店は若い層で賑わっている。全体的に20代が増えており、ファッションの1部、メイクの1部として香水が必需品になっていると感じる。次に30代、40代で、女性が7割、男性が3割。百貨店などでは、男女比率が半々という店舗もある。インバウンド比率は2~3割だが、銀座や麻布台の店舗はインバウンド客が多く、4~5割だ。

消費者の香りに対する解像度がアップ

WWD:好調なブランドは?

中森:前年比40~50%増と絶好調なのがフランス発「メゾン マティン(MAISON MATINE)」だ。専属のイラストレーターがいて、フレグランスごとにボトルにはユーモラスなイラストが描かれているのが特徴。面白いネーミングや性別問わず使用できる香りで、価格も手頃なためファーストフレグランスに選ばれることもある。お風呂上がりのようなフレッシュな香りの“プンプン”、お茶系の“ワルニ ワルニ”などが人気。ピーチをベースにした“あらしのうみ”は、新定番ともいえるトップセラーだ。同じく、フランス発「エッセンシャル パルファン(ESSENTIAL PARFUMS)」も同40~50%増と好調。一流調香師が手掛けるニッチでこだわりのある香りなのにも関わらず、価格も比較的手頃。ニッチフレグランスが高くなりすぎた今、高品質のものを手に取りやすい価格でという創業者の姿勢が支持されている。人気の香りは、“ナイス ベルガモット”や“ボワ アンペリアル”など。人と違う香りを探している20代の購入者が多い。日本で約10年程度輸入販売しているイタリア発「ラボラトリオ・オルファティーボ(LABORATORIO OLFATTIVO)」は同10〜20%増。ムスクの柑橘系で爽やかだが、香り立ちが変わる穏やかな香りの“ニードユー”やエジプト神話の中の神聖な花の香りの“ヌン”などが好調。夏は、シンプルだが深みのあるブラッドオレンジの香り“アランチア・ロッサ”が人気。長年販売しているということもあり、人気が安定している。

WWD:好調ブランドの中心価格帯は?

中森:フルボトル(50mL~100mL)で2万〜2万円半が中心価格帯。10mLのミニボトルやディスカバリーセットなど、1万円前後のものはトライアルやギフト需要で動く。

WWD:ここ最近人気のフレグランスの傾向は?

中森:世界的にグルマンの甘い香りが人気で勢いを感じる。昨年取り扱いをスタートした「ピエール・ギョーム(PIERRE GUILLAUME)」は、グルマンの貴公子と呼ばれる存在で人気が高い。まるで、生菓子のような印象だが、香水として美しく香るのが特徴だ。幼少期の朝食の思い出を表現した“ムスク マオリ”はホットチョコレートが香る人気のアイテム。ムスク系も人気が高い。ニューヨーク発「ノーメンクレイチャー(NOMENCLATURE)」は天然香料ではなく、敢えて合成香料にフォーカスし数々の名香を生み出す芳香分子に着目したブランド。合成ムスクを使用した“アデレット”は肌馴染みがよく売り切れになったこともある。日本の“シソ”を清涼感たっぷりに表現した“シソー”は、通常のミントなどの爽やかな香りと一味違って人気だ。また、タバコ、シャンパンやジンなどのお酒といった香りへの注目も高まっている。消費者の香りに対する解像度がアップしており、一歩、二歩先の香りを求める傾向にある。

コロナ以降生まれた香りのマイクロトレンド

WWD:フレグランス市場および消費者動向の変化は?

中森:日本人にとって強い香りはマナー違反的に思われていたが、コロナ禍になってマスクにより香りを意識しなくても良くなった。自宅で、自分の好きな香りをまとう人が増えた。コロナ以降、人気のものから個性的な香りまで、いろいろな香りがマイクロトレンドとして売れるようになった。コロナが落ち着き、マスクを外すと巻き返しがあるかと思ったら、それはなく、個性的な香りへの需要が広がりつつある。ビジネスとしては、売れ筋の予測が立たず難しいが、文化的な視点からは、香りの好みの多様化は歓迎すべき現象だ。

WWD:日本のフレグランス市場についてどのように分析するか?

中森:香水のニュースが多く、“香水砂漠”から喜ばしい市場に変化しつつある。ポジティブに捉えているが、市場規模はまだ小さい。20~50代を対象に香水を使用しているかを調査したところ、その割合は3割以下だ。また、盛り上がっているのは東京や大阪が中心で、地方はこれからだと感じる。ブームとして終わらせたくないので、香水が嗅覚のエンタメであり、それを届けるニッチフレグランスを知ってもらえるよう地道に努力したい。

WWD:今後どのような取り組みを強化するか?

中森:中森:香水市場で、業界のリーダーやプレイヤーが増えてきた。ラグジュアリー・ブランドもどんどん参入し、盛り上がっている。その中で、ニッチフレグランスらしさを伝えていく。ブランディングや体験価値を向上させるための情報発信や、商品、店舗設計、サービスで、個性を磨きながら行うのが大切だ。

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