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ドラァグクイーンのド派手メイクを大解剖 大規模ドラァグショー「オピュランス」の楽屋に1日密着

PROFILE: (左)ヴェラ・ストロンジュ(Vera Strondh) (右)セラ・トニン(Sera Tonin)

(左)ヴェラ・ストロンジュ(Vera Strondh)<br />
(右)セラ・トニン(Sera Tonin)
PROFILE: (ヴェラ・ストロンジュ)フィリピン出身で8歳からダンスを始める。細部まで作り込んだコレオグラフィーや高いダンススキルを武器に、見る者全てを魅了する。インスタグラム:@vera.strondh (セラ・トニン)イギリス出身の“ハッピーホルモン”。手作りのウィッグと大胆なアクロバットの技で観客を魅了し、ストーリー性豊かなショーを披露する。インスタグラム:@yeah_im_good_thanks

大規模なドラァグショー「オピュランス(OPULENCE)」が、5月19日に東京・歌舞伎町タワーで行われた。同イベントのバックステージに潜入し、日本でドラァグクイーンとして活躍するヴェラ・ストロンジュ(Vera Strondh)と、セラ・トニン(Sera Tonin)の2人のメイク完成までに密着。2人のメイクルーティンやこれだけは欠かせないというアイテム、こだわりのポイントなどを聞いた。

「オピュランス」とは?

「オピュランス」は、世界的なドラァグクイーンをゲストに迎える日本初の大規模ドラァグショー。ネットフリックス(NETFLIX)で放送しているリアリティー番組「ル・ポールのドラァグレース」の有名な海外クイーンや日本で活動しているクイーン、ダンサーらが登場する。第1回は2023年1月7日にお台場のZepp ダイバーシティで、第2回以降は継続して東急歌舞伎町タワー内のZepp 新宿で開催。今年の10月には東京と大阪の2カ所で開催が決定している。

ショーメイクはトータル5時間!?

WWD:まずは「オピュランス」の出演、お疲れさまでした。ショーを終えて、感想は?

セラ・トニン(以下、セラ):無事に終えて、達成感がありました。制作段階ももちろん楽しいのですが、常にショーのことを考えていて、「どんな演出や衣装にしようかな」と新しいアイデアを探し続けていました。頻繁に徹夜していろいろと考え込んだり、心配したりしなくてよいと思うとホッとしますね。すごく楽しいひと時を過ごすことができたし、全力を出し切れて良かったです。

ヴェラ・ストロンジュ(以下、ヴェラ):家に帰って、シャワーを浴びて、リラックスできたときはとんでもない解放感でした。今回のショーは100%楽しめたので、10月に開催する「オピュランス」も同じ気持ちで挑みたいです。私が楽しんでステージに立てば、ファンのみんなにも楽しさがきっと伝わると思うので。

WWD:ショーでは5時間ほどかけてメイク&ヘアの作業をしていましたが、いつもあのくらいかかる?

セラ:ローカルのショーのときは、30分くらいで仕上げます。今回の「オピュランス」のような大きなショーだと、考えるべきことやチェックすべきことがたくさんあります。自分のメイク中にも衣装やダンスリハーサル、ほかのダンサーのメイクまで……ショーに関わる全てを確認するので、トータルで5時間ほどかかってしまうんです。

ヴェラ:「あのときこうすれば良かったな〜」って後悔したくないから、私もショー全体を細かくチェックするようにしています。自分のメイクにもショーの細かい確認にも時間をかけたいから、今回は開演10時間前に楽屋入りしました。あと、1パーツのメイクを終えるごとに踊ったり歌ったり、たばこ休憩を挟んだりしてリフレッシュ! これはほかのクイーンも「それな〜」って共感してくれると思います(笑)。

WWD:メイクルーティンを最初から最後まで見ていて、ベビーパウダーをたっぷり叩いている様子が何回か見られた。その理由は?

セラ:理由は2つ。一つ目はスキンケア後の油分を抑える役割で、ベビーパウダーをたたくと瞬時にマットになるので、厚塗りにならずベースメイクを重ねることができます。2つ目は、目の下にたっぷりとたたいて、ブラックやパープルなどの濃い色のアイシャドウの粉飛びを防ぐため。頬に落ちてきてもベビーパウダーがバリアしてくれて、さっと払うだけですぐなくなるので。

ヴェラ:私は眉毛を隠すときだけ、ベビーパウダーを使います。のりで眉毛をつぶして乾いてきたら、押さえるんです。あと、ベビーパウダーは白い粉状なので、眉毛の元の色を隠せるのもうれしい。クイーンは全員持っている必須アイテムよ。

やっぱりアイメイクが命。ヴェラは「蛇」のような目元を表現

WWD:メイクはどのパーツに力を入れている?

セラ:アイメイクですね。戦う強い女性を表現したいから、そのためにはバサバサの付けまつげとカラフルなアイシャドウが重要なの。

ヴェラ:私もアイメイク。パフォーマンスの時に睨みつけるような表情をすることが多いので、アイラインは「蛇」をイメージして力強い目を表現しています。アイシャドウはブラウン系で、とにかくラインを強調! あと、唇は丸くかなりオーバーリップにしてグリッターでキラキラに。ステージに立ったときに遠くのファンでも見えるようにアピールしたいからね。

WWD:これなしではドラァグメイクが完成しない!というメイクアイテムを一つ挙げるとしたら?

セラ:どれか1つを選べと言われると難しいけれど……汎用性の高い漆黒カラーのアイライナーかな。これさえあれば、アイブロウ、アイライナー、リップに使えるから。

ヴェラ:(激しく頷き)同感。アイライナーでガツンとメイクしないとテンションが上がらないし、自分らしさを出せないしね。

WWD:激しいダンスをしても崩れないメイクの秘訣は?

セラ:汗や涙、皮脂などに強く、長時間崩れない化粧下地とメイクフィックススプレーを選ぶこと。「フェンティ ビューティ バイ リアーナ(FENTY BEAUTY BY RIHANNA)」の上質な化粧下地でファンデーションを密着させて、仕上げにフィックススプレーでロック!

ヴェラ:化粧下地とフィックススプレーを使用するのは同じですが、私は「M・A・C」を使っていますね。

WWD:一番気に入っているコスメブランドは?

セラ:アイテムによってブランドを使い分けているので、一つだけ選ぶのは難しいですね。汗をかきやすいので、ベースメイクは「フェンティ ビューティ バイ リアーナ」の化粧下地やファンデーションを、アイシャドウは海外のコスメブランド「ジュビアズプレイス(JUVIA'S PLACE)」の多色パレットを気に入っています。

特に「ジュビアズプレイス」のアイシャドウパレットは発色と持続力がすばらしく、周りのクイーンもみんな持っているわ。値段も手頃で長持ちするので、何年使っているかもう覚えていないくらい愛用しています(笑)。

ヴェラ:私はやっぱり「M・A・C」ですね。アイメイク、リップ、ベースメイクなど、ほとんど「M・A・C」でそろえていて、とにかくロングラスティングなところがステージメイク向き。「M・A・C」で働いている親友から「これ絶対あんたに似合う」って商品をおすすめしてもらうんだけど、「それな〜!」「かわいい!」って全部買っちゃうの。

まつげの土台を育てる“まつげ美容液”が欠かせない!

WWD:日常のスキンケアで気にかけていることは?

ヴェラ:お風呂上がりのスキンケアはリピートし続けている「ネイチャーリパブリック(NATURE REPUBLIC)」の“マイルド&モイスチャーアロエジェル(ジャータイプ)”と、最近はアイケアをするようになって「スカルプD」のまつ毛美容液を使っています。これを使い始めてから、付けまつげが取れにくくなった。全然違う!

セラ:私も「スカルプD」の“まつげ美容液 プレミアム”を使っています。ショーメイクで必ず付けまつげを使うのですが、オフするときに自まつげが一緒に抜けてしまったりするんです。でも、このアイテムをしばらく使い続けたら、地まつげが強く、抜けにくくなりました。ヴェラよりも年上だし、夜遅くまで起きているから目元のスペシャルケアも手を抜けないですね。

WWD:プライベートでもメイクはする?

セラ:クラブやイベントなどに行くときは、少しだけメイクをします。気分がアガるし、自分に自信を持てるようになるので。クイーンであれ、ガールであれ、ボーイであれ、その中間であれ、メイクは誰にとってもパワフルになれる最高のツールだと思うんです。もちろん、メイクをする気になれない(メイクなんてどうでもいい)日もあるけどね。

ヴェラ:多分、2週間に1回くらい。出かけるときは眉毛ぐらい描くけれど、なるべく肌を休ませたいからメイクは普段しないようにしています。

WWD:どのようにメイクを学んだ?

セラ:友人やプロのメイクアップアーティストが周囲にいたので、まずは技を盗むことからスタート。メイクに関しては右も左も分からなかったので、非常にありがたかったですね。初めは彼らからヒントやコツを学び、それからはユーチューブでクイーンのメイク動画などをたくさん見ました。メイクの道のりを振り返ると、さまざまなクイーンから良いところを少しずつ盗み、それらを取り入れることによって上達してきたかな。

ヴェラ:よくTikTokを見ます。ショート動画なのでサクサク見られるし、いろいろなクイーンがメイクティップスを発信しているのでかなり参考にした。

WWD:特にアイブロウは独特なので難しそう。

セラ:以前は眉毛をのりで平らにつぶしてメイクしていましたが、今は自然な眉の形を生かしてメイクしています。1年くらい前かな? ヴェラ、私のメイクが変わり始めたのを覚えている?

ヴェラ:うん、スマートフォンのフォルダにまだ写真があるよ。コロナ禍はみんな外出せずにたくさんメイクの練習をして、新しいことにトライして腕を上げました。

セラ:自分の顔にどのようなメイクが合うのか、研究と試行錯誤を重ねることで自分に合ったベストなメイクを見つけることができます。眉毛をそるクイーンもいると聞きますが、私は「えー!そんなことしたくない!」って感じ。

ドラァグクイーンのメイクに正解はない

WWD:ちなみにロールモデルはいる?

セラ:ドラァグクイーンを始めたころの私に聞いたら、ゲイ文化のアイコンや強い女性らの名を挙げたと思います。例えば、マドンナ(Madonna)とか。そこから時間がたって、現在の私のロールモデルはヴェラを含め、周りのコミュニティーにいる友人たちです。常に刺激を受けるし、私も新しいことに挑戦しようという気持ちにさせてくれます。

ヴェラ:私は強い女性を参考にしています。例えば、ラッパーのニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)やタイラ(Tyla)など。あとはお母さんもかっこいい女性で、とても憧れている。そんな女性像を目指しています。

WWD:最後に、2人にとってのドラァグクイーンメイクとは?

セラ:ドラァグクイーンは、女性という姿をかなり強調しています。見本となる女性らのすてきで最高な部分を少しずつピックアップして、それを1000倍にも誇張。目は大きく、眉毛は美しく、ふっくらとした唇、チークもたっぷり乗せて、シュッとした高い鼻にメイクして……女性の美を強くアピールすることで、非現実的に仕上げているのです。

ヴェラ:アートであり、メイクをする人はペインター(画家)だと思っています。そしてドラァグクイーンのメイクに決まりはなく、自分の思い描くクイーンを自由に表現して良いんです。ドラァグクイーンと聞くと、ド派手なヘアスタイルやメイク、ハイヒール、マーメイドドレスなどの華美な装いが思い浮かぶと思いますが、私はその常識をぶち壊したい。ツインテール、スニーカー、ダイナミックなダンス、自分が一番クールだと思える、目指すべきクイーンを自由に表現しています。

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