県内外で定評のある“沖縄コスメブランド”を紹介する企画の第3弾。今回取り上げるブランドは、琉球大学医学部の再生医療研究から生まれた幹細胞コスメ「コスメアカデミア(COSME ACADEMIA)」だ。清水雄介「コスメアカデミア」創業者・琉球大学大学院 医学研究科形成外科学講座 主任教授に話を聞いた。
――:幹細胞コスメブランド「コスメアカデミア」を設立したきっかけを教えてください。
清水雄介「コスメアカデミア」創業者・琉球大学大学院 医学研究科形成外科学講座 主任教授(以下、清水):沖縄県とロート製薬の合同出資により、2015年に琉球大学構内に細胞培養加工施設が建設されたことがきっかけです。この施設を活用することで、がんを切除したことでへこんでしまった患者さんの頬を、本人から採取した脂肪幹細胞を培養して移植する形成手術を国内で初めて成功させることができました。
その研究の過程で、脂肪幹細胞を培養増殖した際にでてくる〝上澄み液″の「培養上清液」に成長因子などさまざまな生理活性物質が含まれていることがわかりまして。そこで、この培養上清液を治療や化粧品へと応用できないかと考え、2017年に会社を設立し、細胞培養加工施設内で化粧品の研究をスタートさせました。
――:つまり、いま流行している“幹細胞コスメ”の先駆けが沖縄でできていた、ということですね。これは驚きです。
清水:そう言えるかと思います。さらに言えば、そもそもこの施設の目的は官民のサポートを受けた再生医療プロジェクトの推進です。私たちは研究のために脂肪幹細胞の検体を多く採取しており、現在(24年6月)、148検体のヒト体性幹細胞を管理しています。そして、その中から健康的で優れた脂肪幹細胞を選び、その培養上清液を「コスメアカデミア」に配合しているため、化粧品としての効果も非常に期待できると考えています。
――:確かにこれほど立派な研究施設は国内でも有数かと思いますし、治療の研究をされていることから、その品質も医薬品に準ずるグレード。その点で安全性も確保されていますね。
清水:おっしゃる通りです。当然のことですが、研究過程はもちろん、化粧品の製造過程でおいても、ウイルスが入っていないかなど、医薬品グレードで準じるレベルで厳格にチェックしています。そう考えると、もし当社が学術機関と提携した医薬ベンチャーでなかったら、化粧品それぞれの価格にゼロがひとつ増えるかもしれませんね……。治療研究や創薬研究が本来の目的で、化粧品である「コスメアカデミア」はその副産物であるために実現した価格だと思います。
――:「コスメアカデミア」シリーズは5品がラインアップされていますが、いちばんのおすすめは?
清水:初めてお使いいただく人には“ローション”(120mL、1万3200円)がおすすめです。幹細胞培養液が高配合されているため、化粧水でありながら高い潤いを実感していただけます。また、集中ケアとしては“セラムマスク”(5枚入り、9900円)も肌活力を高めてくれると好評です。美容医療の先生にはレーザー治療のアフターケアとしてもお使いいただいています。
――:今後、「コスメアカデミア」をどのように進化させていきたいですか?
清水:琉球大学では再生医療研究に注力しているため、幹細胞を使って怪我を治癒するにあたり、患者の声を直接聞けることや、その効果をフィードバックできるという利点があります。また、沖縄は多くのプロ野球球団のキャンプ地になっていることから、スポーツ再生医療の観点から治療研究をすぐに応用できるという強みもあります。このような経験や知見を通じて、幹細胞のよりよい培養法や活用法に取り組んでいくことで、治療と化粧品の双方を発展させるよう努めていきたいと考えています。