アダストリアの2024年3〜5月期連結業績は、売上高が前年同期比8.1%増の740億円、営業利益が同4.2%減の60億円、純利益が同1.3%減の44億円と増収減益だった。「アダストリア単体は堅調であり、このマイナス分は十分取り返せる」(福田泰己専務)として、通期目標は据え置く。原価高騰を受けて、引き続き値上げを進めるほか、自動釣銭レジの全店(約1300店)導入などで生産性向上に努める。
単体の既存店売上高は3〜5月で同2.6%増。最大ブランドの「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」の全店売上高が同5.4%増となるなど、主力ブランドは軒並み堅調だった。春夏物で全社平均約2%の値上げを行い、値引き抑制も進めたことで、「原価高騰・円安環境下でもそれによる粗利率の悪化は0.1ポイント程度に抑え込むことができた」が、イトーヨーカ堂への卸事業が拡大したことによる粗利率押し下げもあり、収益性は悪化した。また、米国子会社、EC専業ブランドを多数抱える子会社BUZZWIT、飲食子会社ゼットンの苦戦も足を引っ張った。
下期(9月〜25年2月)は平均4〜5%の値上げを予定している。「グローバルワーク」では「初めて外部マーケティング会社と組んで値上げ余地調査を行ったところ、全体の2割の商品に値上げ余地があると分かった」。来期以降は同様の調査を他ブランドにも拡大する。自動釣銭レジ導入による効率化では、「既に導入している店舗でレジ作業を平均17分短縮することができている」ことから、その分勤務時間を短縮し、昇給の原資やピークタイムの販売スタッフ補充に充てる。レジは前期から導入を始め、5月末時点で950店に導入済み。
市況全般としては、「若年層を中心に名目賃金は上昇しており、ファッション消費は底堅い」と見る。直近2年間で全社員平均で12%の昇給を実施したが、「賃上げムードは来春以降も続く。賃上げのためには値上げが必要だ。値上げした分、商品の付加価値も高められるようなモノ作りの背景があって、生産性向上のために(自動釣銭レジ導入など)投資ができるような大手企業のシェア拡大が進んでいくと見る」。