2025年春夏コレクションサーキットが開幕しました。イタリア・フィレンツェからミラノ、パリまで続くメンズからスタートです。「WWDJAPAN」は現地で連日ほぼ丸一日取材をし、コレクションの情報はもちろん、現場のリアルな空気感をお伝えします。担当は、大塚千践「WWDJAPAN」副編集長とパリ在住のライター井上エリ、そして藪野淳・欧州通信員の“浪速トリオ”。愛をもって、さまざまなブランドをレビューします。
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9:15 「コム デ ギャルソン・シャツ」
パリ・メンズ5日目の朝は、ほかの日とは気合いの入れようが異なります。理由は「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRT)」のショーがあるから。コレクションを見る楽しみはもちろん、最も気合いが必要な理由はスタート時間です。このコレクション・リポートで毎シーズンお伝えしている通り、定刻よりほぼ必ず前倒しで始まる唯一のショーなのです。事前に通達しているスタート時間は9時15分で、1年前は3分、半年前は5分前倒すという記録更新が、前日夜から重圧としてのしかかります。前シーズンは9時に会場入りしても遅かったため、今シーズンは8時50分に到着しました。さすがにまだ開場しておらず、心では一人でどや顔です。10分でも5分でも長く休憩していたいこの時期で、ほぼ30分前の到着はほかのショーではありえません。25分前入りどや。
余談ですが、海外メンズ・コレクション取材では、出版社の垣根を超えた日本メディア同士の協力姿勢があります。現場では移動ルートや会場詳細、ブランドについてなどを各メディア同士が情報共有し合っており、自分さえ良ければいいという人はほとんど見かけません。その一体感が好きなので、「コム デ ギャルソン・シャツ」の前倒し注意報についても、初めて取材に来た他メディアの方には必ず伝えるようにしています。全員が眠気や疲労感と戦いながら集合したと思うと、何だか頑張れますね。今シーズンのショー開始時間は9時13分でした。
コレクションは、シャツの生地を寄せてつまんでコサージュ仕立てにしたテクニックがまず目を引きました。シルエットも微妙にゆがんではいるものの、ベーシックな日常着のバランスを崩しません。このアヴァンギャルド二歩手前のリアルクローズ感が、「コム デ ギャルソン・シャツ」の魅力だと個人的には思います。ほかにも、多彩なモチーフを使ったトロンプルイユが目立ちました。セットアップには今シーズンのキーモチーフであるマドラスチェックを少しズラしてプリントしたり、「アシックス(ASICS)」とのコラボスニーカーにも同じモチーフを全面プリントしたり、色柄が異なるチェックを組み合わせてベーシックなシャツやTシャツに用いたり。一見ベーシックな「フレッドペリー(FRED PERRY)」とのポロシャツの背中には、“FREEDOM IS ENERGY”や“STRONG WILD”といった潔いステートメントを強いフォントで乗せます。不安定な世界情勢に対してメッセージだったとしても、やはりベーシックな日常着の軸はブレません。
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