マッシュスタイルラボは、2022年に立ち上げた「マッシュスタイルラボ サステナブルアライアンス」の取り組みとして、サプライヤーにおけるCO2排出量削減の活動を広げている。同アライアンスは6社が参加する原料調達・生産工程と、4社から成る流通過程があり、それぞれに適した排出量削減のアプローチを実施している。
中国の工場に浸透する監査基準
アライアンスに参加する10社とともに、独自基準の工場監査「マッシュスタイルラボ サステナブル工場監査基準」の仕組みを整え、23年9月には対象となる約100工場の初回認定を終えた。同基準は「工場における再エネ調達の推進」「省エネに対する意識の向上」などCO2排出削減につながる39の監査項目を設け、取得ポイントの上位から4段階でランクを設定。合不ではなく基準を設けることで改善することを目的としている。上位ランクの工場で製造され、2024年7月以降に販売する商品については、商品下げ札に「ECO FACTORY」のアイコンを掲載し、顧客にとって分かりやすい訴求を始める。
項目内容の多くは工場で働く従業員の日々の行動と関係するため、認定証の交付時には、イラスト入りの大きなポスター2種も作成し周知をうながした。今では工場のいたるところでそのポスターが貼られている。「“やってください”という指示型ではなく、“取り組んでくれてありがとう”というお礼のメッセージを大切にした」と岩木久剛執行役員生産管理本部本部長。「 こちらからやってほしいという指示として伝えるのではなく、 “未来の子供のためにちゃんと温暖化を食い止めたい”という思いを理解してもらえるようなコミュニケーションにしたところ、デザインも功を奏し、共感を得られた」と現地の反響を振り返る。「驚いたのは、工場の近くの料理店に行ったら、僕らが作った節電のポスターのコピーが貼られていたこと。一度共感を得られると広がるのは速い」という。
植林によるオフセットを始動
一方、生産・流通部門では原材料をのぞいた製造工程で排出したCO2を植林でオフセットする計画だ。同部門の対象はショッピングバッグや副資材など。年間で約1,100万点におよぶ洋服を生産するマッシュスタイルラボでは、対象となる紙のショッピングバッグや襟ネーム、下げ札や品質表示などが相当数となり、それらすべてをオフセットするには1年間の使用量概算に対し、約3000本の植林を行うことになる。
「流通過程における製造段階でのCO2排出量を把握・可視化し、植林によるオフセットを目指そうと考えた。今後さらなる再エネ調達・省エネに取り組むことで植林本数が減っていくため、活動の成果が分かりやすくなることも目指している。」と同本部長。今秋にトライアルをし、来春に本格的に植林を開始する。植林地は同社が寄贈した公園「マッシュパーク 女川」のある宮城県内などを検討中で従業員研修などCSR活動につなげることも検討している。
次の課題はLCAの算定
サプライチェーンにおけるCO2削減を最重要アジェンダに掲げる同アライアンスにとって、次の課題は製品毎のLCA(ライフサイクルアセスメント)の算定だ。LCA は、製品やサービスの原料調達・生産から消費、廃棄、リサイクルに至るまでの過程でどれだけ環境負荷がかかっているかを定量的に表すもの。ただし、衣料品においてはLCAの算出対象も不明瞭なのが現状で、「まずは算定範囲のルール作りが課題」だ。