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ラグジュアリーは壁に当たったのか?【小島健輔リポート】

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ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。今回のテーマはラグジュアリーブランドの業績。飛ぶ鳥を落とす勢いだったラグジュアリーブランドの一部に失速が目立つようになった。日本ではインバンドによる高額品の消費に沸いているが、中長期的にはどうなるか。データをもとにどこよりも詳しく論じてみよう。

コロナ明けのリベンジ消費に乗って拡大してきたラグジュアリー消費に急ブレーキがかかっている。米国でも中国でもラグジュアリーやブランド消費が冷え込んで百貨店やブランドメーカーの業績がかげる中、インバウンドに押し上げられた我が国の都心百貨店だけは我が世の春を謳歌しているが、果たしていつまで続くのだろうか?

ラグジュアリー消費に急ブレーキ

いささか旧聞になろうとしているが、4月16日発表のLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(12月決算)、4月23日発表のケリング(12月決算)の24年1Q(第1四半期、1〜3月)業績は投資家にはショックだったし、世界の消費トレンドの転換を示唆するものだった。

 コロナ明けのリベンジ消費と株高に押し上げられて好業績を続けてきた両社だが、LVMHの24年12月期1Qは売上高が前年同期から1.6%とわずかながら減少に転じ(現地通貨ベースでは3%増だがユーロ高に押し下げられた)、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」を主力とするファッション&レザー部門も2.2%減少(現地通貨ベースでは2%増)。23年12月期で3.9%減に転じていたケリングの今期1Q売上高は11.3%減と大きく落ち込み、主力の「グッチ(GUCCI)」も前期の5.9%減から今期1Qは20.5%減と低迷が深まった。

それは米国を拠点とするカプリ(3月決算)とタペストリー(6月決算)も同様だ。カプリは24年3月期4Qの売上高が8.4%減少して通期も8.0%減少し、営業利益率は前期の12.1%から−4.7%の赤字に転落。「ヴェルサーチェ(VERSACE)」は前期の1.7%増から今期は6.9%減(4Qは3.6%減)、「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」も前期の3.3%増から今期は2.4%減(4Qは9.3%減)に失速、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」は前期の1.8%減から今期は9.2%減(4Qは9.7%減)と低迷が深まった。タペストリーの24年6月期3Q累計売上高は前年同期比0.8%増と0.4%減だった23年6月期に続いて伸び悩み、「コーチ(COACH)」は前期の0.8%増から今期3Q累計は3.6%増とほぼ横ばいで、「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」は前期の1.8%減から今期3Q累計は5.9%減と低迷を深めた。タペストリーによるカプリ買収も、そんな逆風下で合意されたのだろう(米連邦取引委員会は買収阻止に動いている)。

ラグジュアリーの勢いがかげる中でも好調を継続する企業もある。エルメス(12月期)の24年1Qの売上高は前年同期比12.6%増(現地通貨ベースでは17.0%増)と、前々期の29.2%増、前期の15.7%増からは減速したが、コロナ明けの急回復から巡航速度に落ち着いたと見るべきだろう。別格のインベスティメント性が揺るぎないエルメスの好調はなるほどと思わせるが、ファッション性の強いプラダグループ(12月期)の好調は意外に受け取る方もあるかもしれない。23年12月期の売上高は12.5%増と22年の24.8%増からは減速したものの、24年1Qも11.5%増(現地通貨ベースでは16%増)と好調を継続している。「プラダ(PRADA)」は7.3%増と22年の28.2%増から減速し24年1Qもリテイル売上高は7%増にとどまるが、「ミュウミュウ(MIU MIU)」は22年の24.5%増から23年は50.3%増、24年1Qはリテイル売上高が89%増と急加速している。

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