「ディオール(DIOR)」のハンドバッグを製造するイタリアの工場が、サプライヤー企業で発生した人権侵害により1年間、行政の監督下に置かれることになった。なお、その期間中も「ディオール」のハンドバッグを製造することは認められている。調査によれば、同ブランドの親会社LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が擁するクリスチャン ディオール クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)のイタリアの子会社で、バッグなどの生産を行うマニュファクチャラーズ ディオール(MANUFACTURERS DIOR)のサプライヤーである中国系の下請け企業が最低賃金以下で工員を雇用し、「倫理的に認められない衛生状況下」で過負荷状態の機械を稼働させていたことが明らかになった。加えて、工場の電力消費履歴から休日も含めて24時間稼働していたこともわかった。
調査対象となったのは、マニュファクチャラーズ ディオールの直接のサプライヤーであるダヴィデ アルベルタリオ ミラノ(DAVIDE ALBERTARIO MILANO)とペレテリア エリザベッタ ヤング(PELLETTERIA ELISABETTA YANG)、サブコントラクターのAZオペレーションズ(AZ OPERATIONS)とニューレザーイタリー(NEW LEATHER ITALY)。4社ともミラノ郊外に工場を持ち、不法滞在の移民を正式な労働契約なしに雇用していた。なお、現在はいずれも操業を一時停止している。
本件について、LVMHのコメントは得られなかった。
今年1月には、イタリアのアパレルブランド「アルヴィエロ マルティーニ(ALVIERO MARTINI)」が、そして4月にはジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)の製造を担うジョルジオ アルマーニ オペレーションズ(GIORGIO ARMANI OPERATIONS)がミラノ裁判所によって同様の措置を受けている。
イタリアの繊維産業の中心地であるトスカーナ州のプラートは、中国人の移民が多く住んでいることから“リトル・チャイナ”と呼ばれている。同地域に拠点を持つ中国系企業は、同業のイタリア企業と比較してスピード、生産性、価格の面で優位性を保ってきたが、こうした成功の一部は労働搾取の上に成り立っているといわれている。