サステナビリティ

意見の相違はあって当然。議論を止めずにGO! TSI、JSFA、自治体展、ダブレット【向千鶴サステナDが行く】


サステナビリティを切り口にした取材ではエネルギッシュな出会いが多く、刺激的です。同時にこの新しい世界では「誰がリードを取るか」の覇権争いも強まりつつあります。サステナビリティを前提としたビジネスという、新しい価値創造の過程では利害関係に基づく意見の相違はあって当然。ビジネスだし、正解も一つじゃないから。同時に「誰かを否定することで自分が上に立つ」マウンティングが通じない、通じさせてはいけない世界だとも思います。最終的に問われるのは、本気の継続。どんな局面でも議論を止めずに前へGO!です。

何から始める?への答は「まずは1型」

TSIの社内セミナー「WWFジャパンが考えるアパレル生産」(6/24)

TSIホールディングスが赤坂の本社で開催した社内セミナーに参加しました。まず、テーマが本気です。「生物多様性&水とアパレル生産の関係(負の影響とプラスへの還元に向けた再生ができる事業モデルの重要性)と、原材料調達の課題(トルコ/インドの生産現場の取り組み事例、コットンの問題と調達)」。講師を務めるのは、パンダのマークでおなじみの環境保全団体WWF(世界自然保護基金)ジャパンの方たちで、TSIのデザイナーやMDとのディスカッションも行われました。

サステナビリティに取り組もうと決めた全アパレル産業人が最初にぶつかる問い「何から始めたら?」はここでも浮かびあがりました。WWFのアドバイスは「まずベーシックなアイテムを一品作って動き始めることで見えてくる。その中でサプライヤーと出会い実現したりすることも」と、アクションを促します。それを受けてTSIのスタッフからは「そうだな、と思う。そして使い続けることが大事なのだろう。定着すればコストの課題も解決できるかもしれない」と現実的かつポジティブなアンサー。コスト、価格、売り上げといった課題を背負うものづくりの現場でこういったディスカッションが始まっていること、下地毅TSI社長が自ら旗を振っていることが頼もしいです。

自治体はカーボンニュートラルと循環を接続せよ!

「自治体・公共Week2025」展(6/26)


地域、自治体に関心があります。循環はその規模が小さければ小さいほど実現がしやすいと思うからです。自宅で行なっているコンポストでは、晩ご飯の野菜クズが数日後には土に還り、それを実感します。ファッションも街や自治体との取り組みでできることがきっとあるはずです。

という期待を胸に合同展「自治体・公共Week2025」に初めて行ってきました。この展示会の「お客さん」は自治体関係者で、出展者は自治体の課題解決につながるソリューションや製品を提案する企業です。これがとても面白い。課題解決のために知恵を絞ったアイデアは目からウロコなものがたくさんありますし、ファッション産業が接続できる箇所も多そうです。ちなみに「セイコー」は大きなブースを出しており、時計の技術を生かしたデジタルサイネージを提案。すでに全国の庁舎を中心に300以上導入されているそうです。
 

電気を生かした環境ソリューションを提案するINEC(アイネック)のブースでは、スタッフがリサイクルコットンのTシャツを着用しており、展示の傍らのパネルではTシャツの生産時の水の使用量を削減していることや、資料を入れる配布バッグは不織布の端切れなどを回収し再生原料を採用していることが説明されていました。手掛けたのは三栄コーポレーションです。実は縁あって私、両社をおつなぎしました。ご紹介しただけですが、業界を超えて理念が共有され、Tシャツという形になったのを見るのは嬉しいですね。

他のブースでは環境問題をうたいつつスタッフが身につけている服には気を配っていないのが残念。水使用の削減をうたうソリューションを提案するなら、ぜひ水使用を削減したデニムとTシャツを制服にしてほしい。その方がきっと説得力があります。ファッション業界の皆さん、ここに商機ありですよ。

ところで、自治体の動きを見ると、カーボンニュートラルと循環の施策は別々で進行しているところが多くてもったいない。JSFAが両方を同時進行しているように、この2つは一つになって進むべし、です。その架け橋にもファッションやビューティの世界はなれると思います。

モチベーションが上がるオフィスの内装

日本ロレアルの新宿本社オフィスを訪問(7/1)


日本ロレアルの新宿本社オフィスを訪問したら、その内装が素晴らかった。そもそもオフィスに「ビューティーバレー」という呼称をつけているところがユニークです。「ハイブリッド勤務を前提に、地球環境と社員の持続可能性に配慮した美の創造拠点」なんてコンセプトを聞いたら惚れちゃいますね。オフィスは企業のビジョンの鏡です。
塗料や照明のシェード、タイルなどには、同社のアイシャドウやファンデーション、リップなど約60種類・約4400個の廃棄前の自社製品を使用したそうです。これぞアップサイクル!

あなたのアイドルは誰?

「ダブレット」2025年春夏展示会(7/12)


 
ダブレット(DOUBLET)」の2025年春夏コレクションのテーマは「推し」。その意味は、何はともあれインビテーションの言葉を読んでいただきたいので一部を抜粋しますね。
「資源をリサイクルして循環させたり、何もないところから資源を生み出したりする人たちがいる。奪い合いや戦争のない未来を目指して。そんな人たちに憧れる。彼らは僕らのアイドルです」。

いや~もう、これ、私の心を代弁してくれたんじゃないか、と勘違いするくらい激しく同意です。私もそういう人たちが自分のアイドルであり、その仕事を世に伝えていきたいと思っています。リリースの下には、アイドルである企業名がずらりと並んでいます。私はそのなかの一つ「スパイバー(SPIBER)」のニットをオーダーしました。シリアスな話にユーモアのフィルターを通して、服として届けてくれるデザイナーの井野将之さんこそ、私のアイドルです。リスペクト!

同時多発のWG=ワーキンググループに期待

ジャパンサステナブルファッションアライアンス|第4回記者発表(7/12)

JSFAの進捗報告の記者会見が開かれ、次年度の共同代表を務める3社(ゴールドウイン、JEPLAN、帝人フロンティア)が臨みました。JSFAではたくさんのことが同時進行で進んでいますが、要点は下記の通り。加えて人権に関する活動も活発になってきています。

進捗のポイント

【カーボンニュートラル】GHG排出量把握について「簡易」には、会員65社中39社が完了。商業施設に向けて再エネ切り替え提案。ファッション産業に向けたスコープ3算定共通ルールの策定
【ファッションロスゼロ】回収実証実験などのWG、回収拠点マップ作成

今後の方針のポイント

【カーボンニュートラル】GHG排出量把握について、「簡易」は2025年3月までに次戦会員が算定完了。「精緻」は27年までに会員企業の50%が算定完了。そのためにも環境省事業に一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)と連動(ここ重要)して参画
【ファッションロスゼロ】衣料回収事業の認知拡大などを目的に回収拠点マップ作成WG、同時に回収後の循環に向けた課題把握などのWG

多出する「WG」はワーキングループの意味。これは企業の枠を超えて議論を行う場がたくさん創出されていることを意味します。多くの企業がそれぞれの理想と課題を持ち寄っているJSFA。反省と希望と利権と葛藤が詰まった議論を止めずに頑張ってほしい。

ところで、私の肩書きも大概「長い」と言われてきたのですが、JSFAの日本語名(ジャパンサステナビリティファッションアライアンス)も24文字と非常に長い。ニュース記事などで伝える際、言葉は短いほうが伝わりやすいので扱いにいつも悩みます。JSFA(ジャスファ)は定着してきたから良いですが、今後登場する新組織やプロジェクトのためにもサステナビリティとファッションを組み合わせた短くインパクトのある造語を生み出せたら最高です。思いついた方はぜひお寄せください!

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「WWDJAPAN」9月9日号の特集は、「How to be a Sustainable Apparel」。本特集では、サステナブルなアパレル製品の作り方について考えます。サステナブルなアパレルといってもそのアプローチ方法はさまざま。有力アパレルメーカーが定番品をよりサステナブルに作り替えた製品や新たにブランドを立ち上げた事例、社会課題解決に向けてゼロから方法を模索して作った製品など課題に対してよ…

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