2024年パリ・オリンピックのメダルを乗せるトレーのデザインを「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が手掛けた。シグネチャーのダミエ・キャンバスで覆ったトレーに乗せて、メダルは表彰台へ運ばれる。また、パリ・オリンピックのプレミアム・パートナーである「ルイ・ヴィトン」の親会社、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は組織委員会が選出したメダルを授与する515人のボランティア、メダル・ベアラーのユニホームをデザイン。パリのブルガリ・ホテルで行った発表会で、1920年代のユニホームに着想したウエアを公開した。
ブルガリ・ホテルのペントハウスで開催した発表会で、アントワン・アルノー(Antoine Arnault)=LVMHヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは「メダル・ベアラーが、世界中の人々の視線を浴びながら、最高のコンディションで仕事をこなせるように、エレガントで落ち着いた、着心地の良いユニホームをデザインした」と語った。
ポロシャツ、ゆったりとしたパンツ、伝統的なガブロッシュキャップからなるユニセックスのユニホームスタイルは、1920年にパリで開催されたオリンピックにちなんだもので、スポーツウエアの誕生と重なる。「使用した生地は流動性と自由な可動性を強調するもの」とLVMHはステートメントを出した。
本ユニホームを制作したのはカオリ・モリッツ・イシカワ(Kaori Moritz-Ishikawa)率いるLVMH社内のユニホーム・デザイン・チーム。同チームは、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)手掛ける「ルイ・ヴィトン」の最新ランウエイショーのスタッフ・ユニホームもデザインしている。
「開会式と閉会式で着る衣装が環境に与える影響を最小限に抑える」という委員会の公約に沿って、LVMHサーキュラリティの「クローズド・ループ・テキスタイル・リサイクル・エコシステム」で調達した100%エコデザインの素材を使用した。
ポロシャツとキャップに採用したのは、LVMH擁するさまざまなブランドから出たジャージー素材の端切れ。Bコープ認定企業であるフランスのスタートアップ企業、ウィーターン(Weturn)がアップサイクルした。ポロシャツはフランスのヴォージュ地方で家族経営のデュヴァル(Duval)社によって作られ、キャップはイタリアで製造されている。
再生ポリエステルを使用したポリウール混紡生地のパンツは、「ラ ファブリック ノマド(LA FABRIQUE NOMADE)」が製作した。「ラ ファブリック ノマド」はフランスの難民職人の統合を支援する非営利団体。メダル・ベアラーたちはユニホームを持ち帰ることができ、「フェンティ ビューティー(FENTY BEAUTY)」のセットも贈呈される。
「ルイ・ヴィトン」の伝統的なトランク作りをほうふつとさせるメダルトレーは、メゾンのレザーグッズ工房のひとつで職人たちが製作した。外側は市松模様のキャンバス地で覆われ、内側はマットなブラック・レザーで裏打ちされている。軽量を目指して作った各トレーには、2枚から6枚のメダルが収納可能だ。
その他、LVMH傘下ではジュエラーの「ショーメ(CHAUMET)」が制作したメダル、「ベルルッティ(BERLUTI)」がデザインしたフランス代表の開会式用ユニホーム、「ルイ・ヴィトン」が制作したメダルとトーチを収納するトランクが発表されている。
“勝利は「ルイ・ヴィトン」に宿る”と表現されるように、同ブランドはNBAやアメリカズカップ、FIFAワールドカップ、ラグビーワールドカップ、ローラン・ギャロス・テニストーナメント、F1モナコグランプリのトロフィーケースを製作するなど、スポーツ業界とのコラボレーションを数多く手掛けてきた。
24年パリ・オリンピックのスタイリングとコスチューム・ディレクターを務めるダフネ・ビュルキ(Daphne Burki)はセーヌ川で開催される開会式での衣装を「ディオール(DIOR)」と「ルイ・ヴィトン」がデザインすると明らかにした。「『ディオール』は開会式で務めを果たすだろう。『ルイ・ヴィトン』の参加にも大いに期待している」とアルノー氏。「開会式のクリエイティブ・パートナーとしてだけでなく、競技を含むイベント全体に貢献したい。そして逆説的ではあるが、非常に控えめで、非常に目立つ存在となる。このトレーは美しく、『ルイ・ヴィトン』らしいと思う」と続けて語った。
24年パリ・オリンピック委員会のトニー・エスタンゲ(Tony Estanguet)会長は、大会予算の95%は民間資金でまかなわれており、パートナーは合計82社にのぼると述べた。LVMHはスポンサー契約の金銭的条件を明らかにしなかったが、詳しい情報筋によれば1億5000万ユーロ(約258億円)が動いたという。
LVMHは、開会式に向けた一連のイベントを計画。聖火は、サマリテーヌ・パリ百貨店とルイ・ヴィトン財団に立ち寄ることになっている。
LVMHは開会式の前夜に「ルイ・ヴィトン」財団でセレブリティを招いたプライベートイベントを開催する。当日はセーヌ川を見下ろすシュヴァル・ブラン・ホテルと隣接するLVMH本社の屋上でゲストをもてなすとアルノー氏は語った。