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「ベントレー」が新型“コンチネンタルGTスピード”を発表 本国幹部に聞く、自動車におけるラグジュアリーとは

英国の自動車ブランドである「ベントレー(BENTLEY)」が“コンチネンタルGTスピード”の新型モデルを日本向けに披露。ラグジュアリーブランドがコアバリューをどのようにプロダクトに落とし込んでいるのか。そしてどのように進化しようとしているのか。来日したベントレー モーターズ リミテッドのウェイン・ブルース=チーフ・コミュニケーション& D&Iオフィサーとニコ・クールマン=アジアパシフィックリージョナルディレクター、そして遠藤克之輔ベントレー モーターズ ジャパン ブランドダイレクターにインタビューを行った。

――ベントレーのフラッグシップである“コンチネンタルGT”のなかでも、よりパワフルなモデルである“コンチネンタルGTスピード”は、シリーズ誕生から4世代目となるクルマですが、この魅力について教えて下さい。

遠藤克之輔ベントレー モーターズ ジャパン ブランドダイレクター(以下、遠藤):まずデザインから触れるとわかりやすいだろう。「ベントレー」はデザイン哲学をアップデートし続けているブランドだ。自分たち自身にチャレンジしながら新しい哲学を再定義し、新しいものを生み出している。レスティングビースト(休息する肉食動物)をモチーフとしたボディのシルエット、直立するサラブレッドの美しい立ち姿をモチーフにしたフロントの先端のデザインなど、「ベントレー」らしさを形作ってきたモチーフを継承しながら時代にあわせてアップデートしている。今回発表した“コンチネンタルGTスピード”は、多くの人に愛されてきた要素をアップデートした最新モデルだ。

ウェイン・ブルース=ベントレー モーターズ リミテッド チーフ・コミュニケーション& D&Iオフィサー(以下、ウェイン):クルマについて詳しくはなくても、「ベントレー」というブランドとヘリテイジを深く理解しているお客さまが乗っている点が「ベントレー」の特徴だ。新型“コンチネンタルGTスピード”は、ハイブリッドパワートレインというテクノロジーと、「ベントレー」を特徴づけるクラフトマンシップのマジカルヒュージョンだ。

――「ベントレー」のフラッグシップである“コンチネンタルGT”がアップデートされた。4世代目となるということだが、外見上では先代からの大きな変化を控えたように見受けられる。これまでのモデルと最新の4世代目の違いは。

ウェイン:パワートレインを電気とガソリンエンジンのハイブリッドとしたことにより、車両の68%を占める部分が新しくなっている。そのほとんどは目に見えないところだが、電気モーターを搭載しバッテリーを積むには車両の内部で大幅な改良が必要だった。エクステリアデザインでは主にフロントやリアに変化を加えている。“コンチネンタルGT”にはいくつかのモデルがあり、この“スピード”はパワーにおいてトップにあるマシンであり、パワーに焦点を当てたモデルを最初に発表したという点が過去のモデルとは異なっている。

ニコ・クールマン=アジアパシフィックリージョナルディレクター(以下、ニコ):“コンチネンタルGT”は私達にとってのアイコンである。アイコンというのは劇的には変わらないものと考える。今回は劇的な変更は加えていない。というのもこれまで21年にわたりお客さまに愛されてきたモデルであり、既存のお客さまのニーズに応えることも重要だと考えるからだ。もちろん、これまで「ベントレー」に乗っていない人にも魅力的な充分新しいデザインに仕上がっている。あくまでも“コンチネンタルGT”はアイコン的モデルなので、われわれも慎重に取り扱った。

――自動車におけるラグジュアリーのひとつの傾向として、グランドツーリング(長距離のクルマによる旅)という用途に注目が集まっていることがいえる。グランドツーリングを関する“コンチネンタルGT”はこの領域におけるユニークな存在ではあるが、どのような優位性を持つと考えているのか。

ウェイン:デイリーなスーパーカーであることだ。

遠藤:日本でいうとグランドツーリングは「ベントレー」の出発点。移動という面で特にユーザビリティが高いことが特徴だ。そしてウェインが言うように汎用的でもある。長い距離を走り、その時間がなんて楽しいんだろうと感じる快適さが「ベントレー」にはある。お客さまにヒアリングすると「『ベントレー』は5000キロ乗っても疲れない」という声もあった。出張やロングドライブでドライブ、帰りはクルマなんて乗りたくない、電車や飛行機で帰ろうと思うような距離でも「ベントレー」なら疲れを感じることなく、むしろ過ごした時間が楽しいとおっしゃるお客さまがいる。「ベントレー」が持つグランドツーリングの特徴だ。クルマの中にいる時間が楽しく、快適で、そして一緒に過ごした方々との時間が忘れがたいものになり、また乗りたいと思う。それが「ベントレー」の大きな魅力だと捉えている。

ダイバーシティー&インクルージョンを積極支援

――ラグジュアリーライフスタイルブランドとして、未来に向けて描く姿は

ウェイン:ブランドが取り組んでいることは、ファッションの世界でも見られるように、買ってくださったお客さまと価値観を共有すること。われわれは2019年に創業100周年で立てた「Beyond100」戦略のもとに未来へと進んでいる。そのなかで「ベントレー」は「サスティナブルなラグジュアリーモビリティのリーダーになる」という目標を掲げていた。6年前には工場をカーボンニュートラル化した。そしてさまざまなリサイクル活動を行っている。排気ガスを出すクルマからハイブリッド化も進めており、今回の新型車両ではCO2排出量を10%にまで削減した。また、フォルクスワーゲングループの他のブランドと協力して進めていることだが、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減にも取り組んでいる。同時に、コミュニティーに対する貢献も進めている。「ベントレー」の本社があるのはイングランド北西のクルーという場所で、決して裕福な地域ではない。ここでは「ベントレー」が雇用主として最大の会社であるという意味でコミュニティーへのサポートも進めている。さらに、10社のパートナーと環境財団を設立し、数百万ポンド(数億円)を寄付した。ダイバーシティー&インクルージョンの活動も社内外で進めている。

――ダイバーシティー&インクルージョンにベントレーでは積極的に取り組み、その成果を定期的に発信している。その狙いは。

ウェイン:2つの理由がある。それが正しいことだと信じているからだ。これまで買ったことのないお客さまを引きつけようと思ったら、そのような方々にとっても「ベントレー」が大事な存在でなければならない。そのためには正しいことをしないといけない。

そしてもう一つは、経営の観点だ。多様な人材、多様な考え方を受け入れることで会社を変える助けにしようという狙いがある。4年前には私の提案から地元のプライドフェスティバルを支援した。レインボーカラーにラッピングしたクルマも提供した。このような勇気ある発信はベントレーとして初めてだったので反響は非常に大きかった。LGBTQの社員も勇気を得て、自分たちも関わりたいと名乗り出た。いまでは社内に5つのインクルージョンに関するネットワークがある。1つはプライド系のネットワーク、そして女性活躍、さらに精神的に疾患を抱える人のネットワーク、4つめが多様な民族のネットワーク、5つめが、軍人、警察官出身のネットワークだ。それぞれのミッションは、4500人の社員にインクルージョンを啓蒙して伝えること。現在ではこのネットワークに700人の社員が関わっている。D&Iのアクティビストの招へいやLinkedinなどの公共に使えるチャネルで、自分たちの活動を発信したことにより、ベントレーの求人への応募における女性比率がかなり増えた。

――ラグジュアリーは時代によって定義が変わる。いま求められるラグジュアリーとはどのようなものだと考えるか「ベントレー」が提案したいラグジュアリーとはどのようなものか。

ニコ:ラグジュアリーは客観的なものではない。高価であることや、大きなロゴがついていることで測れるものではない。自分にとって特別であることがラグジュアリーだ。クルマでいえば自分の好みにあったドリームカーであること。ハンドステッチや素材、エクスクルーシブなクラフトマンシップといった生産工程に関わることもラグジュアリーを叶える要素だ。

ウェイン:マーケティングにおいては価格による明確なラグジュアリーの定義がある。すなわち18万ユーロ(約3132万円)から上がラグジュアリー。そして概念としては、ラグジュアリーとは希少価値があるもので、自分を甘やかすためのものだ。その点でわれわれは「ベントレー」の製品はデイリー・ラグジュアリーと言っているが、耐久性が高く、多少雑に使っても大丈夫という実用的なラグジュアリーだ。さらに、460億パターンのパーソナライズができ、自分だけの一台を作ることができる。この点もまたラグジュアリーであると考える。

遠藤:日本におけるラグジュアリーはさまざまな捉え方があるが、私が考える日本におけるラグジュアリーは、リベラルアーツや教養。芸術的な観点にどれだけ労力を割けるかにある。ただお金をかけるだけではなく、時間をかけたり、学び、そういうものを愛する目を養っていることが日本におけるラグジュアリー。ベントレーはもちろんラグジュアリーだが、クルマづくりにおいて手作業によるハンドステッチをあしらった革のパーツやダイヤモンド状のキルティングパターンを施した内装など、時間をかけて長年の歴史があるクラフトマンシップを注ぎ込んでいる。

遠藤:このように丁寧に作られた、長年の歴史があるものを普段遣いできる。これは日本におけるラグジュアリーだと言える。「ベントレー」の価値は、普段袖を通すTシャツやシャワー後に着るバスローブといったものを非常にクオリティーの高いものを使うように、自動車のなかでそういった物に触れられるところにあり、これこそ究極のラグジュアリーだと考えている。

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