「ニューヨーカー」「ブルックスブラザーズ」を運営するダイドーリミテッドは5日、山田政弘会長ら全取締役が登壇する記者会見を東京・秋葉原の本社で開いた。同社は4日に年間配当を期初予想の5円から100円に引き上げると発表していた。原資は保有する不動産の2物件を売却して充てる予定だが、アクティビスト(物言う株主)のストラテジックキャピタルから売却検討を求められた商業施設「ダイナシティ」(神奈川県小田原市)に関しては「中期経営計画で示した通り(対象ではない)」と山田会長は説明した。
大幅増資を決めた経緯について、山田会長は「固有名詞は挙げられないが、株主還元について複数の株主と話し合いしてきた」と述べるにとどまった。筆頭株主のストラテジックだけでなく、5.14%を保有する南青山不動産およびそのグループ会社の大株主である村上世彰氏とも株主還元をめぐって議論を重ねたことが、すでに明らかになっている。
会見には6月27日の株主総会を経て就任した8人の全取締役が横に並んで登壇した。ダイドー側の会社提案の5人、ストラテジック側が株主提案した3人で構成されている。ダイドーとストラテジックはこの数カ月、取締役人事と経営方針をめぐって対立し、激しい応酬を繰り広げていた。
全取締役が登壇する異例の記者会見について、「飛び交っている憶測と観測を払拭したいと考え、私が発案した」と山田会長。「会社提案、株主提案の区分は総会前の話に過ぎない。ここにいる全員は株主から負託を受けた取締役であり、今は意識を切り替えて株主価値の向上に全力を尽くしている」「それぞれがプロフェッショナルのビジネスマンとしての知見に基づき、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をしている」と一枚岩であることを強調した。
会社提案から社長に選ばれた成瀬功一郎氏は、山田氏と同じコンサル会社ジェミニストラテジーグループ出身でIT分野の知見に長けている。「新体制発足から1週間しか経っていないが、3カ月くらい議論してきた気がする。専門分野を持つプロが集まり、内容の濃い取締役会になった」と話した。同じく会社提案から社外取締役に選任された元アダストリア取締役の久保木大世氏は「EC(ネット通販)関連などで貢献していきたい」と述べた。
株主提案から取締役執行役員に選ばれた中山俊彦氏は、ダイドー傘下のブルックスブラザーズジャパンでCFO(最高財務責任者)の経験がある。「再建に向けて大切なのは現場主義。8人の取締役と現場の人と一緒に戦っていきたい」と話した。同じく株主提案から社外取締役に選任された元オンワード樫山社長の大澤道雄氏は「ダイドーの社員の皆さんが胸を張って仕事ができるように、私の40数年のアパレルの経験でお手伝いしたい。業績回復と社員の幸せ、それがひいては株主価値につながる」と話した。