大阪のスポーツ用品メーカー、エスエスケイ(SSK)は、スポーツブランド「ヒュンメル(HUMMEL)」のデイリーウエアライン「ヒュンメルオー(HUMMEL 00)」を始動する。
「ヒュンメル」は、デンマークのコングロマリットであるトルニコ(THORNICO)が傘下にもつスポーツブランドで、日本における商標権は大阪のスポーツ用品メーカーエスエスケイが保有している。1946年創業の同社はピンポン球などの販売店として創業し、野球用のユニホームや道具を中心に自社ブランド「エスエスケイ」商品の開発や販売を通して成長してきた。現在の年商は490億円で、売り上げの80%を「ナイキ(NIKE)」「アディダス(ADIDAS)」「プーマ(PUMA)」といった外資系スポーツブランドの輸入販売が、残りの20%を自社ブランドと「ヒュンメル」の販売・卸が占める。
同社と「ヒュンメル」の結びつきは、1991年に日本の販売代理店としてのライセンス契約を締結に始まり、2013年に商標権を獲得。「日本の販売現場を守り、本国と信頼関係を築いたことで商標権を得られた。本国は“スポーツを通して世界を変える(change the world through sport)”、エスエスケイは“スポーツを通じて健康で豊かな生活をサポート”を標ぼうしており、会社の方針が一致したことも大きかった」とエスエスケイの南剛ヒュンメル事業部上席部長は語る。
新ラインの卸先はセレクトショップ
「これまでの販路は使わない」
「ヒュンメルオー」によってファッション分野への参入に本腰を入れるのは、昨年「ヒュンメル」が創業100年を迎えたからだ。「100周年にちなんだ日本企画。次の100年を目指すにあたり、“スポーツを通して世界を変える”というブランドの精神性をより多くの人に広めたい。そのために、SNSなどで拡散力を持つファッション業界の人たちの力を借りようと判断した」。
ディレクターには、都内のセレクトショップのプライベートブランドや、国内デザイナーズブランドの企画・生産で経験を積んだ前野亮を迎えた。
ラインアップはトータルコーディネートを組めるほど充実しており、シャツやTシャツ、パジャマ風のセットアップ、パンツ、スカート、アウター、バッグなどをそろえる。スポーツブランドとしてのアイデンティティーは、機能性を重視した素材使いで表現した。例えばテーラードジャケットには、伸縮性のあるポリエステル素材のソロテックスを使用したほか、はっ水加工をかけて天候を気にせず動きやすいウエアに仕上げた。バッグの底面にはコーデュラナイロンを採用し、耐久性のある作りを実現。クリーンさとカジュアルさを両立し、ファッション性を高めている。ブランドの発祥地であるデンマークにちなみ、シャツには国鳥である白鳥をプリントしたり、ステッチでヒュンメルの頭文字の「H」を描いたりして、さりげなくブランドらしさを忍ばせた。価格帯は1万4000円から7万6000円。
「ヒュンメルオー」では、従来、「ヒュンメル」が使用してきた販路を一切使用せず、アパレルのセレクトショップを中心に卸先を新規開拓する。現在、外部のセールスチームを3人雇用して全国を回っており、大手セレクトショップを含む5〜6件の商談が進行中だという。7月12日にランウエイショーを開催して公式に披露し、7月16〜20日には展示会を実施する。
エスエスケイは現在、「ヒュンメル」の裾野を拡大するため、ブランドのラインを増やしている。既存のスポーツラインの「ヒュンメル」、カジュアルライフスタイルライン「ヒュンメル プレイ(HUMMEL PLAY)」と「エイチエフシー(H.FC)」に、ファッションラインとして、「ヒュンメルオー」が加わる。