ファッション

「モモタロウ ジーンズ」京都の町家に新店舗 グローバル化を加速

デニム製造販売のジャパンブルー(岡山県倉敷市、鈴木完尚社長)は、「モモタロウ ジーンズ(MOMOTARO JEANS)」の新店舗を京都・祇園の新門前通に13日オープンする。同店の出店を機にブランドを刷新する。新たなブランドサイトを立ち上げ、ECサイトでも店舗と同等の体験を提供し、国内外にブランドの魅力を発信していく。

11日に新店舗を関係者に公開した。祇園の中でも骨董店や古美術商が集まる通りに出店。築80年の歴史を持つ町家を改装した建物で、隣にはロンドンのビスポーク靴専門店「ジョンロブ」がある。伝統技術やものづくりの魂を大切し、未来に継承することを目指すブランドにはふさわしい立地だ。

内装を手掛けたASの品川雅俊氏は「歴史のあるこの町家とジーンズ工場に共通する飾らない美しさを引き継ぎ、古い素材を生かしながら新たな素材をていねいに重ね合わせた。古い土壁や柱梁をなるべくそのまま生かし、無機的なアクリルの照明や天板にアルミのキャスト板を使った什器を配置した」と説明する。坪庭には瀬戸内海の空気を象徴するソテツを植え込み、試着室には坪庭を介して自然光が入る作りになっている。2階には裾上げのための旧式ミシンを配置。「自然光のもとでのフィッティングと、裾上げのミシンの心地いい音。この一連の体験を楽しめる店にした」という。

海外で認知を広げる岡山発ジーンズ

「モモタロウ ジーンズ」は、ジーンズの産地である岡山県の児島地区で2006年に誕生。深い藍色と独特な風合いを持ち、経年変化によって味わいが増す「特濃(トクノウブルー)」を一番の特徴としている。現在、直営店は児島味野本店、岡山店、大阪店、青山店、高円寺店の5店舗で京都店は6店舗目。海外では欧米、東アジア、東南アジアなど世界26カ所の国と地域で展開し、小売売上高に占める外国人客の比率は4割にのぼる。
 
売上高も21年以降順調に伸びている。24年8月期は前年比15%増の16億円になる見通し。とりわけ訪日外国人客に支持され、店舗売上が大きく伸長した。鈴木社長は「海外での卸と越境ECも伸びているのは、海外の人が『モモタロウ ジーンズ』を認め、指名買いしているから」と話す。ただ「ECチャネルも小売りもまだやりきれていない要素が多すぎる」とし、ブランド刷新に着手した。背景には、ラグジュアリーの概念が近年変容し、グローカルが注目されていること、物的価値よりも職人の手仕事や時間の価値が重視されるようになってきたこともあるという。

ブランド刷新にあたっては、クリエイティブディレクションをムラカミカイエ氏率いるシモーネが担当し、設計デザインは建築設計ユニットの「AS」、ブランドロゴのデザインはグラフィックデザイナーの小林一毅氏が手がけた。

「全製品を見直し、ブランドイメージの刷新からコミュニケーションの英語化、プラットフォームの整備など、真のグローバルブランドが備えるべき機能をすべて用意した」とムラカミ氏。デニムを単にアパレル製品ではなく、クラフツ製品の一つとして定義。「特濃」をさらに美しく魅せる生地の開発や、流行に左右されないシルエットを追求したパターンを取り入れ、より洗練されたデザインを展開する。

2年後に売上高30億円に

新たな商品ラインナップは、大きくわけてスタンダード、クラシック、エクスクルーシブの3つ。スタンダードは「特濃」を際立たせるモデルで、デニムの構成を見直し、緯糸(よこいと)に細い糸を使用している。クラシックは、昔話の「桃太郎」に登場する旗の二本線をモチーフにしたモデル。エクスクルーシブは天然本藍を使い、糸一本一本の表情にこだわった経糸が特徴だ。旧式力織機を使い、製織難易度の高いシルクやカシミヤを緯糸に使ったラインも展開する。

ボトムスはストレート、テーパード、スリム、ワイドの4種類。従来のベストセラー商品のフィット感を基本に顧客の声も取り入れ、パターン構造を見直して着用感を上げた。サイズは26〜42インチで、女性客や海外市場を見据えたサイズを投入する。デニムジャケットは身幅が最もワイドなシングルポケットのファーストモデル、ベーシックなダブルポケットのセカンドモデル、一番タイトなフィットのサードモデルの3種類でサイズはS〜XXL。「多くの人にこの価値を知ってほしいので、フォルムやサイズのバリエーションを広げ、いろんな着こなしが楽しめるよう進化させた」(鈴木社長)。ボトムスの中心価格は2万9700円、3万3000円、シルクを織り込んだタイプは7万7000円、カシミヤを織り込んだタイプは13万2000円。

新たなブランドサイトでは、ブランディングツールとしての役割と機能を高めた。サイズバリエーションの多さや裾上げといったデニム特有の商品選びの難しさを解決するため、商品をわかりやすく伝え、ユーザーが迷わないよう工夫している。

今後は直営店のリローケーションと新店の出店を加速する。北米や欧州、ドバイなど出店要請のある海外市場を拡大し、2年後には売上高30億円をめざす。

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