1997年の創業以来、アメリカ産の綿にこだわり、高品質なベーシックアイテムを作り続けてきた日本のデイリーウエアブランド「グッドオン(GOOD ON)」。この「グッドオン」のアイテムが、パリを拠点とするセレクトショップ「ロイヤル・チーズ(ROYAL CHEESE)」での取り扱いをきっかけに、フランスで人気を博している。「良いもの」を長く大切に使う文化が根づくフランスに「グッドオン」が受け入れられる理由はなんなのか。その背景を探る。
古き良きアメリカの名品のエッセンスを
最高の品質で
アメリカンブランドの多くがコスト削減のため生産拠点を続々と国外に移していったのが1980年代。それ以前に生産されたアメリカの衣料品は、生地や縫製の質に優れ、経年変化を楽しめるものも多い。昨今の古着ブームも手伝い、「メイドインアメリカ」のアイテムの価値はいまだに上がる一方だ。「グッドオン」創業者の山田康雄社長は、88年に衣料品や雑貨の輸入卸売りを手がけるビーグッドカンパニーを設立。その後、97年にブランド「グッドオン」を立ち上げ、「古き良き」アメリカの衣料品に着想したTシャツやスエットなどのデイリーウエアの製作をスタートした。それ以来、「メイドインアメリカ」の名品のエッセンスを大切に、試行錯誤を繰り返して技術と品質を高めながら、ベーシックでこだわりが凝縮されたアイテムを作り続けてきた。
パリの実力派セレクトショップ
「ロイヤル・チーズ」との出会い
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そんな「グッドオン」がフランスで受け入れられるきっかけとなったのが、パリを拠点とする小売店「ロイヤル・チーズ」との出会い。1998年にパリで創業し、現在は市内で3店舗を展開する同店は、タイムレスな魅力を持つブランドを独自の審美眼でセレクトし、ベーシックで質の高いアイテムを提供するセレクトショップだ。
「ロイヤル・チーズ」のキャサリン・ヨスフィ(Catherine Yousfi)オーナーは、2000年代初めに日本の雑誌で偶然「グッドオン」を見つけ、Tシャツをファックスで注文したという。「クオリティーも品ぞろえも、まさに私たちが求めていたもので、色合いも最高だった」と振り返る。
当時はインターネットを介したやりとりが盛んではなく、その時の取引は単発に終わった。しかし、数年前「グッドオン」が高品質のTシャツを作り続けていることを知ったキャサリン=オーナーから20年ぶりのメールが届き、両者は取引を再開。老舗のセレクトショップへと成長した「ロイヤル・チーズ」の全店舗で定番の売れ筋商品になった。この評判は他の小売店にも伝わり、今や「グッドオン」のフランスでの取り扱いは40店舗を超えている。フランスで人気の理由について「独自のカラーバリエーションと、経年で表情が変わる顔料染めの風合い、そしてコットンの品質」とヨスフィ=オーナーは分析する。普遍的なコーディネートに少しの“ひねり”を効かせるパリジャンの着こなしや、質の良いアイテムを長く大切に着るフランスの文化に「グッドオン」のコンセプトがぴたりとフィットした。
「ロイヤル・チーズ」での不動の売れ筋はTシャツだが、長袖やラグラン、スエットなどもそろえ、何色も色違いで購入する人も多い。「ユニセックスブランドとして展開しているため購入客の幅も広く、老若男女が『グッドオン』のアイテムを楽しんでいる」という。
ヨスフィ=オーナーは「昨年、コロナ禍を経て久しぶりに来日して『グッドオン』チームと再会し、ショップの25周年記念アイテムも作ってくれた。今後も何らかの形でコラボレーションできるのが楽しみ」と展望を語ってくれた。古き良きアメリカンカジュアルに着想した日本のデイリーウエアが、フランス人のワードローブにどれだけ定着していくのか、ますます注目だ。
「グッドオン」のクオリティーを
形作るこだわり
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「グッドオン」のデイリーウエアには、ブランドのさまざまなこだわりが凝縮されている。
その1つがアメリカ産コットンにこだわった「素材」だ。「グッドオン」のプロダクトには、厳しい基準をクリアしたアメリカ産コットンを、製品の綿部分に100%、さらに製品の全体重量の50%以上使用した製品だけに許される「COTTON USA™」マークがつけられている。最新の科学技術による管理のもと生産されるアメリカ産コットンは、肌触りがよく耐久性に優れ、「グッドオン」の価値の根幹を成す要素だ。
独自のプロセスで作成するパターンや、日本で行う縫製にも「グッドオン」のこだわりが詰まっている。アメリカ産コットンと一口に言っても性質や縮率はさまざまなため、製品染めと洗いを施したあとの縮み具合を見ながら、それぞれのコットンの性質に合わせて微妙にパターンのサイズを調整する。これによって素材の性質の違いによって生じるサイズのバラつきを防ぐ。縫い目がないため着心地が良く、よじれないチューブボディーや、ほつれを防ぎ、強度を高める二本針縫製、型崩れを防ぐ首元の補強テープからも「長く着られる頑丈なものを」というブランドの強い思いが見てとれる。
職人との協働で、デザインや生地の特性に合わせて開発している染色方法にもこだわりがある。中でも洗濯回数が増すごとに表面の色が落ち、ジーンズのように味のある風合いに変化する「顔料染め」は象徴的で、自分だけの逸品に「育てる」ことができると人気が高い。
2024年春夏コレクションの
おすすめアイテム
2024年春夏の「グッドオン」のコレクションは、定番のショートスリーブTシャツのほかにも、レトロな配色が可愛らしいリンガーTシャツや、カジュアルスタイルを引き締めてくれるボタンダウンのショートスリーブポロTシャツ、アメカジスタイルの定番と言えるラグラン袖のベースボールTシャツなど、素材、染色方法、スタイル、カラーの異なる多種多様のアイテムがそろう。恵比寿にある旗艦店のほか、オンラインストア、そのほか全国各地の取扱店で購入可能だ。シンプルゆえにさまざまなスタイルに取り入れやすい「グッドオン」のデイリーウエアから、ぜひ自分だけのお気に入りの一着を見つけてほしい。
グッドオン