サステナビリティ

JSFAがサステナビリティ推進に向けた政策提言 故衣料の行政回収ガイドラインなど求める


ジャパンサステナブルファッションアライアンス(以下、JSFA)はこのほど、「ファッション産業におけるサステナビリティ推進に向けた政策提言書」をまとめ、JSFA のパブリックパートナーである環境省、経済産業省、消費者庁に提出し、受理された。「資源循環」に焦点を当てた内容で、故衣料を「ごみ」ではなく「資源」ととらえ活用してゆくために必要な官民の連携や、生活者の行動変容につなげる仕組みづくり、幅広い産業関係者と行政との定期的な意見交換の場の設置などを提言した。

行政回収に係るガイドラインの策定を求める

提言は行政が発表した2つの報告書への意見、という形で出されている。1つは、2023年9月に公表された「繊維製品における資源循環システム検討会報告書」で、なかでも衣料品の行政回収についてフォーカスし新たに「行政回収に係るガイドライン」の策定を環境省に求めた。これは、濡れたり汚たりしたことで再資源化に適さない回収品が発生している現状を受けたもので、「全国規模での行政回収での回収品の品質向上は故衣料品の廃棄量削減に大きく貢献する」としている。具体的には、衣類回収事業者のノウハウを自治体の回収基準に反映し、回収物の品質の底上げを図る。そのためのガイドラインの策定と生活者に向けた周知・啓発を求めている。

また、衣料品の回収・再利用にあたっては、故衣料品が「もっぱら物」に該当するか否かは自治体ごとに異なっており、事業者が戦略的に資源循環を進める阻害要因となっている。この現状を改善して回収事業を促進するため、故衣料品の取扱いに関する統一した見解を求めたものだ。さらに、故衣料品が資源として活用されることが生活者に伝わるよう、回収後のトレーサビリティに関する情報公開基準についてルール整備を求めた。

リサイクル繊維開発にインセンティブ制度導入を求める

また経済産業省に対しては、回収された故衣料品の分別が手作業で行われている現状を踏まえ、高度な自動選別技術開発の研究費の補助、新技術導入に際しての補助金交付の検討を希望した。

加えて、リサイクル繊維の用途開発のための技術開発に関しても研究費の補助や、事業者間で競うコンペティションの開催など、産官学が協働した研究開発の促進につながる施策を求める。また、リサイクル繊維の原材料がバージン材よりも高価な現状を踏まえ、技術開発費などのコスト増を吸収するインセンティブ制度の検討を求めた。これにより「各企業における繊維再生研究が促進され、新たな需要の創出・発展が期待できる」としている。

「環境配慮設計ガイドライン」への2つの改定提案

提言の対象となる、もうひとつの報告書は24年3月に発表された「環境配慮設計ガイドライン」である。「これまで未整備であった環境配慮などに対する評価基準。方法に対して、政府が具体的な指針を示したことは、繊維産業における資源循環を促進するもの」と評価したうえで、2つの改訂方針を提案した。

一つ目は、ガイドラインに準拠して設計・製造された製品について、それがどういったものであるかがわかるよう、事例紹介など具体的なガイドラインの運用例を示し、同時に製品の環境負荷低減効果に関する情報開示の方法について具体的に示すことを求めた。

繊維が持つ環境にポジティブな側面も評価を

二つ目は、各繊維がもつ環境にポジティブな側面も評価し、それらを環境配慮設計項目に明確に示すことを求めた。特に天然繊維に関するポジティブな影響評価を求めている。「現状の環境配慮設計項目は基本的に、それぞれの繊維が持つ環境へのネガティブな影響を減らすために設定されている。これは環境負荷を定量的に評価する手法(LCA)に基づいているが、こうした手法は環境へのポジティブな影響を評価しておらず、持続可能性の実現のためには不十分。例えばある種の植物や羊毛は再生産が容易で、短サイクルで繰り返し採取が可能であるため、一定の数量を確保するための環境への負荷は他の原料と比して少なく、影響は限定的だ。繊維それぞれの環境への影響を判断する上で、こうしたポジティブな側面を評価に加える手法が望まれる」としている。

さらに、ガイドラインに準拠した製品が、準拠していない製品と比較し割高になっている間は、準拠した製品を扱う事業に補助金支給を希望するとともに、ガイドラインの趣旨やその価値について、生活者の認知向上を目的とした官民連携の啓発活動の実施を求める。

環境負荷算定は原単位や算定のための計算方法の開発

繊維製品における環境負荷算定に関しても提言を行った。「環境配慮設計ガイドライン」では、製品のライフサイクル全体または各段階における環境負荷を定量的に評価する手法(LCA)を普及させることが明記されている。これを可能とするため、原単位(*編集部注:一定量の製品を生産するのに必要な、原材料やエネルギーの量を表す単位)や算定のための計算方法の開発や、リサイクル繊維活用による環境負荷削減効果の明示を求めた。これにより「素材ごとに定量的に環境負荷を比較することが可能となり、より環境負荷の低いリサイクル繊維の利活用並びに開発が促進されると期待される」としている。

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