装備の軽さを追求し、自然をより濃密に楽しむという登山の方法論、ウルトラライトハイキング(以下、UL)が市場に浸透する中で、中小規模のガレージブランドが軽量ギアを打ち出し、スタイリッシュな見た目もあいまって熱狂的なファンを生んでいる。一方で、大手メーカーもそうした軽さへのニーズに着目して製品開発を進め、今や軽量であることはザックやシェル、テントなどの開発において前提となった。装備が軽くなったことで、剛性の高い登山靴ではなくローカットシューズなども支持されるようになっている。大きく変化する登山市場で、人気の大手3ブランドがいま何に着目しているのかを聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年7月15日号からの抜粋です)
【THE NORTH FACE】
長距離トレイル向けのコレクションを立ち上げ
ゴールドウインの「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」(以下、TNF)は2024年春夏、長距離トレイルを歩くことを想定した“ロング・ディスタンス・ハイキング”コレクションを立ち上げ、メンズ、ウィメンズ15型を企画した。「米ヨセミテ生まれのブランドとして、DNAには長距離トレイルのジョン・ミューア・トレイルを含む環境がある」と、「TNF」の千葉弥生アパレル事業部パフォーマンスグループマネージャー。ウルトラライトハイキング(以下、UL)の影響で米国のトレイルに憧れる層が、日本のトレイルに注目する流れもある。ゴールドウインは08年に全線開通した「信越トレイル」の整備支援も長らく行っており、親和性がある。
長距離トレイルで必要となる製品を想定したとき、ULで志向されるとにかく軽くて薄いコンパクトなウエアなら、既に従来の「TNF」ラインアップの中にあった。そこで、「(ULや長距離トレイルを入り口に山に興味を持った)エントリー層も安心して使える汎用性の高さ」にフォーカス。長距離トレイルでは山だけでなく市街地も歩くため、街着に通じる自分らしさが表現できるデザインを意識した。例えば“マウンテンカラーパンツ”は、「TNF」が従来得意としてきた細みのパンツに比べると、テーパードのややゆったりしたシルエット。豊富な色提案も特に女性に支持されている。ザックの上げ下ろしをしなくても荷物が出し入れできるよう、シャツ類は大きめのポケットを増やした。
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