ファッション

「マディソンブルー」がブランド創設10周年 シャツ6型から始まった物語とは

「マディソンブルー(MADISONBLUE)」は、今年でブランド創設10周年を迎えた。スタイリストでもある中山まりこデザイナーが、2014年春にシャツのみでローンチ。当初はオックスフォードの半袖と長袖のボタンダウンとラウンドカラー、ワークシャツのワンウオッシュとビンテージウオッシュの6型を「ロンハーマン(RON HERMAN)」限定で販売し、店舗も持たずECもせず、限られた服を丁寧に作る小規模での展開を予定していた。しかし、信頼する人々との出会いを機に、成長を遂げる。中山デザイナーのクリエイションに対する思いや、ディテールにこだわりが光る10周年記念アイテムを通して、ブランドが時代と共に歩んできた軌跡をたどる。

「シャツが自信につながった」
中山まりこが語る、
揺るぎない創造

30年以上にわたり、新しいクリエイションに挑戦し続けている中山デザイナー。さまざまな夢を実現してきた彼女が、49歳でかなえたのは自身のブランドを持つことだった。10周年を迎えた今、その先に見据えるビジョンとは。

1980年から、スタイリストとして第一線で活躍していた中山デザイナーが、常に考えていたのは「大人になったら何をやろうかな」という“夢”だった。23歳の独立後、スタイリストとしての夢をニューヨークでかなえ、帰国後も仕事をまい進し続けたが、オファーを形にする“レシーバー”では物足りなさを感じ始めた。そこで、「世の中に自分がデザインしたものを送り出したい」「サーブを打ちたい」と自身が一番知識を持つ服の作り手になることを決意する。経験を積んだニューヨークのマディソン・アベニューと愛する海の色から名付けた「マディソンブルー」を創設。まず選んだのは、大好きなシャツだ。「これまでのキャリアを踏まえ誰にもできない自分らしさを探した時に思いついたのが、シャツだった。ウエスト部分を絞ったり、袖をまくったり、これまで培ってきたノウハウを生かせるシャツだけで世界観を強く見せたいと6型だけを作ることにした。2014年の立ち上げ当時は、撮影前日に高揚して眠れなかったスタイリストになりたての時のような感覚に。『新しい世界に飛び込んでいるんだ』ってすごく胸が高鳴ったし、『やりたいことが形にできて、ああ幸せだな』って。なんてすてきな仕事ができるようになったんだろうって思いましたね。ブランドを大きくするつもりはなかったけれど、服作りに携わる方や私の服をすてきに着こなしてくださるお客さまとの出会いがあって、アイテムを増やし、現在のコレクションを完成させられた」。

「マディソンブルー」が作るのは、「普遍的でありながら、今を生きるための服。そして何よりも、着る人の個性が際立ち、上質で心地よく、ディテールを極めたリアルクローズ」だ。そしてその背景には、中山デザイナーが描き続ける女性像があり、アイコンであるシャツやジャケット、スカートなどには実在する街や人物がそのモデルとなって名が付けられた。ゆえに、どんな知性やスタイルが込められているかまで鮮明だ。「初めて作った6型のシャツには、『マディソンブルー』を語る全てのスピリッツが詰まっている。改めて、すごいものを作ったんだなって(笑)。アニバーサリー限定商品を企画しながら、この10年を振り返ると、自分の選択は間違っていなかったと分かる。それにブランドとして消費されない自信がついた。節目節目で顧客の皆さんや作り手の方々が背中を押してくれたことに感謝したい」と振り返る。限定商品には、中山デザイナーが10年愛用して着込んだ“ハンプトン”シャツの風合いをビンテージ風のレプリカとして再現し、“ゲタリー”と名付けたシャツがある。「10年という年月をシャツで表現できた“ゲタリー”は特別な思い入れがある。私にとってシャツという存在はすごく大きくて、ますます自分たちの自信につなげていきたいと思うし、『マディソンブルー』をより多くの人に知ってほしい、より多くの人に着てほしい。新しいお客さまとの出会いを増やす、新たな旗艦店(2025年初旬に南青山に増床オープン予定)を拠点に、次の10年も、もう一歩外に出るフレッシュな気持ちで積極的にアプローチしていきたい」。

ブランドを形づくる3つのコレクション

「マディソンブルー」はブランドの思いや姿勢、こだわりやギャップなど、独自のスタイルを表現するために、“エッセンシャル”“シーズン”“タンジェリン”の3軸で構成している。共通点は、普遍的であること。大切にしたい逸品を新たな出合いと共にアップデートしていくことでブランドが描くスタイルを構築していく。

“ディテール愛”あふれる
アニバーサリーアイテムが登場

TEXT : RIE KAMOI
問い合わせ先
マディソンブルー 表参道店
03-6434-9133