毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年7月15日号からの抜粋です)
五十君:昨年5月8日号の特集ではウルトラライトハイキング(UL)を紹介しましたが、今回は、里山でクッキングしたり、トレイルランニングをしたりと、山の楽しみ方が多様化している点にスポットを当てました。その中で、かつて裏原に胸を焦がした40歳前後の私や長橋さんと同世代の人たちが今、山を楽しんでいるというのが特に気になり、裏テーマとしています。
長橋:今回の座談会に参加した田代耕輔くん(41)は、文化服装学院時代の同級生。彼は当時からさまざまなカルチャーに精通していて、クラブミュージックに始まり、ファッション、ピストバイクを経て、その後山へ。グッズ作りも盛り上がっているようで、スケーターが自分たちでチームのTシャツを作って着ているようなクルー感が今、山にもあるようですね。
五十君:「リッジ マウンテン ギア(RIDGE MOUNTAIN GEAR)」の黒澤(雄介)社長もまさに裏原カルチャーの洗礼を受けたと語っていました。新興の米ULブランド「パランテ(PA'LANTE)」のSNS投稿なども、非常にストリートっぽさを感じます。
長橋:年齢もあるかもしれないけれど、クラブに行っていた人たちが自然に回帰して、しかも「普段の服の延長」のようなスタイルで山に行くこともあるようです。一般のブランドで使える服をディグるのが楽しいみたい。
五十君:そのディグ感は座談会参加者に共通していますね。あえて「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」や「ジャーナル スタンダード(JOURNAL STANDARD)」などで機能素材のアイテムを探し出して山に着て行く、みたいな。MYOGと呼ばれる作る楽しみ、探す楽しみがあるのがいいのでしょうね。
自由な精神性が共感や憧れを呼ぶ
長橋:登山ってマインドとしてもポジティブですよね。そこにもともと好きなファッションがくっつくと、よりいいじゃんという感じがあります。「メレル(MERRELL)」などのアウトドアブランドのアパレルも街着としてもカッコよくなってきていますし、境界線がなくなってきていますね。
五十君:山に長いこといると非日常と日常の意識の逆転が起きて、「自分の人生を生きるってこういうことなんだ」と精神的自由を感じられるようになると、山好きからよく聞きます。そんなところに共感や憧れが生まれているんじゃないでしょうか。山の必需品メリノウールの服は街着としてもヒットしていますし、今絶好調の「サロモン(SALOMON)」もフレンチアルプス生まれ。山発のモノがここからさらに街に広がりそうな予感がします。