丸井グループは、2020年度(21年3月期)を最終年度とする中期経営計画(5カ年)を策定した。1931年に東京・中野で創業以来、小売り事業と、分割払い(割賦販売)から発展したカード事業とを一体化したビジネスモデルを追求。長く愛顧された「マルイの赤いカード」を2006年に「エポスカード」へと進化させて発行したことを契機に、「これまでの小売り中心からカード中心に大きく転換し、安定的な成長を可能にする事業構造が実現した」と説明。事業については、従来の"小売り・店舗事業""小売り関連サービス事業"を「小売り事業」、"カード事業"を「フィンテック事業」として統合的に運営することを決めた。
小売り事業では、"店舗""オムニチャネル""プラットフォーム"の3事業で構成。"店舗事業"では、自主販売からショッピングセンター(SC)型の定借化により事業構造を転換し、次世代型のライフスタイルSC展開で資本生産性を高める。すでに前期から着手しており、リニューアルした渋谷の「モディ」をはじめ、売り場面積の2割がSC化が進捗。今後も柏や静岡など2館体制の店は一つをモディ化するほか、従来のマルイ店舗でも定借化を進め、今期中に6割にまで構成比を向上。5年後の中計最終年度には100%SC化を図る考え。
"オムニチャネル事業"では、「マルイウェブチャンネル」を中心としたECに軸足を置いたビジネスを推進し、グループのノウハウを重ね合わせた体験型ストアなど、独自のビジネスモデルで事業領域を拡大する。16年3月期に約204億円だった通販売上高は早期に300億円規模まで引き上げたい意向。
その起爆剤として期待するのが、シューズ販売だ。13年6月にシューズ専門サイトを開設し、自宅で安心して試着できるように配送料や返送料を無料化したり、服とのコーディネート検索など提案力を強化。一方で、「ラクチンきれいパンプス」などプライベートブランド(PB)商品の色・サイズ・デザインなどを拡充。すでにPB100%で専門店出店をできる商品力が付いたと判断している。さらに未進出エリアを中心に、シューズのポップアップストアの出店を本格化する。シューズは着用感を確認したうえで購入したいというニーズが高いアイテムであり、リアルな体験場所を提供して顧客接点を増やすとともに、タブレットによる接客販売や、自宅でのリピート購入など、オムニチャネルのメリットを生かす。単独では初期の費用対効果は高くはないが、カード会員獲得の場としても活用するなど、グループでの将来収益の拡大に寄与させたい考え。従来のプロジェクトチームでの運営だったものを、4月から専門部隊化して展開していくという。また、大分のアミュプラザなどでは、ポップアップストアが好調だったためそのまま本出店に至るなど、テストマーケティング的な役割も期待する。
"プラットフォーム事業"では、小売り・流通を支える店舗内装や物流、ビルマネジメントなど、培ってきたノウハウを運用してB to Bビジネスを推進する。
21年3月期の経営指標は、ROE(株主資本利益率)で10%以上(16年3月期は6%)、ROIC(投下資本利益率)は4%以上(同3.3%)、EPS (1株当たり利益)は130円以上(同70.7円)、連結営業利益は500億円以上(同296億円)を掲げる。営業利益のうち、小売りは16年3月期に比べて約70億円増、フィンテックは170億円増を見込む。
なお、16年3月期連結決算は、売上高は2458億円で前期比98.4%、営業利益は296億円で同105.6%、親会社株主に帰属する当期純利益が177億円で同110.8%と減収増益だった。減収はSC化に伴う閉鎖改装の影響が大きかった。17年3月期は売上高は同102.7%、営業利益は同111.4%の330億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同106.9%の190億円を予想する。