ファーストリテイリング(FAST RETAILING)の2016年8月期の上期決算(15年9月〜16年2月)は、連結で売上高が620億円増収し1兆116億円(前年同期比106.5%)となった一方、営業利益は507億円減益し、993億円(同66.2%)、税引前四半期利益が820億円(同50.1%)と増収大幅減益となった。期首為替レートが1ドル121円から2月末のレートが1ドル113円に落ち、営業取引から発生した為替差損が54億円発生したことも響いた。
国内の「ユニクロ」では、売上高は8億円減の4536億円(同99.8%)だった。既存店売上高は同98.1%で、客単価は同104.7%と上がる一方で、客数が同93.7%と落ち込んだ。また、12月は暖冬の影響で防寒衣料の売り上げが低迷。1月以降はセールに加え、気温の低下に伴いカシミヤセーターやヒートテックなどの冬物商品の消化が進んだが、粗利利益率低下の要因になった。
逆に売り上げをけん引したのは海外の「ユニクロ(UNIQLO)」で、前年に比べ437億円の増収、総売り上げの38.5%を占めた。15年11月には海外の店舗数が初めて国内数を超えており、1~2年のうちに売上高も海外が国内を逆転すると見込んでいる。eコマースの売り上げは253億円(同128.4%)と好調だった。ただし、利益面では台湾、香港、中国本土を含めるグレーターチャイナおよび韓国でも暖冬が響き、減益に。米国は4店舗を閉鎖したこともあり赤字幅が拡大した。一方で、東南アジア・オセアニア地域とヨーロッパが好調だった。なお、欧州では3月18日にリニューアルオープンしたロンドンのオックスフォードストリートのグローバル旗艦店は好調に推移。ベルギーシンガポールには今秋、東南アジア最大級のグローバル旗艦店をオープンする予定だ。
グローバルブランド事業については、「ジーユー(GU)」はキャンペーン商品のニットや"ガウチョパンツ"や"ワイドパンツ"などのトレンドボトムスが売り上げをけん引し、既存店の売上高は2ケタ増を見せた。1月、2月の端境期の春物の立ち上がりも好調だという。「セオリー(THEORY)」「コントワー・デ・コトニエ(COMPTOIR DES COTONNIERS)」「Jブランド(J BRAND)」はそれぞれ減益、「プリンセス タム・タム(PRINCESS TAM TAM)」は前年並みの結果だった。
柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は大幅な減益だった今期の業績を受け、「徹底的なコストの削減、シンプルな組織への改革、業務のデジタル化」を重点対策として挙げた。「ユニクロ」においては「1990円および2990円といったシンプルで分かりやすいプライスラインを強化する。週末限定のセールも抑制し、いつでもお手頃な価格で商品を提供する」と、ファッションリーダーかつプライスリーダーとしての座を再度獲得することを宣言した。
また、グローバルでeコマース事業の売り上げ構成比を現状の5%から30%に上げる。デジタル化にも本腰を入れており、「有明プロジェクト(ARIAKE PROJECT)」と題し、4月に有明に竣工する次世代物流センターを稼働させる。さらに国内外で約10カ所の物流センターを開設することで、通販での当日・翌日配送の実現や、店舗への多頻度納品による欠品を防いで機会ロスを削減するとともに、店舗での作業を軽減する狙いもある。有明にはデジタル開発本部を移転。今秋には世界最大のデジタルフラッグシップストアをオープンする。社内のビジネスモデルにもデジタルを取り入れ、客と社内が直接つながるより効率的なビジネスモデルに変える。柳井会長兼社長は「今までは各個人がそれぞれのポジションに専念するリレー方式だったら、これからは同時にさまざまなポジションがコミュニケーションをとれるサッカーチームのようなモデルに変える」と語った。また、海外への積極的な出店とeコマース事業を拡大し、「『ユニクロ』を世界一のブランドに育てる」と話し、改めて2020年にファーストリテイリンググループで売上高5兆円、営業利益1兆円を目指すと強調した。