ファッション

エミー賞で25ノミネートを記録した「SHOGUN 将軍」 衣装を手掛けるのは元「ディオール オム」アシスタントのカルロス・ロザリオ

米現地時間7月17日、第76回プライムタイム・エミー賞のノミネーションが発表され、ドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」が、作品賞を含む22部門で25ノミネートを獲得。ハリウッドが手掛ける戦国ドラマとして話題の同作をプロデュースしたのは、主演を兼任した真田広之。さらにアンナ・サワイ、浅野忠信、二階堂ふみ、平岳大ら錚々たるキャストが名を連ねる。

カルロス・ロザリオの華麗なるキャリア

カナダ・バンクーバーでの16カ月以上にわたる撮影期間中、真田は自分の撮影がない日も毎日現場へ足を運び、小道具や所作、衣装の細部まで本物を追求したと語る。彼の情熱に応え戦国時代の衣装を精密に表現したのは、仏デザイナーのカルロス・ロザリオ(Carlos Rosario)だ。エスモード パリ出身で、在学時にはヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)らデザイナーとの仕事を経験。その後「ディオール オム(DIOR HOMME)」のアシスタント・デザイナーに抜擢されコレクション制作に携わる。華々しいヨーロッパでの業界経験を経て、カルロスはハリウッドに移り映画衣装に情熱を注ぐ。数年間衣装デザイナーのアシスタントとして働いた後に独立し、映画「ランナー・ランナー(RUNNER,RUNNER)」「ドント・ブリーズ(DON’T BREATH)」などの衣装を手掛けた。

カルロスが語る「SHOGUN 将軍」衣装制作秘話

ドラマ「SHOGUN 将軍」では何千ものコスチュームをデザインし、5カ国で制作。制作期間を振り返り、カルロスは「衣装作りは全て1から行った。衣装を制作するために、日本から多くの素材を持ち込んだ。問題は、それらの素材がとても高価であること。実際に素材をテーブルに並べてプロデューサーを説得し、必要な予算を確保することができた」とポッドキャストで語っている。

また、彼のインスタグラムには、同作のコスチューム1つ1つの制作秘話が投稿されている。「複雑な衣装の1つだった」と語るのは、エピソード1で真田演じる吉井虎長が着用した民族衣装だ。「ディズニーの方針で本物の鹿の皮を使うことができなかったため、様々な加工を施してリアルな毛皮を表現した。また、コミカルに見えてしまうことが心配でこの被り物は使わない予定だったが、日本の美学をより理解し、尊重する必要があると感じ、採用するに至った」。

他にも、アンナ・サワイ演じる戸田鞠子の衣装には元々あった雪の結晶柄に更にプリントを加えたこと、浅野忠信演じる樫木薮重は個性的な役柄に合わせパンクなムードに仕上げたこと、二階堂ふみ演じる落葉はパワフルな貴婦人らしさを表現するため多くの金を施したこと、平岳大演じる石堂和成の勢力拡大を表現するために兜のデザインを変えていること、豪華絢爛な衣装がそろうエピソード6はメット・ガラをイメージしたこと――シーンや役の心情を繊細に表現するための工夫や制作ストーリーを詳細に綴った。戦国時代を表現するため当時の歴史や文化を深く学び、黒澤明監督の娘であるコスチュームデザイナー・黒澤和子からアドバイスを受けたことも明かしている。

「舞台は過渡期の日本で、とても特徴的な時代――戦国時代末期だ。当時の衣服は表現豊かで、衣装デザイナーとしてとても興味深い時代だった。網代の農民の衣装には当時最も親しまれていた藍色、大坂と江戸では大胆な柄と色使い、領主たちが富をひけらかす城では一層鮮やかな色彩を選んだ。代々受け継がれてきた着物を本作の時代に合うよう仕立て直してもらった衣装もある。日本の文化と美学に敬意を払うと同時に、欧米にも通じる衣装にするため、自分なりにアレンジを加えた」。

「SHOGUN 将軍」合計11人の日本人がノミネート

「SHOGUN 将軍」の日本人キャストのうち真田広之は主演男優賞、アンナ・サワイは主演女優賞、浅野忠信と平岳大は助演男優賞にノミネート。さらに製作陣にも多くの日本人が参加し、そのうちヒロオ・ミナミとノブユキ・オビカネが参加したスタントチーム、アヤコ・ヤマウチが参加した音響編集チーム、タカシ・アカクが参加した録音チーム、アイカ・ミヤケが参加した映像編集チーム、川村恵が参加したキャスティングチーム、ケンイチ・タナカが参加したカルロス率いる衣装デザインチームがノミネートされている。

プライムタイム・エミー賞の授賞式は現地時間9月15日に開催予定。同作が何部門獲得するのか期待が高まる。

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