バーバリー(BURBERRY)は7月15日、ジョナサン・エイクロイド(Jonathan Akeroyd)最高経営責任者(CEO)の退任を発表。後任として、ジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)=マイケル・コース(MICHAEL KORS)前CEOが17日付で就任した。ここ数年、同社は一段階上のラグジュアリーブランドへの転身を図りつつも、マクロ経済の悪化や社会情勢の変化などもあり、2024年3月期決算では減収減益となるなど苦戦している。ここでは、英国を代表するブランドであるバーバリーの今後を、今回の人事や決算発表の内容などから考察した。(この記事は「WWDJAPAN」2024年7月22日号からの抜粋です)
現在52歳のシュルマン新CEOは、米国出身。グッチ(GUCCI)やサンローラン(SAINT LAURENT)の要職を経て、2007年にカプリ・ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)が擁するジミー チュウ(JIMMY CHOO)のCEOに就任。その後、12年からニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP)傘下の高級百貨店バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)の社長を5年間務めた。17年から3年間はタペストリー(TAPESTRY)が擁するコーチ(COACH)の社長兼CEOを、21年8月から22年3月まではカプリが擁するマイケル・コースのCEOを務めた。
エイクロイド前CEOは、22年4月に就任。バーバリーを17年7月から21年12月まで率い、低迷していたブランドを再生した立役者、マルコ・ゴベッティ(Marco Gobbetti)元CEOの後任だ。ゴベッティ元CEOの就任当時、バーバリーは卸、ライセンス、ビューティ事業の不振で業績が芳しくなかったことから、同氏は着任早々に新戦略を策定。ラグジュアリーブランドとしてのポジションを明確にするべく、卸を縮小し、シーズンごとのセール期間を短縮して定価での販売をメインとするべくかじを切った。なお、ゴベッティ元CEOは現在、フェラガモ(FERRAGAMO)のCEOを務めている。
そのバトンを引き継いだエイクロイド前CEOは、高級化路線をさらに推進。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「シャネル(CHANEL)」といったブランドと肩を並べるべく、より高級な素材を使用したレザーグッズやウエアに注力した。その結果、ミディアムサイズのショルダーバッグやトレンチコートがそれぞれ2000ポンド(約41万円)程度とこれまでと比べてかなり高額になり、従来の顧客にとって“手の届かない”価格帯に。富裕層の新規客を獲得するための施策だが、社会情勢などタイミングの問題もあり、予想以上の困難に直面したという。
ジェラルド・マーフィー(Gerald Murphy)=バーバリー会長は、「コロナ禍の影響に加えて、(ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により)欧州で地政学上の不透明感が強まったほか、米国市場におけるインフレの加速やマクロ経済の悪化、中国市場の景気減速と、逆風となる要因が立て続けに起きた。また、英国がEUを離脱したことに伴い、20年末に外国人買い物客向けの免税措置を廃止したことなどの影響も大きい」と述べ、「こうした外的要因がある中で、変革を急ぎすぎたかもしれない」と振り返った。
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