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特集 2023年版 世界のビューティ企業TOP100 第1回 / 全4回

ビューティ企業TOP100社の2023年総括 苦境に向き合う日本企業

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ビューティ企業TOP100社の2023年総括 苦境に向き合う日本企業

2023年は、日本のビューティ企業にとって円安による苦難の年だった。米「WWD」発行「BEAUTY INC」によるビューティ企業の売り上げランキングでは、ランクインした日本企業11社中9社が順位を落とした。為替が1ドル=141円と、22年の131円から7.6%上がったことから、ドル換算のランキングに大きな影響を及ぼした。各社の国内事業は好調で、資生堂以外の10社の売り上げは前年比プラス成長だったものの、海外の競合企業の成長に及ばなかった。(この記事は「WWDJAPAN」2024年7月22日号付録「WWDBEAUTY」からの抜粋です)

資生堂、コーセーは国内プラス成長も
中国事業が足かせに

3ランク落とした8位の資生堂は、中国市場の不振が大きく響いた企業だ。中国全体で消費者の購買意欲が衰退したのに加え、代理購入の規制や福島第一原発の処理水放出に関する問題が影響した。日本事業は前年比9.4%増に対し、中国は同4.0%減と対照的で、コロナ禍前の水準に戻らなかった。コーセー(KOSE)も日本事業は同16.4%増だったが、他のアジア地域では同34.7%減と不調だった。「SK-Ⅱ」もその影響を受けたブランドの一つだ。一方、ポーラ・オルビス ホールディングス(POLA ORBIS HOLDINGS)は海外事業比率が16.7%と低く、国内に注力していることから打撃を受けず増収した。各社24年は徐々に復活の兆しを見せている。

世界のビューティ業界は当たり年

ビューティ業界全体としては、当たり年だった。100社の総売り上げは2451億7000万ドル(約34兆5689億円)でコロナ禍前を上回った。1位のロレアル(L'OREAL)は全体の18.2%を占め、0.9ポイント上昇。上位10社は例年並みの59.4%を占める結果となった。また75%の企業が増収、内37%が前年比2ケタ成⻑した。業績を伸ばした企業の特徴は、市場への機敏な対応力と消費者の心をつかむ力で、代表格はセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)が手掛けるメイクアップブランド「レア ビューティ(RARE BEAUTY)」だ。セレーナが得意とするファンとの共感力を強みに同200%増と驚異の成長率をたたき出した。ただし全体的に消費者の購買意欲は減少気味で、より慎重に商品を選ぶ傾向が強まっている。

2023年日本企業ランキング

8位(↓5位)資生堂
売上高:9730億4000万円、前年比:-8.8%

15位(↓12位)花王
売上高:5922億1000万円、前年比:+1.4%

22位(↓20位)コーセー
売上高:3004億1000万円、前年比:+3.9%

34位(↓31位)ポーラ・オルビス ホールディングス
売上高:1684億8000万円、前年比:+4.2%

54位(↓51位)ファイントゥデイ
売上高:1001億7000万円、前年比:+4.3%

63位(↑64位)マンダム
売上高:723億4000万円、前年比:+13%

74位(↓68位)ファンケル
売上高:591億5000万円、前年比:+1.3%

81位(↓74位)ホーユー
売上高:525億円、前年比:+1%

86位(↓78位)ノエビア ホールディングス
売上高:484億1000万円、前年比:+2.6%

88位(↓79位)ミルボン
売上高:477億6000万円、前年比:+5.6%

89位(→89位)ライオン
売上高:464億9000万円、前年比:+0.1%

圏外(↓87位)日本メナード化粧品
売上高:–、前年比:

圏外(↓100位)DHC
売上高:–、前年比:

売上高伸長率トップ10&ワースト10

歌手のセレーナ・ゴメスがプロデュースするレア ビューティや、プチプラのメイクアップを手掛けるE.L.F. ビューティ(E.L.F. BEAUTY)など、若年層に人気の企業がトップを占めた。また昨年に続き、好調な中国企業3社がランクイン。一方で「イソップ(AESOP)」「ザボディショップ(THE BODY SHOP)」を手放したナチュラ&コー(NATURA & CO)などがワーストに入った。

売上高伸長率トップ10&ワースト10

営業利益率ランキング

売上高に対する営業利益のランキングを紹介。ビューティ事業の営業利益を公表している企業のみで作成した。23年はインフレや顧客獲得コストの高騰が響く中で、多くの企業はビューティの利益率を確保するのに苦戦した。しかし下記表にある企業の約半数は昨年より営業利益率を伸ばした。

1位 ノエビア ホールディングス※1 営業利益率:24.6%
売上高(ビューティ):481億8000万円、営業利益(ビューティ):118億7000万円

2位 オラプレックス 営業利益率:23.6%
売上高(ビューティ):4億5830万ドル(約646億2030万円)営業利益(ビューティ):1億820万ドル(約152億5620万円)

3位 プロクター・アンド・ギャンブル※2 営業利益率:21.2%
売上高(ビューティ):150億1000万ドル(約2兆1164億円)営業利益(ビューティ):31億8000万ドル(約4483億8000万円)

4位 ロレアル 営業利益率:19.8%
売上高(ビューティ):411億8000万ユーロ(約6兆3005億円)営業利益(ビューティ):81億4000万ユーロ(約1兆2454億円)

5位 ユニリーバ※3 営業利益率:19.7%
売上高(ビューティ):263億ユーロ(約4兆239億円)営業利益(ビューティ):51億7000万ユーロ(約7910億1000万円)

6位 インターパルファム 営業利益率:19.1%
売上高(ビューティ):13億2000万ドル(約1861億2000万円)営業利益(ビューティ):2億5100万ドル(約353億9100万円)

7位 E.L.F.ビューティ※4 営業利益率:18.9%
売上高(ビューティ):7億280万ドル(約990億9480万円)営業利益(ビューティ):1億3270万ドル(約187億1070万円)

8位 オディティ・テック 営業利益率:14.6%
売上高(ビューティ):5億870万ドル(約717億2670万円)営業利益(ビューティ):7430万ドル(約104億7630万円)

9位 ファンケル※4 営業利益率:14%
売上高(ビューティ):458億8000万円、営業利益(ビューティ):64億2000万円

10位 バイヤスドルフ※5 営業利益率:12.9%
売上高(ビューティ):78億ユーロ(約1兆1934億円)営業利益(ビューティ):10億ユーロ(約1530億円)

11位 ミルボン 営業利益率:11.6%
売上高(ビューティ):477億6000万円、営業利益(ビューティ):55億3000万円

12位 コティ※2 営業利益率:9.8%
売上高(ビューティ):55億5000万ドル(7825億5000万円)営業利益(ビューティ):5億4370万ドル(約766億6170万円)

13位 ポーラ・オルビス ホールディングス 営業利益率:9.7%
売上高(ビューティ):1684億8000万円、営業利益(ビューティ):163億5000万円

14位 エスティ ローダー カンパニーズ※2 営業利益率:9.5%
売上高(ビューティ):159億1000万ドル(約2兆2433億円)営業利益(ビューティ):15億1000万ドル(約2129億1000万円)

15位 LVMH モエ ヘネシー-・ルイ ヴィトン 営業利益率:8.6%
売上高(ビューティ):82億7000万ユーロ(約1兆2653億円)営業利益(ビューティ):7億1300万ユーロ(約1090億8900万円)

16位 ロクシタン インターナショナル※6 営業利益率:7.2%
売上高(ビューティ):10億7000万ユーロ(約1637億1000万円)営業利益(ビューティ):7680万ユーロ(約117億5040万円)

17位 花王※7 営業利益率:5.6%
売上高(ビューティ):6315億円、営業利益(ビューティ):351億円

18位 コーセー 営業利益率:5.3%
売上高(ビューティ):3004億円、営業利益(ビューティ):159億円

19位 LG H&H 営業利益率:5.2%
売上高(ビューティ):2兆8200億ウォン(約2820億円)営業利益(ビューティ):1460億ウォン(約146億円)

20位 マンダム※4 営業利益率:4%
売上高(ビューティ):546億7000万円、営業利益(ビューティ):22億円

21位 アモーレパシフィック 営業利益率:2.9%
売上高(ビューティ):3兆6700億ウォン(約3670億円)営業利益(ビューティ):1082億ウォン(約108億2000万円)

21位 資生堂 営業利益率:2.9%
売上高(ビューティ):9730億4000万円、営業利益(ビューティ):281億3000万円

23位 ナチュラ&コー 営業利益率:-0.6%
売上高(ビューティ):267億4000万レアル(約7487億2000万円)営業利益(ビューティ):-1億5480万レアル(約-43億3440万円)

24位 ヤッセン・ホールディング 営業利益率:-26.8%
売上高(ビューティ):34億1000万元(約647億9000万円)営業利益(ビューティ):-9億1340万元(約-173億5460万円)

※財務諸表を公表している企業が報告している数字に基づき集計。ビューティ事業を主要事業とする企業またはビューティ事業の営業利益を公表している企業のみを対象とする/※1 2023年9月期/※2 23年6月期/※3 ビューティ&ウェルビーイング事業とパーソナルケア事業の合算/※4 23年4~12月期/※5 ばんそうこうを含むコンシューマー事業/※6 23年4~9月期/※7 化粧品およびヘルスケア・ビューティ事業の合算

ビューティ株騰落率ランキング

株価の騰落率トップ10とワースト10を発表。上位に輝いたのはティックトック(TikTok)でもバズりアイテムを連発するE.L.F.ビューティやフレグランスメーカーのインターパルファム(INTERPARFUMS)など。一方でワーストランキングには日本企業が2社ラインクインした。

トップ10

1位 E.L.F.ビューティ アメリカ
騰落率:161%、2023年最終日の終値※1:144.34ドル(約2万351円94銭)2022年最終日の終値※1:55.30ドル(約7797円30銭)

2位 インターパルファム アメリカ
騰落率:49.2%、2023年最終日の終値※1:144.01ドル(約2万305円41銭)2022年最終日の終値※1:96.52ドル(約1万3609円32銭)

3位 ナチュラ&コー ブラジル
騰落率:45.5%、2023年最終日の終値※1:16.89レアル(約472円92銭)2022年最終日の終値※1:11.61レアル(約325円8銭)

4位 コティ アメリカ
騰落率:45.1%、2023年最終日の終値※1:12.42ドル(約1751円22銭)2022年最終日の終値※1:8.56ドル(約1206円96銭)

5位 ロレアル フランス
騰落率:35.1%、2023年最終日の終値※1:450.65ユーロ(約6万8949円45銭)2022年最終日の終値※1:333.60ユーロ(約5万1040円80銭)

6位 オディティ・テック※2 アメリカ
騰落率:32.9%、2023年最終日の終値※1:46.53ドル(約6560円73銭)2022年最終日の終値※1:35ドル(約4935円)

7位 エルメス・インターナショナル フランス
騰落率:32.8%、2023年最終日の終値※1:1918.80ユーロ(約29万3576円40銭)2022年最終日の終値※1:1445ユーロ(約22万1085円)

8位 エマミ インド
騰落率:32.6%、2023年最終日の終値※1:563.75ルピー(約958円37銭)2022年最終日の終値※1:425.05ルピー(約722円58銭)

9位 ゴドレジ コンシューマー プロダクツ インド
騰落率:29.4%、2023年最終日の終値※1:1131.20ルピー(約1922円70銭)2022年最終日の終値※1:874.05ルピー(約1485円88銭)

10位 バイヤスドルフ ドイツ
騰落率:26.6%、2023年最終日の終値※1:135.70ユーロ(約2万762円10銭)2022年最終日の終値※1:107.20ユーロ(約1万6401円60銭)

ワースト10

1位 ウンナン・ボタネ・バイオ・テクノロジー・グループ 中国
騰落率:-54.3%、2023年最終日の終値※1:68.17元(約1295円23銭)2022年最終日の終値※1:149.24元(約2835円56銭)

2位 ニュースキン エンタープライズ アメリカ
騰落率:-53.9%、2023年最終日の終値※1:19.42ドル(約2738円22銭)2022年最終日の終値※1:42.16ドル(約5944円56銭)

3位 オラプレックス アメリカ
騰落率:-51.2%、2023年最終日の終値※1:2.54ドル(約358円14銭)2022年最終日の終値※1:5.21ドル(約734円61銭)

4位 LG H&H 韓国
騰落率:-50.8%、2023年最終日の終値※1:35万5000ウォン(約3万5500円)2022年最終日の終値※1:72万2000ウォン(約7万2200円)

5位 ブルーメイジバイオテクノロジー 中国
騰落率:-50.5%、2023年最終日の終値※1:66.93元(約1271円67銭)2022年最終日の終値※1:135.28元(約2570円32銭)

6位 ヤッセン・ホールディング 中国
騰落率:-49.8%、2023年最終日の終値※1:3.66ドル(約516円06銭)2022年最終日の終値※1:7.30ドル(約1029円30銭)

7位 エスティ ローダー カンパニーズ アメリカ
騰落率:-41%、2023年最終日の終値※1:146.25ドル(約2万621円25銭)2022年最終日の終値※1:248.11ドル(約3万4983円51銭)

8位 ミルボン 日本
騰落率:-35.4%、2023年最終日の終値※1:3694円、2022年最終日の終値※1:5720円

9位 資生堂 日本
騰落率:-34.3%、2023年最終日の終値※1:4252円、2022年最終日の終値※1:6471円

10位 シャンハイ ジャワ ユナイテッド 中国
騰落率:-33.5%、2023年最終日の終値※1:21.18元(約402円42銭)2022年最終日の終値※1:31.85元(約605円15銭)

※1 使用したデータは株式が取引された年の最終日の終値。
※2 オディティ・テックは2023年7月19日に株価35ドルでニューヨーク証券取引所に上場した

COLUMN1:急成長するマスブランド

世界中の消費者がインフレの影響を感じている中、多くのマス向けブランドは近年で最も成長した。市場をけん引するロレアルのコンシューマー・プロダクツ事業本部の売上高は、既存店ベースで12.6%増と、過去30年以上で最も好調な伸びを記録。バイヤスドルフが擁する「ニベア」の売上高は50億ユーロ(約7650億円)を突破し、既存店ベースで16.2%増加した。再成長の背景には、さまざまな要因が重なる。数年にわたり、多くの化粧品メーカーが新興市場の消費者とのタッチポイントとしてプチプラ商品に注力してきたが、昨年は成熟市場でインフレが進行したため、多くの消費者が化粧品を買い控え、低価格帯の化粧品ブランドに需要が集中した。同時に、ティックトックが若い消費者の美容習慣に与えた影響は、特定のブランドの急成長と需要の急増に拍車をかけた。

伊プチプラブランド「キコ ミラノ(KIKO MILANO)」は若い消費者の支持を得て、売上高が19%増加した。ユニリーバ(UNILEVER)の「ヴァセリン(VASELINE)」は、保湿クリームを顔全体に塗る“スラギング”という美容法がトレンドになった影響で2ケタ成長を遂げ、売上高は10億ユーロ(約1530億円)の大台に乗った。また、米国を拠点とするE.L.F. ビューティはソーシャルメディア戦略を駆使し、今年の成長率ランキングで2位となる驚異的な成長を遂げた。売上高79%の急増は、SNSを駆使することが売り上げに直結することを示しており、多くの競合他社がこの成功に追随しようとしている。

COLUMN2:荒波にもまれる中国企業

中国の美容業界は急速に変化している。一部の国内化粧品メーカーが飛躍的な成長を続ける一方で、近年大きな成長を遂げてきた企業が2023年に失速した。コスメブランド「フローラシス(FLORASIS)」の成長の鈍化は、著名なライブストリーマー、オースティン・リー(李佳琦、Austin Li Jiaqi)の発言による炎上の影響を受けた。情報筋によると、「フローラシス」は同年の推定売上高が14.1%減少し、リーが関わるほかのブランドも苦境に立たされたという。競争の激しい中国市場で単一のプラットフォームやインフルエンサーに傾倒することのリスクを示す教訓となった。

かつての寵児だったヤッセン・ホールディング(YATSEN HOLDING)の総売上高は7.9%減少し、主力ブランド「パーフェクト ダイアリー(PERFECTDIARY)」の立て直しを図った。ヒアルロン酸に特化したブルーメイジバイオテクノロジー(BLOOMAGE BIOTECHNOLOGY)は、スキンケア市場の競争の激化と消費者の購買意欲の減衰により打撃を受けた。

23年のトップ100で最も急成長したのは、推定売上高53.3%増のシャンハイ・シックマックス・コスメティック(SHANGHAI CHICMAX COSMETIC)と、同48%増のジョイグループ(JOY GROUP)だ。2社は、中国版ティックトックのドウイン(抖音)の重要性にいち早く着目し、小規模都市でのオフライン展開にも成功した。Cビューティ企業の中で最大の売上高を誇ったプロヤ コスメティックス(PROYA COSMETICS)は、推定30%の増収で競合他社を大きく引き離し、今年のトップ100で中国企業として過去最高の36位にランクインした。

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