スイス発スポーツブランド「オン(ON)」はこのほど、スポーツシューズのアッパー製造の新技術「LightSpray」を発表した。完全自動化したロボットアームから一続きのフィラメントをスプレー噴射することにより、極薄でシームレス、シューレースも不要なアッパーが高速製造できるという。廃棄物やCO2排出量も大幅に削減できる。同技術は7月27日〜8月10日に、オンがパリに開設したラボで公開予定だ。
CO2は75%削減
オンは同技術を、スイス・チューリッヒのラボで開発した。一般的にスポーツシューズは非常に多くのパーツで構成されており、素材もバラバラなため、リサイクルしづらいと言われてきた。「LightSpray」はアッパー製造が単一工程のため、廃棄物を減らすと共に「オンの他のレーシングシューズに比べCO2排出量を75%削減できる」(発表資料から)。「製造のローカル化も視野に入れ」ているといい、輸送にかかるCO2なども今後削減が可能。また、アッパーを単一素材にし、ソールと「接着剤不要な方法で結合しているため、今後循環型製造や循環型製品への応用が考えられる」。アッパーを製造し、ボトムユニット(ソール)に結合して仕上げるのに「全体で3分しかかからない」という。
「LightSpray」技術を初めて搭載したモデルであるレース用シューズ“クラウドブーム ストライク LS”(LSはLightSprayの略)の開発には、オンがサポートする複数のアスリートが関わっている。中でもケニア出身のランナーで、2016年のリオデジャネイロ、21年の東京五輪女子5000メートル銀メダリストで、23年のボストンマラソン、ニューヨークマラソン2冠王者、今夏のパリ五輪も出場予定のヘレン・オビリ選手は、23年のボストンマラソンに開発段階の“クラウドブーム ストライク LS”で出場していた。
ブランド史上最軽量を実現
「過去何十年にもわたり、ランニングシューズは同じ方法で製造されてきた。オンのイノベーションチームは従来のプロセスを変えたいと思った」と発表資料から。ハロウィン用のクモの巣の装飾をグルーガンで作る動画を見ていたイノベーションチームのメンバーが、そこから継ぎ目のないアッパーをスプレー噴射する方式をひらめいたのだという。スプレー噴射形式でパーツは1つ、シューレースや付属品もないため、“クラウドブーム ストライク LS”は「オン」史上最軽量といい、アッパーの重さは30グラム、全体で170グラム(メンズ)だ。
“クラウドブーム ストライク LS”は、日本国内では24年秋冬シーズンに4万4000円で販売予定。