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連載 ファッション業界人も知るべき今週のビューティ展望

上半期ベストコスメ、強さの背景を選者が読む

【連載】ファッション業界人も知るべき今週のビューティ展望

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ビューティ・インサイトは、「WWDJAPAN.com」のニュースを起点に識者が業界の展望を語る。 今週は、半期ごとに美容各誌が発表するベストコストの話。(この記事はWWDJAPAN2024年7月8日号からの抜粋です)

弓気田みずほ ユジェット代表・美容コーディネーター プロフィール

(ゆげた・みずほ)伊勢丹新宿本店化粧品バイヤーを経て独立。化粧品ブランドのショップ運営やプロモーション、顧客育成などのコンサルティングを行う。企業セミナーや講演も。メディアでは化粧品選びの指南役として幅広く活動中

【賢者が選んだ注目ニュース】

恒例の「上半期ベストコスメ」が各誌・メディアで相次いで発表された。それぞれ選考方法や選者は異なるが、選ばれた商品からは市場の動きやトレンドなどの背景が見えてくる。今回は「VOCE」「美的」「MAQUIA」の美容3誌、@cosme、「WWDBEAUTY」のベストコスメを通して、複数のメディアで選ばれた商品の背景を読み解きたい。

ロングセラーの進化に成功した「雪肌精」

今期多くのメディアでベストコスメを制したコーセー“薬用雪肌精 ブライトニング エッセンス ローション”は、1985年の発売以来「透明感」を追究し続けてきた。40年目を迎える今年、新たな薬用有効成分を配合して処方を刷新。シミ・ソバカスなどのメラニン色素に対応する旧来の「美白」だけでなく、乾燥や赤みなど「透明感」を損なうより多くの要因に対してアプローチを可能にした。その一方で、長く支持されてきた香りや感触を極力変えない配慮が、ロングセラーの進化を成功させた。

革新への期待と信頼が表れたポーラ

上半期はブライトニング商品が大きく注目されるが、今年その中心となったのがポーラの「ホワイトショット」“フェイシャルセラム”だ。「ホワイトショット」はポーラ独自の美白有効成分「ルシノール」を配合した美白ブランドとして誕生して以来、最新の研究成果を搭載して業界をリードしてきた。美白美容液をはじめ、ベーシックケアやサプリメントなどカテゴリーを拡大する過程で常にベストコスメに輝いてきた。

リブランディング第1弾となる美容液は、ブライトニング商品の常識を覆す、鮮やかな「エウレカピンク」をパッケージに採用。メディア、消費者を問わず大きなインパクトを与えたと同時に、ポーラがスキンケアのリーディングカンパニーであり続けることへの決意表明ともいえるメッセージ性も感じられた。ブランドへの信頼感と期待の高さが表れた結果といえる。

顧客育成にも抜かりない「コスメデコルテ」

“リポソーム アドバンスト リペアセラム”の大ヒット以来、快進撃を続ける「コスメデコルテ」は今期もスキンケア、メイクアップの両面で強みを見せた。ブランドのお家芸でもある“AQ アブソリュート エマルジョン ブライト”は洗顔後すぐに使用して肌を柔らかく整える先行型乳液だ。ブランド独自のスキンケアルーティンは多くの愛用者を生み続け、絶対的なポジションを獲得している。乳液のヒットは「リポソーム」で獲得した新規ユーザーを育成するための、大きな弾みとなったはずだ。“ルースパウダー”は1998年の発売以来バージョンアップを重ね、今回が6代目。フェイスパウダーはなかなか買い替える機会のないものだけに、失敗したくない心理が働く。歴代のパウダーは@cosmeの口コミで高評価を得ており、ベストコスメにも選ばれ続けている。すでに評価が確立された「間違いない」アイテムだからこそ、リニューアルには大きな期待がかかる。進化させるべきポイントと守るべきポイントを見極めるバランス力が、今の「コスメデコルテ」の大きな強みだ。

技術力と感情価値で希望を伝える「カネボウ」

2020年に「希望を発信するブランド」として大胆なリブランディングを行った「カネボウ」は、コロナ禍で沈んだ消費者のマインドと化粧品市場に向けて「希望」という感情価値を打ち出した。「カネボウ」が培ってきた技術から生まれた、使う楽しさを兼ね備えたスキンケアアイテムや、処方技術に定評のあるファンデーションなど単品力のある商品で存在感を発揮してきたが、今期はスキンケアとメイクアップ両方のカテゴリーでヒットを飛ばした。化粧水“スキン ハーモナイザー”は、悪影響を及ぼす皮脂成分を肌に触れさせない画期的な新知見を搭載し、バリア機能の低下などで複雑化する肌悩みに対応。ジェンダーを問わず多くの支持を受けた。“ルージュスターヴァイブラント”では、1980年代のカネボウのキャンペーンソング「唇よ、熱く君を語れ」とともにプロモーションを展開し、リップカラーをまとうことで得られる高揚感を伝えた。商品価値の高さにポジティブなメッセージをのせることで、感情価値の訴求にも成功したといえる。

一つの商品ができるまでにはさまざまな人と技術が必要だが、商品の魅力をメディアに伝えるPR、店頭活動を通じたセールスプロモーションが連動して初めて、消費者からの支持を得ることができる。メディアや「美容のプロ」からの支持、販売店舗での売り上げ実績、ユーザーからの口コミと、それぞれの立場から評価される商品は、ブランド各部署の効果的なリレーションなくしては生まれない。

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