ファッション
連載 エディターズレター:FROM OUR INDUSTRY 第131回

デザイナーの交代劇は深謀遠慮に その原因はビューティにあり?

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デザイナーの交代劇は深謀遠慮に その原因はビューティにあり?

創業デザイナーからバトンを受け取った、「トム フォード(TOM FORD)」のクリエイティブ・ディレクター、ピーター・ホーキングス(Peter Hawkings)の退任には、驚きました。私には、ベストな選択としか思えなかったからです。

上で紹介する、2つの記事の写真をご覧ください。ピーター・ホーキングスとトム・フォード(Tom Ford)、そっくりだとは思いませんか?ピーターがデビューした2024年春夏コレクションは、正直トムがピーターに乗り移ったかのようでした。発表の場をニューヨークからミラノに移しつつも、「トム フォード」のショーは、健在でした。フカフカの絨毯にソファのようなクッションのシート、イケイケのボディコンシャスなウィメンズのドレスと、同じくパワフルなショルダーラインやラペルのメンズスーツ。そしてフィナーレは、トム・フォードが乗り移ったかのようなピーター。確かにトム・フォードの「トム フォード」と大差ないと言われたら、それは事実です。でも、変わるだけが正解ではありません。特に消費者が一方的なトレンドの変化に不信感を抱き、結果クワイエット・ラグジュアリーのようなスタイルが確立した時代背景を考えると、新しく生まれ変わったとまでは言い難い新生「トム フォード」は、私には「そうだよね」と頷けるものでした。トム同様のヘアスタイルにサングラス、そして純白のスーツでフィナーレに現れたピーターは、「四半世紀もトムと共に仕事をしてきた。僕の美学は、彼という存在なくして成立しない。僕らしくあるとは、つまりトムが築き上げた『トム フォード』らしいことと同義なんだ」と語りました。納得です。

それが受け入れられなかったのは、なぜでしょうか?ステークホルダーとして「トム フォード」と関わる、エスティ ローダーか、「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」や「トム ブラウン(THOM BROWNE)」などを擁するゼニアグループの意向も大きいのでしょうか?ここからは私の憶測に過ぎませんが、安定期に突入した「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」を擁するエスティ ローダーにとって、誰よりも「トム フォード」なピーターの路線は、歓迎すべきものだったのでは?と思います。となると、変革を迫ったのは、ゼニア グループでしょうか?例えば、もう少し「エルメネジルド ゼニア」との違いをわかりやすく表現できるデザイナーを望んだとか?違いは、歴然としている印象ですけれどね。

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