毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年7月22日号からの抜粋です)
本橋:毎年恒例の百貨店特集です。各社のトップをインタビューする中で、大丸松坂屋百貨店の宗森耕二新社長(48)が「学生は、いろんなやりたいことを胸に入社を希望してくる。個人がやりたいことを実現できる百貨店にならなければならない」と語っていたのが印象的でした。今回の特集では、そんなふうに百貨店で自ら起案して働く人にフォーカスしました。大丸松坂屋では、百貨店の枠にハマらないモノを探して新規コンテンツを作ろうとしている元婦人服バイヤーの江原忠志さんを取材しました。
林:宗森社長は食品畑出身で、大丸東京店で連日長い行列ができる「ニューヨークシティサンド」や「鎌倉紅谷 クルミッ子」の仕掛け人。5大百貨店の社長で食品出身は珍しいし、大丸は東京店も札幌店も店長がパルコ出身になるなど、人材の生かし方が変わってきていると感じるね。
“百貨”の編集・カスタマイズが重要
本橋:そうですね。高島屋の深尾明弘さんは法人営業をした時期に日本の伝統産業に触れ、もっと着物を売りたいと公募制度「フューチャープランニング」で呉服の新しいビジネスを始めたそうです。まずは着る機会の創出が大事と、フレンチと和菓子のコースと共に、着てきた着物姿で皆の前を歩くショーを企画したところ、1万5000円で50人が参加。こうした機会を作りながら、“和”をコンセプトに人々がつながるプラットフォームを作り、それを運営して伝統産業を支援していきたいと考えているそうです。“百貨”、つまり本来の強みである品ぞろえを、熱意を持った人が編集・カスタマイズして売っていく―これからの百貨店の姿だと感じました。
林:オールジャンルを扱う百貨店の強みだね。百貨店市場は9兆円から5兆円規模に縮小している半面、大都市の旗艦店は過去最高の売り上げが続出している。地方では百貨店ゼロ県が増えているし、一概に良し悪しが言えない状況です。
本橋:林さんは何が印象的でしたか?
林:富裕層向けの事業を強化していることですね。特にVIPルームをどう作るかについては、各社知恵を絞っています。阪急うめだ本店は飲食フロアの直営レストラン跡地をVIPの買い物スペースとしてリニューアルします。富裕層向けのサービスをブラッシュアップしながら、大衆向けにラインアップをアップデートするからこそ、百貨店は生き残れるのだと思います。