PROFILE: 小嶋陽菜/heart relation代表取締役CCO
小嶋陽菜が代表取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)を務めるハートリレーションの「ハー リップ トゥ(HER LIP TO)」が、設立から6年を迎えた。アパレルからビューティ、ランジェリーへとカテゴリーを広げ、昨年7月には東京・表参道に旗艦店をオープンするなど、ブランドの可能性を着実に広げている。直近の5月9〜15日に実施したルミネ新宿ルミネ2で実施したポップアップストアは、初日売り上げ2000万円超、期間中の売り上げが1億円を突破するなど、その勢いは衰えない。
いわゆる“タレント発”のブランドが短命に終わることも多い中、その枠組みにとどまらない推進力を生み出しているのは、小嶋の原点である「ファンを楽しませたい」というプロ意識。東京、大阪、福岡を巡回した6周年イベントで、小嶋にブランドの今後を聞いた。
WWD:まず、今回の6周年イベントについて聞きたい。
小嶋陽菜heart relation代表取締役CCO(以下、小嶋):テーマは「サマーブティック」です。私自身、バケーション先で知らないブティックに立ち寄るのが毎回の楽しみ。現地での体験から着想を得た内装やディスプレイに仕上げました。今回は福岡と大阪でも実施しましたが、地方のお客さまの熱量は毎回高い。普段からECで購入してくださりながら楽しみにしてくださって、初日に(ポップアップに)来てくださる方もいらっしゃいます。地方での開催は輸送費やスタッフの調達など、コスト面で大変なところもありますが、これからもさまざまな場所で開催したいと思っています。
WWD:ポップアップストアと表参道の常設店、棲み分けはどう考えている?
小嶋:ポップアップは新規のお客さまに知ってもらったり、気軽にショッピングができる場所。一方で、旗艦店の「ハウス オブ エルメ」は「ハー リップ トゥ」のブランドをずっと好きでいてくださっている皆さんに恩返しする場であり、彼女たちとのつながりをより強くしていく場所です。「クラブハーズ」という会員制のリワードプログラムを設けて、ロイヤリティーランクのお客さまにはスタイリングサービスを提供したりしています。ホリデーイベントのときには、商品の購入後にヘアセットを施してアフタヌーンティーにお招きするなど、1日をトータルでコーディネートしました。単に洋服を売るのではなく、「ハー リップ トゥ」を通じた体験で、よりお客さまに輝いてほしいと思っています。
ランジェリー(「ロジア バイ ハーリップトゥー」)やコスメ(「ハーリップトゥ ビューティ」)をやっているのも、女性をトータルでプロデュースしたいという思いがあるからです。ブランドスタートから6年が経ち、少しずつですけど形になってきたかなと思っています。
WWD:ハートリレーションの企業としての成長は?
小嶋:社員は80人以上に増えました。最近はスタッフの成長をすごく実感しています。あるスタッフが「ハー リップ トゥ」のプレスとして雑誌に出る機会をいただいたり、各スタッフのSNSのフォロワーも伸びていたりと、私以外にも前に出てファンを作っている社員が増えてきたのがうれしいです。社員とは常にコミュニケーションを取るように心がけていて、SNSの発信でもキャプションの作り方から写真の撮り方まで細かくフィードバックしています。トレンドの動向などを情報交換する機会も定期的に設けています。
WWD:アパレル、ビューティ、ランジェリー。それぞれのブランドを運営する上で一貫していることは?
小嶋:全てに共通しているのは、私が好きなもの、私が着たいと思うものをつくるということ。理想の女性になるために、自分を知ったり演出したりすることで好きになるというテーマは一貫しています。ビューティーは肌の質感や香りを演出するもので、ランジェリーは洋服を美しく着るために着用する、という位置付けですね。
WWD:ブランド6周年を迎えたが、ブランドがブレることはない?
小嶋:デザイン面は常にアップデートしていますが、私が好きなテイストは変わらないので、ブランドとして軸がブレることは今までも、これからもないかなと思います。それは「エゴ」とは違います。自分の好きなものはブラさず、他者からの期待や視点はしっかり取り入れていく。そのバランス感覚は自分の長所なのかもしれません。
WWD:マンネリ化は感じない?
小嶋:アパレルというカテゴリーに囚われずに、自分自身も楽しんでやれていると感じます。去年はブランド内でアイスクリームショップを実施したり、「クリスピークリームドーナツ」とコラボしてドーナツをイメージしたコレクションを出したり。そういったサプライズでお客さまも飽きずに楽しみ続けてくれていると思います。
私自身、元々サプライズが好きなんです。ファンを楽しませようとする精神がアイドル時代からあり、そういった意識を前提にしてブランドの取り組みを考えています。一方で当時も今も「次はこれをやったら面白いんじゃない?」というリクエストを周りからもらうことが多いです。常に「面白がられている」人でありたいですね。
WWD:「10周年」のブランドの姿は見えてきた?
小嶋:「ハー リップ トゥ」をもっと長く続けたいという思いは年々強くなっています。「タレントのブランドは続かない」という世間のイメージは根強いです。長く続けることだけが正しいとは思わないのですが、こんなにすてきなスタッフとお客さまがいるのだから、できるだけ期待に応え続けたいという思いはあります。
WWD:今後の事業展開の構想は?
小嶋:扱うカテゴリーが大幅に増えることはないと思うんですが、今の事業やファンのベースがあれば、「なんでもできる」という気がしています。年齢とともに自分の気分も変化するかもしれないし、よりデイリー使いしやすい商品をそろえた別ラインも作ってみたい。ただ洋服を販売するだけではなくて、その先の体験まで届けていきたいという思いは強いです。
WWD:アイドル時代から20年間走り続けている。立ち止まりたくはならない?。
小嶋:思いません。ライフステージによって変化はあるかもしれないですが、仕事はし続けるかな。やっぱりファンを楽しませたい気持ちはアイドル時代からずっとコアにあって。それをやめることはないし、私の“生き方”としてずっと変わらないと思っています。